生活者としての"個性"を持った生成AIと会話ができるツール「Asclone」を活用し、仮説づくりや調査設計の精度を向上!

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生活者としての"個性"を持った生成AIと会話ができるツール「Asclone」を活用し、仮説づくりや調査設計の精度を向上!

【事例】GMO NIKKO株式会社

高度なデジタルマーケティングを強みとする総合マーケティング支援会社として、数多くの実績を誇るGMO NIKKO株式会社。「Surprising Partner. まだ世にないコミュニケーションを、ともに。」をビジョンに掲げ、従来の広告代理事業のみならず、自社で企画・開発したサービス・プロダクトも活用して包括的な支援を手がけています。

その中でも同社は、デジタル広告のストラテジックプランニングにおいて、ビデオリサーチの「Asclone(アスクロン)」を2024年11月から導入。これは、個性を持った生活者のクローンをAIで生成し、自由にインタビューできる次世代型リサーチツールです。主に企画のアイデア出しや仮説設計する際に、「何度でも聞ける相談相手」「調査企画のサポート役」として役立てているという神津氏に、ビデオリサーチの野木が活用状況やその効果などについて伺いました。

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GMO NIKKO株式会社
神津洋幸氏(写真右)
ストラテジックプランニンググループで、マネージャー兼プレイヤーとして主にクライアント企業とユーザーをつなぐコミュニケーション戦略構築の業務を担う。企業サイト、インターネット広告、SNS、各種キャンペーンなどを企画するにあたり、ネット調査やアンケートなどの定量調査のほか、デプスインタビューやグループインタビューなどの定性調査を行う機会も多い。並行して、マーケター向けにマーケティング情報を発信するオウンドメディア「TRUE MARKETING by GMO」の副編集長も兼任。同サイトでZ世代に関する情報を発信する「Z世代トレンドラボ」を立ち上げている。

株式会社ビデオリサーチ
野木 美穂(写真左)
ビジネスデザインユニット ビジネスデザイングループ プランナー/ひと研究所研究員
2015年ビデオリサーチ入社。マーケティングデータ(ACR/ex)の運用・開発を経て、調査企画・分析・ソリューション提案に従事する傍ら、ビデオリサーチのシンクタンク「ひと研究所」に参画。Z世代・α世代研究にもとづき、クライアント向けのセミナー登壇や分析記事執筆などを行う。現在は、新規事業開発部署にてAIを活用した新サービス開発・運用に従事。

  • 【導入目的】

    ・定性調査におけるストーリー設計や企画立案時のブレスト相手として活用。

  • 【課題】

    ・生活者への定性調査(インタビュー)には時間とコストがかかるため、調査の効率化が求められた。
    ・ChatGPTも利用しているが、ブレスト相手としての実感がなかなか得られなかった。

  • 【効果】

    ・自分では思いつかなかった企画のヒントが得られた。
    ・定性調査前に想定質問をクローンに聞き、調査内容の精度アップにつなげられている。
    ・Z世代のトレンドを予測させたところ、現役Z世代から共感を得る結果を導き出せた。

記事の中で使用しているサービス「Asclone」

時間とコストをかけずに何度も質問、ターゲット層のクローンが実感のある答えをくれる

野木 最初に、「Asclone」を導入した経緯や理由を教えてください。

神津 2024年にビデオリサーチの方とお会いする機会があり、そのときに「Asclone」をご紹介いただいたんです。話を聞いて、生成AIを活用して顔、名前、個性を持ったユーザーのクローンを作り出し、彼らとチャットで会話できるのがとても面白いと思いました。

加えて、AIだからこその軽やかさもありますよね。デジタル広告のストラテジックプランナーとして企業サイト、インターネット広告、SNS、各種キャンペーンなどを企画するにあたっては、デプスインタビュー※1やグループインタビュー※2といった定性調査が欠かせません。しかし、これには非常に多くの時間とコストがかかるので、気軽に何度も実施することはできないんです。

※1対象者の深層心理や本音を引き出すための詳細なインタビュー手法。通常、1対1で行われ、自由な対話を通じて、対象者の考えや感情を深く理解することを目指す。
※2複数の参加者が集まり、特定のテーマについて自由に意見を交換する手法。参加者同士の対話を通じて、多様な視点や深い洞察を得ることが目的。

そのため、限られた時間とコストの中で最大の効果をもたらす方法を模索する必要があります。「Asclone」を導入すればインタビュー前に仮想的にいろいろな質問を試せるし、効率化にもつながると考えたのです。

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また、AIツールのさらなる有効活用を模索したいという意図もありました。現在、GMOインターネットグループでは、全メンバーでAI活用の推進に取り組んでいます。実際に私も「Asclone」導入前から、ChatGPTなどのAIチャットツールをブレスト相手に使っていました。しかし、機械相手に会話をしているので、どうしても実感を伴う回答が得にくいんですよね。さらに一歩踏み込んだツールがあれば使いたいと思っていたところでした。

野木 「Asclone」を導入後、どのような効果を感じましたか?

神津 一番の効果は、デプスインタビューに近いことを、仮想で再現できることですね。しかも、相手の顔や"個性"が見えるので、実感を伴った会話が可能。時間とコストを気にせず、気軽にいつでも何度でも質問できるのはとても良い仕組みだと思います。

また、「Asclone」で生成する"個性"を持った生活者の属性の設定方法がとてもシンプルで、ターゲットの絞り込みがスムーズに行えると感じました。必要事項を入力してボタンをクリックするだけで、名前と顔写真付きのプロフィールが6人分出てくる。これは画期的です。

<対象者の属性設定画面>

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<質問画面>

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企画立案時の仮説づくりや、インタビューのストーリー設計に活用

野木 実際に業務の中で、「Asclone」をどのように活用されていますか?

神津 企画立案の前段階となる「仮説づくり」の設計に役立てています。例えば広告をプランニングする場合は、まずターゲット層の人たちにどのようなメッセージを伝えれば良いのかを考えます。そのために、「こういうターゲット層がAという商品を選択するのは、こういうことを重視しているからだ」といった仮説を立て、それを立証するための調査を行うのです。

「Asclone」を活用するのは、主に調査の前です。ターゲット層のクローンたちと会話すると、自分たちが想定していた回答はもちろん、想定していなかった興味深いヒントがたくさん出てくるんですよ。そこで今度は、それらをもとに仮説を立てます。さらに、その仮説を検証するための定量調査にかけ、仮説の精度を上げてから定性調査を行うなどしています。

また、定性調査を行う前に、「Asclone」でいろいろな想定質問をぶつけてみることも多いですね。多様な答えが返ってくるので、インタビューのストーリーを設計するうえでの参考にしています。

そのほか、企画を構築するときの「良い相談相手」として活用することもあります。いずれにしても、最終アウトプット前の準備のプロセスで使っています。

野木 「Asclone」によって、より多くのヒントを提供できているのなら嬉しいです。もともと「Asclone」は、既存の調査方法をAIに置き換えるものではなく、あくまで選択肢を広げることを目的に開発したツールです。最大の特徴は、生成された属性の人たちの「考え方」を示す点。相談相手のAI進化版として利用者にヒントを提供し、アイデアに新しい価値を創造できるように支援することを目指しています。

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Z世代のトレンド予測を行ったところ、Z世代当事者からの共感を呼ぶ結果に

野木 今回、神津さんが運営している「Z世代トレンドラボ」でも、「Asclone」を活用していただきました。「Asclone」でZ世代女性のAIクローンを生成して、2025年に流行りそうなスイーツを予測。その後、実際に現役Z世代に意見を聞き、本当に流行りそうかどうかをジャッジするといった対談企画でしたが、率直な感想を聞かせてください。

【外部記事】
「Asclone」の"AIクローンZ世代"が2025年に来るスイーツを大予測!リアルZ世代の反応は?

神津 トレンド予測のクローンからの回答抽出は野木さんにお任せしましたが、予想以上に満足できる回答が得られたと思いました。実は、AIは固有名詞など具体名の入った予測が苦手だと聞いていたので、この企画は少々厳しいかなと不安ではあったんですよね。

野木 今回、確かに、現在の技術だと生成AIは固有名詞に弱くて、実際に存在しないものを勝手に作り出してしまう傾向はあります。しかし、具体的な固有名詞でなくとも、素材や色、形状などに関する質問にはしっかりと答えてくれるんですよね。

だから、質問の仕方も具体名ではなく、「流行りの素材」「インスタ映え」などの方向で投げかけていこうと考えたんです。

神津 私も、「なるほど、こういうふうに聞けば良いのか!」と勉強になりました。

実際に野木さんから挙がってきたキーワードを調べてみたら、世の中のトレンドも捉えていて「本当に流行りそうかも」と思わせてくれるものばかり。なおかつ、すでに流行っているものから、少しひねったものまで、幅広い視点で予測していたのには驚きました。

例えば、「グリークヨーグルト」や「バブルワッフル」など、すでに流行っているものは当然出てきますよね。面白いところでは、「カラフルなモンブラン」「ピンチョス風のスイーツ」など。

どれも、今後、若年層に流行るであろう要素がしっかり内包されているんですよね。Z世代代表としてこの企画に参加した現役女子大生からの反応も良く、予想していたよりもかなり優秀なツールだと思いました。

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神津 さらに今後、Z世代トレンドラボで調査した多様なデータを「Asclone」にインプットさせて、「Asclone」のZ世代バージョンみたいなものができると良いですね。

野木 そうですね。ほかにも、各企業が独自に所有しているデータや、ある特定の商品について学習させることができれば、そのテーマごとで生活者の実態により近いクローンを作り出すことができると考えています。今後の開発にご期待ください。

個性を持ったAIチャットのさらなる進化に期待

野木 今後、「Asclone」をどのように活用していこうと考えられていますか?

神津 導入したばかりということもあり、まずはこれまで通り、仮説づくりのための効率的なツール、ブレストの良き相談相手として活用しようと考えています。「Asclone」はクローンと会話を重ねるごとに、その時々の質問への理解が進み、どんどん面白いアイデアを提示してくれます。さらに使い込んでいけば、活用の可能性は広がっていくはずです。

そのためにも、「Asclone」がさらに進化していくことに期待しています。例えば、単に質問してその答えが返ってくるだけではなく、質問ごとに「個性的な答えを」「現実的に考えて」などの思考パターンを調整できると良いのかもしれません。

野木 その点は、開発者としても課題に感じているところでした。「Asclone」の開発コンセプトは、「個性を有する生活者のデジタルクローン」です。多様な意見が出る中でも、もっと現実的かつ個性的な回答が得られたり、思考パターンにバリエーションを持たせたり。今後、活用シーンがもっと広がるように、チューニングしていきたいと思います。

神津 とにかく「Asclone」は、コンセプト自体が本当に素晴らしいと思います。新しいアイデアや発見をもたらしてくれる道具として、今後も期待しています。

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