【小西 未来のハリウッドのいま、日本のミライ】コンテンツの世界を体感できる「Netflix House」が切り拓くエンターテインメントの未来
米動画配信大手Netflixが、エンターテインメント業界に新たな衝撃を与えている。
2025年、同社は「Netflix House」と呼ばれる複合エンタメ施設をオープンすると発表した。この大胆な一手は、単なる事業拡大にとどまらず、エンターテインメントの未来を形作る革新的な取り組みとして注目を集めている。
Netflixは近年、コンテンツ配信の枠を超えた展開をみせてきた。
ニューヨークのパリス・シアターやロサンゼルスのエジプシャン・シアター、ベイ・シアターなど、歴史ある映画館を相次いで買収。これらを自社作品のプレミアやプロモーションの場として活用し、リアルな体験の場を確保してきた。
しかし、今回のNetflix Houseは、従来の劇場とは一線を画す野心的な試みだ。
現在はテキサス州ダラスとペンシルベニア州フィラデルフィア郊外の2か所に計画されており、どちらもショッピングセンター内の旧デパート跡地を利用した複合施設である。
ここでは、ショッピングや飲食はもちろん、Netflixの人気シリーズの世界観を体感できる没入型アクティビティまでもが用意される。
まさに、バーチャルとリアルの融合を目指す斬新な取り組みと言えるだろう。
この新事業は、Netflixがこれまで展開してきた小売戦略の集大成とも言える。
たとえば「ストレンジャー・シングス 未知の世界」のオフィシャルストアはフランスのパリをはじめ、アメリカのマイアミ、ダラス、ニューヨーク、シカゴでポップアップとして展開し、現在はラスベガスとブラジルのサンパウロでオープン中。
カナダのトロントでは「ナイブズ・アウト:グラス・オニオン」にあわせたミステリーディナー、イギリスのロンドンやマレーシアのクアラルンプールでは「ブリジャートン家」にあわせたアフタヌーンティーのイベントも実施されている。
施設内には、「ブリジャートン家」「ストレンジャー・シングス 未知の世界」「イカゲーム」など、Netflixを代表するフランチャイズの世界観を忠実に再現したショップやレストラン、体験型アトラクションが設置される予定である。
最高マーケティング責任者のマリアン・リーは、「Netflix Houseでは、定期的に更新される没入型体験を楽しんだり、ショッピングを満喫したり、ユニークなフードやドリンクを通じて、お気に入りのNetflixシリーズや映画を文字通り味わうことができます」と語り、この新施設がNetflixの特色あるサービスの次世代を象徴するものであることを強調している。
この取り組みは、Netflixが単なるストリーミングサービスの枠を超え、実体験を通じてファンとの絆を深め、新たな収益源を開拓する戦略の一環だとみられている。
最初の2店舗は2025年、ペンシルベニア州のキング・オブ・プルシアとテキサス州のガレリア・ダラスにオープンする予定だ。
もちろん、ディズニーのように大規模なテーマパークやクルーズラインのような事業を短期間で築き上げることは困難だろう。
しかし、Netflixの着実な歩みは、エンターテインメント業界に新たな可能性を示唆している。
デジタルとリアルとの融合、コンテンツと商品の一体化、そしてファンとの直接的な交流を重視するこの取り組みは、エンターテインメント産業の新たな地平を切り開く可能性を秘めている。
Netflixが描く未来のエンターテインメントの姿に、消費者のみならず、業界関係者も注目している。
<了>