ゲーム実況・VTuberコンテンツを中心とした"ライブ配信メディア"における<推し活>構造を読み解く

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ゲーム実況・VTuberコンテンツを中心とした"ライブ配信メディア"における<推し活>構造を読み解く
この記事はこんな方にオススメ!
  • ゲーム実況やVTuberコンテンツを活用した「推し活マーケティング」に興味がある方
  • 「推し活」を広告コミュニケーションに活かしたいと考えている方

1.ひと研究所が考える<推し活>とは

生活者の今と未来のインサイトを探求する、ビデオリサーチのシンクタンク「ひと研究所」では、活動の一環として「推し活研究」を行っています。<推し><推し活>は、単なるムーブメントではなく、いまの生活者を理解する上で非常に重要な概念であると考えます。

ひと研究所では、<推し活>は生活者の特別な欲求が発生した結果ではなく、人が普遍的に持っている欲求の一つである「楽しみを見いだしたい、感じたい」というニーズに基づいたメカニズムが働いているものだと考えています。
その"楽しみ"を享受するために行う代表的なアクションとして、「受け取る」「使う」「つながる」の3つがあるのではと考えており、そこに<推し>という核があることで、3方向全ての楽しみを網羅できると捉えています。例えば、テレビや動画、映画、漫画などのコンテンツを見聞きする(受け取る)。ライブに行く、グッズを買うなど、自身のお金や時間、労力を費やす(使う)。SNS上の交流や、ファンイベント・オフ会などに参加し友人や仲間をつくるなど、他者とコミュニケーションを取る(つながる)といったことです。

<推し>は<推し活>を通じて、どの方向からも楽しみをもたらしてくれる

核となる<推し>の対象はアイドルや俳優、歌手、キャラクターなど多岐にわたりますが、今回は若者を中心に人気を集めている、ゲーム実況やVTuberコンテンツをライブ配信している配信者(ストリーマー)に注目し、当社が2024年1月に実施した「ライブ配信メディア調査」の結果をもとに、ライブ配信市場における推し活行動を読み解いていきたいと思います。

【ライブ配信メディアレポート】詳細はこちら

2.「ライブ配信メディア」における推し活行動は?

ゲーム実況やVTuberのライブ配信コンテンツを習慣的に視聴している人々は、"楽しみ"を享受するために、どのようなアクションを取っているのでしょうか。
それぞれのアクションについて、順番に見ていきたいと思います。

ライブ配信メディアにおける<推し活>行動

まず、情報・コンテンツを「受け取る」というアクションにおいては、ゲーム実況やVTuberコンテンツなどのライブ配信視聴行動があげられます。YouTubeやTwitchといったライブ配信サービスで視聴されている動画ジャンルの1位は「ゲーム実況」、2位は「VTuber (バーチャルYouTuber)等の雑談配信」であり、YouTubeライブ配信視聴者の41.1%がゲーム実況またはVTuber配信を視聴しています(図表1)。

【図表1】各サービス別 動画視聴ジャンル
【図表1】各サービス別 動画視聴ジャンル

さらにライブ配信メディアでは多くの配信者が5時間を超えるほどの長さで毎日のようにリアルタイムで配信しており、視聴者もその1つの配信に長時間滞在する傾向があります。そのため、視聴行動は単にコンテンツを「受け取る」だけでなく、自ら時間や労力を「使う」というアクションにもつながっています。特にTwitchなどのゲーム実況コンテンツが中心のライブ配信サービスでは、1日あたりの平均視聴時間が約100分近くに達しており、この傾向が顕著に表れています(図表2)。

また、<推し>を応援したい、感謝を伝えたい、貢献したいといった気持ちから、配信中に "投げ銭"を送ったり、メンバー特典の利用等を目的としたメンバーシップ登録(月額会員登録)するなど、お金も積極的に「使う」行動がみられます。
このように、ライブ配信市場においては、積極的に時間もお金も費やす、熱量の高い<推し活>行動がみられます。

【図表2】1日あたりの平均視聴時間(分)× 1ヶ月以内利用者数(MAU)
【図表2】1日あたりの平均視聴時間(分)× 1ヶ月以内利用者数(MAU)

最後に、他者と「つながる」というアクションにおいては、配信中の視聴者同士のコメントのやり取りや、配信者に投げ銭を送ることでのリアクションやコメントを受け取る行動があげられます。ライブ配信の魅力としても、「配信者のリアルなリアクションが見られる」「コメントで配信者とやり取りができる」が上位に入っており(図表3)、コンテンツの視聴だけでなく、リアクションやコメントを通したコミュニケーションも楽しみの一つになっているのです。

【図表3】ライブ配信コンテンツの魅力
【図表3】ライブ配信コンテンツの魅力

このように、ゲーム実況やVTuberコンテンツをライブ配信している配信者(ストリーマー)を核としたライブ配信市場においても、人々は「受け取る」「使う」「つながる」の3方向の"楽しみ"を享受しており、<推し活>として大きな盛り上がりをみせています。

3.プレイスキルだけじゃない!ファンを惹きつけるのは配信者自身の魅力とそのコミュニティ全体が持つ居心地の良さ

ゲーム実況や雑談等を中心に配信している配信者(ストリーマー)やVTuberが推してもらうために重要なことは何でしょうか。
ライブ配信視聴者における<推し>を好きな理由として、「人柄」や「リアクション」「コメントのやり取り」「雰囲気」が上位に入っている(図表4)ことから、配信内容やゲームのプレイスキル以上に、配信者本人の人間性が重要であることが分かります。大会に出場しているような競技性の高いプロゲーマーと違い、ゲーム実況や雑談配信を通してファンとのコミュニケーションを楽しむ配信者(ストリーマー)やVTuberにおいては、ことさらその傾向が顕著です。
毎日のように長時間配信され、ファンが集まりコミュニケーションが取られるライブ配信メディアは、まるで「居場所」のような存在になっています。そのため、ファンを惹きつけるためには、配信者本人とそのコミュニティ全体が作り出す居心地の良さが重要になってくるでしょう。

【図表4】推しを好きな理由
【図表4】推しを好きな理由

4.ライブ配信メディアにおける"コミュニティ"を企業が活用するためには

ライブ配信メディアにおける、配信者と視聴者の"コミュニティ"は、企業にとっても有効なマーケティングツールになる可能性があると考えます。

ライブ配信メディア調査からは、<推し(好きな配信者やeスポーツ選手)>による案件配信をきっかけに、プロモーションしていた商品の購入経験は25.3%と、4人に1人が購入したことがあることが分かりました(図表5)。
また、購入理由は「案件配信が楽しかったから、企画がよかったから」が46.3%と最も高く、コミュニティがもつ雰囲気を壊さないような、楽しい企画にできるかどうかがポイントになると考えられます(図表6)。

【図表5】推しの「案件配信」で紹介していたものの購入経験
【図表5】推しの「案件配信」で紹介していたものの購入経験

【図表6】推しの「案件配信」で紹介していたものの購入理由
【図表6】推しの「案件配信」で紹介していたものの購入理由

さらに、生成AIで定性調査を支援するサービス「Asclone(アスクロン)」を使って、ライブ配信視聴者かつ案件配信をきっかけに商品の購入経験のある「AI相談相手」を生成し、購入理由について聞いてみました。
すると、多くが「信頼できる配信者だったから」「配信者の信頼感と実際の使用感を見て」などのように、「配信者が信頼できるから」という点を理由にあげていました(図表7)。

【図表7】案件配信で紹介されていた商品を購入しようと思ったのはなぜですか?
①商品の効果や魅力がわかりやすく説明されていて、信頼できる配信者だったからです。 ②配信者の信頼感と実際の使用感を見て、試してみたくなったからです。

では、その配信者への信頼感はどこからきているのでしょうか。さらに配信者からの推薦が信頼できる理由を聞いてみると、「普段から見ている配信者なので、配信者の好みや選び方も知っているから」や「配信者は自分のファンを大切にしているから」などの理由があがりました(図表8)。
毎日のように長時間視聴していることで、配信者自身の特性や嗜好を深く理解し、自分の仲間のように感じるようになるため、信頼感が高まると考えられます。また、日々配信の場である"コミュニティ"に集まる視聴者を配信者自身も大切にしており、その想いがファンにも伝わることで、さらに信頼感が増すのでしょう。

【図表8】なぜ配信者からの推薦は信頼できるのですか?
①普段から見ている配信者なので、彼女の好みや選び方を知っているから信頼できるんです。 ②配信者は自分のファンを大切にしているため、質の高い商品を紹介する傾向があり、それにより信頼性を感じることができます。

つづいて、企業が案件配信をする際に気をつけるべきポイントを考えてみましょう。AI相談相手たちに聞いてみると、「配信者の自由な判断を尊重すること」、「配信者と商品のマッチング」、「実体験をもとに偽物感が出ないよう工夫すること」などの意見があがりました(図表9)。
視聴者は配信者の特性をよく理解しているため、普段とは異なる紹介の仕方をすると違和感を覚え、信頼感が低下してしまう可能性があります。そのため、配信者自身が商品の良さを実感し、普段通りの自然な形で紹介できることが重要です。

さらに、配信者と商品・ブランドの相性を確認するとともに、その配信者の動画を視聴している視聴者層の特性を理解し、それに基づいた効果的なコミュニケーションを図ることが重要だと考えます。

【図表9】企業が案件配信をする際に気をつけるべきポイントは?
①配信者が主観的な意見やレビューをしっかり表現できるよう、商品の使用方法を押し付けず自由な判断を尊重することがポイントだと思います。 ②配信者と商品のマッチングが重要で、その対象やテイストに合った内容を選ぶこと、さらに、実際の体験や実践を大切にして偽物感が出ないように工夫することが必要です。

今後、ライブ配信を活用したマーケティングは、視聴者との双方向の関係を重視した手法へと進化していくと考えられます。配信者と視聴者が築くコミュニティの力を最大限に活用するためには、単なる商品紹介に留まらず、配信者と商品・ブランドのターゲット層やイメージ、価値観などをしっかりとマッチさせ、視聴者との共感を深める取り組みが求められるでしょう。配信者や視聴者の嗜好・行動をより詳細に把握できるようになれば、企業はターゲットに最適化された商品提案やキャンペーンを実現できるようになると考えます。

当社では、引き続きライブ配信メディアの視聴者層の実態を把握することで、より効果的な広告コミュニケーションを実践できるような支援を目指していきたいと思います。

【本記事で紹介したサービス】
■サービス名:ビデオリサーチ「ライブ配信メディアレポート
・調査手法:WEB調査
・調査期間:2024年1月26日(金)~28日(日)
・調査対象:全国に居住する15~49歳男女個人 且つ YouTube Live(ライブ配信)またはTwitchでゲーム実況やVTuberの動画を月に1回以上視聴している人
・サンプルサイズ:【事前調査】53,635 ss 【本調査】2,403ss

■サービス名:ビデオリサーチ「Asclone
・ご利用方法:PCやスマートフォンブラウザからのサービスログインによるご利用 ※推奨ブラウザ:Google Chrome、Safari
・契約形態:サブスクリプション形式 1ID、月額55,000円(税込) 

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