テレビ番組コンテンツが持つコミュニケーション価値とその要因を考える
【事例】RKB毎日放送株式会社
テレビ番組では、日々生活者にとって興味深い観光・レジャー施設や商業施設に関する情報がオンエアされています。これを見た人は、見なかった人に比べてどの程度その施設を訪れるのでしょうか?
今回は、RKB毎日放送株式会社ご協力のもと、番組で取り上げた施設への来店・来訪が視聴によってどの程度促進されるのかを検証しました。
テレビ番組「ハカタの王様」で見た施設に視聴者は来店・来訪するのか?
毎週土曜午後に放送されている情報番組「ハカタの王様」(RKB毎日放送)。この番組で取り上げられた施設を対象に、オンエア後1か月の当該施設への来店・来訪を視聴者と非視聴者で比較しました。
テレビ視聴と来店・来訪の関係を分析するlog-BLS(ログ・ブランドリフト)
今回分析に用いた「log-BLS(ログ・ブランドリフト)」は、当社の子会社Resolving LABの視聴ログとunerry社の人流データ(Beacon Bank)を用いて、行動ログで効果を可視化する仕組みです。
log-BLSの分析イメージ
log-BLSの詳細はこちら:https://www.videor.co.jp/service/communication/effect-measurement8.html
この「log-BLS」を用いて、「ハカタの王様」でその施設を取り上げた放送時間の視聴有無で、オンエア後1か月の当該施設来店・来訪を確認しました。
今回は、2024年5月25日から2024年9月7日までにオンエアされた放送のうち、11時点の11施設(一部重複する施設あり)を分析対象としました。11施設それぞれで視聴者と非視聴者の来店・来訪率を算出し、視聴者が非視聴者の何倍来店・来訪しているのかを分析しました。
視聴者は確かに番組で取り上げた施設に来店・来訪していた!
11時点それぞれで算出した非視聴者に対する視聴者の来店・来訪の倍率を平均した結果、視聴者は非視聴者に比べて1.7倍、その施設を来店・来訪したことがわかり、番組で取り上げた施設への来店・来訪の効果が確認できました。
なぜ視聴者は施設に、より来店・来訪するのか??
ところで、来店・来訪の効果の過去研究事例では、1時点における45秒以上の長尺CMの効果は平均して1.1倍でした(※1)。今回の「ハカタの王様」の効果はこれより高いですが、番組視聴者の来店・来訪率がより高くなるのはなぜなのでしょうか?
その要因を探すため、視聴者の「人物像」を見てみました。Resolving LAB視聴ログには生活者データベースACR/ex(エーシーアール・エクス)のデータをフュージョン搭載しています。2024年7月の「ハカタの王様」視聴者(7月放送回の半分以上で1/3以上視聴した人)のテレビで得る情報種類を確認しました。すると以下のような結果でした。
これを見ると、「ハカタの王様」視聴者は『ショップ・お店』や『食べ物・グルメ情報』といった、今回対象となる施設に関連した情報をテレビから入手することが、一般生活者よりも高いことがわかります。施設に関連する情報の感度が高い視聴者が集まる番組であるからこそ、番組で取り上げた場合の効果が高いといえるのではないでしょうか。
この結果をみると、今回取り上げた施設とは異なるジャンル・カテゴリーでも効果が期待できそうです。
今回の知見をメディアプランニング場面に応用すると、単にリーチを獲得するだけでなくそのメディア・コンテキストで接する生活者の特性を理解することも重要だといえます。その特性に合った訴求で、より効果は向上するのではないでしょうか。
今後も多角的に検証・研究していきます。ぜひご期待ください。
<謝辞>今回の検証・研究の遂行にあたり、RKB毎日放送株式会社 営業局営業推進部
村田裕介氏に多大なご助言、ご協力いただきました。ここに感謝の意を表します。
<参考文献>
(※1)吉田正寛・一枝悟史(2024)「テレビメディアの実行動喚起効果から考えるリテールメディアのクロスメディアの有用性」『日経広告研究所報』336号,pp.54-61。
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