MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)のやり方~Z世代データサイエンティストが分析手順を解説【事例付き】

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MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)のやり方~Z世代データサイエンティストが分析手順を解説【事例付き】
この記事はこんな方にオススメ!
  • MMMを導入するにあたって、分析のロジックを理解しておきたい方
  • MMMが実際にどう活用できるのかを知りたい方
  • テレビCMやデジタル広告など、メディアミックスでの広告効果を検証・改良したい方

MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)とは、さまざまなマーケティング施策の効果がどのくらいあったのかを「数値データ」をもとに可視化する、統計学を用いた分析手法のひとつです。

昨今、マーケティング施策の効果検証にMMMを導入する企業が増えており、その有用性が注目されています。

本記事では、ビデオリサーチ在籍の"Z世代"データサイエンティスト・坂田耕太さんに、マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)を実際に利用している/今後利用を検討している方を対象として、MMMとはどのようなロジックで成り立っているのかを説明してもらいました。

「MMMを聞いたことはあるが、詳しくはわからない」
「どういった場面で役立つのか?」
といった基礎的な部分に関しては、以下の記事をご参照ください。

はじめてのMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)〜Z世代データサイエンティストが解説〜

ビデオリサーチ在籍の"Z世代"データサイエンティスト・坂田耕太さんに、初心者でもMMMがどんなものか理解できるよう、なるべく平たい言葉で解説してもらいました。

はじめてのMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)〜Z世代データサイエンティストが解説〜

1.MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)の手順

以下・坂田:MMMでは、以下の流れで分析を行います。

分析の流れ

それぞれの流れについて詳しく解説していきます。

[1]仮説整理

初めに、仮説の整理を行います。例えば売上を成果指標とする場合、それに影響する要因を洗い出し、各要因が売上にどのように関係していそうなのかを整理します。

ここで重要なことは、関心のある自社のマーケティング施策(内部要因)だけでなく、売上に影響する他の要因(外部要因)についても整理しておくということです。

外部要因には季節性やトレンド、競合の動向など様々なものがあります。これらを含めてMMMを実施することで、マーケティング施策の効果の算出をより正確に行うことができます。

[2]データ準備

次に、必要なデータを仮説に沿って準備します。必要なデータの量はケースにより異なりますが、例えば売上への影響を週次データで分析したい場合、最低でも2年以上の時系列データが必要になるでしょう。
必要なデータの例:
・メディア別広告出稿量
・店頭プロモーションのデータ
・配荷率
・季節性、トレンド、天気等 ※これらの要素が著しく売上に影響する場合のみ

[3]モデル構築

次に、仮説やデータに応じて適切なモデルを構築します。MMMで扱うデータは、週次の広告出稿量や売上といった時系列データとなります。したがって、モデル構築時には時系列データの処理に適した時系列モデリングの手法を検討します。

近年、時系列モデリングの手法の1つとして、「状態空間モデル」と呼ばれる手法が注目を集めています。状態空間モデルは、トレンドなど時系列データの背後にあるさまざまな現象を考慮したモデルを作成することが可能です。
その他にも、以前からよく知られているコイックモデル※1やHill関数を用いたHillモデル※2等、仮説に応じてベースとするモデルを決定します。

また、モデル構築時には[2]で準備したデータに対して前処理を行うことも重要です。
構築するモデルや各データの分布を確認し、適切な前処理を行うことでモデルの精度向上が見込めます。
例えば、データの分布やスケールを調整するため、対数変換※3や平方根変換※4を適用する場合があります。

これらのモデル構築作業を行う際、最近はPython※5が広く利用されています。

※1各マーケティング施策の効果は一定ずつ減少しながら繰り越されていく(消費者へ継続して効果を与える)として、売上等の目的とする指標への効果を推定する手法。
※2各マーケティング施策の効果をHill関数を用いてモデリングし、指標への効果を推定する手法。
※3データの対数(log)を取ること。分布の偏りや外れ値を抑えることが目的。
※4データの平方根(√:ルート)を取ること。対数変換と同様にスケールや分布の偏りを調整するために利用される。
※5機械学習など分析の用途で広く利用されているプログラミング言語の1種。

[4]結果の解釈

モデルの出力結果から結果の解釈を行います。例えば、「メディアAのROAS(Return On Advertising Spend:広告の費用対効果)はメディアBの2倍だった」、「メディアBへの出稿が過剰であり、これ以上出稿金額を増やしても売上の増加は見込めない」など、マーケティング施策の改善に繋がる知見を整理していきます。

構築したモデルを用いれば、様々な予算配分のパターンを想定した売上のシミュレーションも行えるので、適切な予算配分を探索的に検討することも可能です。

2. 分析事例

ここで、MMMの実際の分析事例を示します。分析の目的は、メディア別の広告効果を算出し、今後の広告予算の配分を検討することです。モデルの構造は下記の通りです。

分析モデルの構造

また、分析の事前準備として、各データを揃えた後に適切な形に整えます。ここでは関係各所からデータを取り寄せる、データの期間(粒度)を合わせる等を行います。

データを準備した後は、実際にモデルを構築して分析を行います。今回は各要因が売上にどの程度影響を与えるのかについて知りたいため、ROASを求めます。分析結果を図3に示します。

MMM分析結果

図3の分析結果より、メディアA、B、Cの順にROASが高い、つまり広告の費用対効果が大きいことが読み取れます。

また、いずれのメディアも出稿金額が増えるにつれて、ROASは徐々に減っていきます。

図3のように、広告による売上の増分が初期段階で最も大きくなるケースは多くあります。なぜなら、出稿量が増加するに連れて新規ユーザーへのリーチ数は減少し、同じ広告を目にすることで消費者へのインパクトも薄れるためです。

もちろん一概にそうとは言えず、広告から得られる効果は商材や環境によって異なります。重要なことは、広告の費用対効果を把握し、出稿量の過不足を見極めることです。

また作成したモデルを利用して、以下の様な出稿配分のシミュレーションを行うこともできます。

出稿配分シミュレーション

図4では、今年度と同額の予算を配分した次年度のシミュレーションを行い、今年度の実績と比較しています。

図4のシミュレーションから分かる通り、予算配分案Bを実施することで、より多くの売上が獲得できそうだということが分かります。

このように予算や期間、出稿メディアを変更してシミュレーションを行うことで、最良のマーケティング施策を検討することが可能です。

3. まとめ

本記事では、MMMの実施手順や分析事例を紹介しました。

これまでお伝えした通り、MMMではマーケティング施策を横断的に評価し、最適な予算配分を検討することができます。

近年注目を集めているMMMですが、実施にあたっては必要なデータの整備やモデリングの技術、結果を意味のある形で解釈して打ち手へ繋げられる分析能力など、自社だけで必要な要素を揃えることが難しい場面もあるかと思われます。

当社は業界標準のテレビデータ提供を始め、様々なメディアデータを計測、活用してきた経験から、他社では行うことが難しい詳細、かつ正確な分析を実施できます。
またマーケティング分野に精通したデータサイエンティストが、分析結果を基にした売上増加やブランドイメージ向上のための打ち手の提案といった、結果の活用シーンまで伴走することも可能です。

MMMの導入を検討されている方、またMMMで得られた結果の活用に悩まれている方は、ぜひ一度当社へご相談下さい。

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