【小西 未来のハリウッドのいま、日本のミライ】米国の動画配信サービスで広告付きのTubiが躍進
近年、ディズニープラスやMax(旧HBO Max)など大手動画配信サービスが相次いでコンテンツ予算の削減に乗り出している。この動きは主に、各社の財務的な圧迫と、量より質を重視するコンテンツ戦略への転換によるものだ。
例えば、ディズニープラスは2023年前半と2024年前半を比べ、オリジナル作品のラインナップを半減させた。Netflixも同期間で203本から174本へと減少している。主要8社の合計でも前年比19%の減少となっている。
背景には、加入者数の拡大を過度に追求した結果、持続不可能な財務体質に陥ったことがある。ディズニーは作品数を絞り込み、1作品あたりの制作費も抑えることで、コンテンツ関連支出を削減する方針だ。
かつての"数撃ちゃ当たる"的な作品量産路線は終焉を迎えつつあり、動画配信サービス各社は財務基盤の安定化と、付加価値の高いラインナップの実現に向けて舵を切っているのだ。
そんな中、アメリカでTubiという広告付きの無料動画配信サービスが躍進している。
米紙「ロサンゼルス・タイムズ」が報じたところによると、Tubiの今年5月の平均視聴者数は100万人に達し、前年同月から46%増加した。
ディズニープラスの96万人を上回り、Peacock、Max、Paramount+も軽く引き離している。無料動画配信としても、ライバルのThe Roku ChannelやPluto TVを抑え、YouTubeに次ぐ2位の座に躍り出たのだ。
Tubiは2014年にサンフランシスコで創業、2020年にフォックスに4億4000万ドルで買収された新興サービスだ。
当初は知名度も低く、無料で使えるのを不審に思うユーザーも多かったそうだ(正直に言うと、自分もその一人だった)。それがいまでは動画配信サービスの選択肢としてNetflixや Prime Videoと並ぶ存在になってきている。
Tubiが支持される理由はいくつかある。
まず、かつて広告付きサービスは敬遠されていたが、NetflixやPrime Videoが広告付きプランを提供したことで、ハードルが一気に下がったことだ。
また、有料サービスが次々と値上げをする中で、Tubiは無料で提供し続けている点も大きい。インフレの中でユーザーの心強い味方となっている。
Tubiの視聴者層も特徴的だ。同社によると、視聴者の63%は、ケーブルテレビを解約した「コード・カッター」か、そもそも契約したことのない「コード・ネバー」だという。
全体の半数近くが黒人、ヒスパニック、アジア系、LGBTQ+などのマイノリティで、平均年齢は39歳と若い。この層のニーズを的確に捉えた戦略が奏功しているようだ。
Tubiのコンテンツ数は約25万本と決して多くはないが、旧作を中心にバラエティ豊かに揃えている点が評価されている。
また、オリジナル作品も現時点で200タイトル以上あり、知名度の向上に伴い有名タレントを惹きつけることも容易になってきたという。
大手有料動画配信サービスが値上げやコンテンツ削減に動く中、無料で充実したラインナップを提供するTubiが急成長を遂げている。今後も、Tubiのさらなる躍進が期待される。
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