若い世代ほど苦労を感じてでも推し活に"お金"と"時間"を捻出 ―2024年「推し活」の実態調査から紐解くVol4

- この記事はこんな方にオススメ!
-
- 「推し活」について興味がある方
- 「推し活」の実態について知りたい方
ビデオリサーチ内の生活者に関するシンクタンク「ひと研究所」では、数年の間に生活者に定着した<推し活>の実態について調査・研究を進めています。<推し>や<推し活>は若者に限った話ではなく、中高年においても4人に1人は<推し>がいることが調査結果からも分かっています。世代を問わず多くの人が行っている<推し活>ですが、具体的には『購買行動』、『映像メディアの利用』、『SNSの利用』が活動の主軸となっているようです。
ひと研究所ではこれまで<推し活>について、『映像メディアの利用』、『SNSの利用』についてそれぞれの実態をご紹介してきました。Vol4である本記事では、『購買行動』を含む『消費行動』について調査結果をもとに見えてきた内容をご紹介します。
なお、ひと研究所では、『消費行動』を<生活者の資源である"お金"と"時間"を消費すること>であると考えています。推し活の消費行動においても"お金"と"時間"の2つの視点からみていきたいと思います。
<前回までの記事はこちら>
中高年も4人に1人は「推し」がいる時代 2024年「推し活」の実態を調査データから紐解く
「YouTube(動画)」と「テレビ」が推し活の主軸に ―2024年「推し活」の実態調査から紐解くVol2
推しがいる人は1日のSNS利用の約半分の時間を<推し活>に費やしている ―2024年「推し活」の実態調査から紐解くVol3
1.若い世代ほど<推し活>にお金をかけている
はじめに、年間で<推し活>にいくらお金をかけているのかみてみます【図1】。いずれの世代も「1万円未満」が過半数となっています。これは、<推し>という言葉が社会に浸透したことで、「好き」「おすすめ」などの意味を含んだ広義的なものとなってきており、<推し活>をしている人たちの中でも、お金を使う活動はしていない層が多く存在するためだと考えられます。
しかしその一方で、年間「50万円以上」と高額使用者も一定数存在しています。世代別にみてみると、若い世代になるほど年間「50万円以上」の回答割合が高くなっており、若い世代の方が<推し活>にお金をかけている傾向がうかがえます。
※X/Y/Z世代の定義については諸説ありますが、本記事で用いた調査は15歳以上を対象としているため、Z世代を「男女15-26歳」、Y世代を「男女27-42歳」、X世代を「男女43-58歳」と定義して分析をしています。
2.<推し>がいるZ世代の6人に1人が、推し活にお金を費やすことに苦労を感じている
次に、<推し活>において「お金」や「時間」を費やすことに"苦労"を感じているのかについて確認してみます【図2】。「時間」を費やすことに苦労を感じている人は、Z世代は7.3%、Y世代は9.0%、X世代は3.9%、59~69歳は3.4%となっていますが、「お金」を費やすことに苦労を感じている人はZ世代では16.7%、Y世代は15.2%、X世代は10.1%、59~69歳は7.0%となっています。このように「時間」よりも「お金」に苦労を感じている人が多いということがわかります。
さらに世代別にみてみると、若い世代ほど苦労を感じる人が多く、特に「お金」ではZ世代の16.7%が苦労を感じていることがわかります。スコアだけを見るとそれほど多くないように感じますが、本来楽しみを享受するために行っている<推し活>において、6人に1人が"苦労"も感じているということに驚きを感じます。
3.Z世代、Y世代、X世代は、睡眠時間を削って<推し活>の時間を捻出
では、推し活に「お金」や「時間」を捻出するためにどのような工夫を行っているのでしょうか。結果を一部ご紹介します(自由回答)。「お金」に関する工夫では、いずれの世代も「節約・やりくり」、「働く」などの回答が多くなっていました。具体的には、仕事を頑張って給与を上げる努力をしたり、パートやアルバイトなどの時間を増やすといった努力をしているようです。また、Z世代、Y世代、X世代では「ポイ活」、59~69歳では「貯金を使う」といった回答も見られました。
「時間」に関する工夫では、どの世代も「時間調整・やりくり」という回答が多く見られました。そして、Z世代、Y世代、X世代では、「睡眠時間の削減」といった回答も多く、睡眠時間を削ってまでも<推し活>の時間を確保するというところに、<推し><推し活>に"ハマっている"、"沼っている"様子がうかがえます。
4.<推し活>にハマる・沼るメカニズムとは
では、節約や仕事を頑張ってお金を捻出したり、睡眠時間を削ったり、苦労を感じてまでも<推し活>を続けるのはなぜなのでしょうか。
ひと研究所では、<推し活>の「応援」と「表明」という側面が"自分を形成する"ことにつながるからだと考えています。
具体的には、「応援」とは<推し>が出ているコンテンツを見たり、イベントに参加したり、関連グッズを購入したりすることです。また、<推し>のコンテンツをランキング入りさせるために再生回数を増やしたり、生放送でのパフォーマンスを見守ったりすることも含まれます。<推し>を応援することで、「自分は誰か(何か)の役に立っている」「影響を及ぼしている」という貢献意識が育まれます。
また、「表明」とは他者に「<○○推し>です」と伝えたり、グッズを持ち歩くなどして、第三者に自分の<推し>を開示することです。これは「自分がどんな人間で、何が好きなのか」を表明する行為で、その結果自己意識が培われます。
「応援」で育まれた「何かの役に立っている」という貢献意識は自己肯定感や自尊心を育て、「表明」によって培われた自己意識はアイデンティティを形成していくものと考えられます。そしてその先には、生きる意味の発見、ひいてはその人の生き方そのものにつながっていくのではないでしょうか。
<詳しい内容はこちら>
若者だけじゃない!人々の行動を左右する「推し活」から生活者を理解する
このように考えると、<推し活>はただの娯楽にとどまらず、心に深く刺さり、自分自身に強く影響を与えていくものだと言えそうです。
それが<推し活>に"ハマる"、"沼る"背景や要因であり、苦労を感じてでも"続ける価値"ではないかと考えられます。
5.<推し>の有無が今後の生活者をとらえるうえで重要な視点に
これまで全4本の記事にて<推し活>の実態をご紹介してきました。
細かい部分では年代による差が見られるものの、それ以上に<推し>の有無による実態の違いに特徴があることがわかりました。メディアやSNS利用量の違いなどの結果から、「推しがいる人」と「推しがいない人」では行動に差があり、また「推しがいる人」の意識にも特徴を見出すことができます。つまり、今後の生活者を考えていくうえで<推しの有無>というのは重要な視点となってくるのではないかと考えます。
ひと研究所では、今後も<推し活>に関する記事を発信する予定です。引き続きご期待ください。
また、<推し活>研究やメディアでの引用・紹介にご興味をお持ちいただけましたら、お気軽にお問い合わせください。
お気軽に以下よりお問い合わせください!
【ひと研究所 推し活調査2024年2月 調査概要】
調査日 :2024年2月6日(火)~2月7日(水)
調査手法 :web調査
調査エリア :全国
サンプルサイズ :4,234(SC)、1,437(本調査)
対象者属性 :男女15~69歳