【小西 未来のハリウッドのいま、日本のミライ】2024年のメモリアルデーは低調なスタート。その要因と注目の最新作とは?
アメリカで5月最後の月曜日はメモリアルデー(戦没将兵追悼記念日)という祝日だ。 夏休み直前とあって、夏の大作映画が封切られることで知られている。
大作映画の増加に伴い、最近は映画のサマーシーズンがどんどん前倒しになっていて、たとえば「アベンジャーズ/エンドゲーム」は4月末に公開されたが、それでもメモリアルデーの週末が重要な公開日であることには変わりない。
公開日の金曜日からメモリアルデーの月曜日までのオープニング4日間の成績は例年1億ドルを突破するのが当たり前で、「トップガン マーヴェリック」の1億5600万ドルを筆頭に、「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」が1億3980万ドル、「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」が1億2690万ドルという数字を叩き出してきた。昨年公開された実写版「リトル・マーメイド」も1億1800万ドルである。
だが、今年のメモリアルデーの週末に封切られた「マッドマックス:フュリオサ」はなんと3200万ドルと惨敗。
メモリアルデーの首位作品においては、1995年公開の『キャスパー』(2250万ドル)以来の低調なスタートとなってしまった。本作は高評価で口コミも良いにもかかわらず、この結果となった理由は複数考えられる。
第一に、昨年半年に及んだ米脚本家組合と米俳優組合のストライキだ。
「ミッション:インポッシブル8(仮題)」をはじめ、多くの大作映画の制作が中断され、公開延期を余儀なくされた。
5月上旬に公開予定だったマーベル最新作「デッドプール&ウルヴァリン」も7月下旬にずれ込んでいる。例年のサマーシーズンなら毎週のように大作映画が公開されていたのだが、今年はそうした作品が不足している状況にある。
さらに、「マッドマックス:フュリオサ」にメモリアルデー公開は荷が重すぎた側面もある。
前作「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のオープニング成績は4540万ドルである。熱狂的なファンはいるものの、たとえばマーベルや「スター・ウォーズ」のような一般大衆に広く親しまれる万人受けする作品ではない。
いささかニッチなタイトルをメモリアルデーの目玉に据えたことが間違いだった。
もっとも深刻な問題は、コロナ禍を経て観客が映画館で鑑賞する作品を慎重に選ぶようになったことだ。
動画配信サービスの発達と新作映画の劇場公開から配信までの期間の短縮により、配信を待つ人が増えている。
さらに、現在アメリカではインフレが深刻な問題となっており、映画館での鑑賞コスト(チケット代のほか、飲食代、駐車代、ベビーシッター代など)が高止まりしている。その出費を正当化できるだけの価値のある作品が限られているのが実情である。
このような状況下で、7月26日全米公開予定の「デッドプール&ウルヴァリン」の興行成績が注目される。
デッドプールがマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)に初参加する作品でもあり、ウルヴァリンとの共演が見物となっている。仮にこの作品も不振に終わるようであれば、映画興行は本格的な危機に陥ると言えるかもしれない。
<了>