アフターコロナの広島の生活者に注目 ―外出率はコロナ前に戻る
- この記事はこんな方にオススメ!
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- 最新の生活者の日常行動について知りたい方
- 広島県の生活者の最新動向について知りたい方
1.広島在住の研究員自らが、広島生活者の行動を分析
私は2012年に入社し、2017年に広島県にある中国支社へ転勤になりました。カープ大好きで明るい県民性と、山と海に囲まれ世界遺産を擁し、お好み焼きや牡蠣などのグルメにも恵まれた広島県にすっかり魅了され、広島県民生活も8年目となりました。
そんな私ですが、普段、広島県を中心とした中国・四国地方の企業の皆さまとお仕事をさせていただく中で、「最近メディアの見られ方が変わってきている気がするけど、生活時間や嗜好性にも変化はあるのか」といったお問い合わせが増えていると感じています。
そこで、生活者の行動を研究している当社「ひと研究所」の研究員として、当社の生活行動に特化した「MCR/ex」データを用いて広島の生活者の動向を分析しました。コロナ禍を経た"アフターコロナ"における最新の生活行動について、東京と比較しながらその変化を考察します。
2.日中の外出率はコロナ前の水準に戻っているが、夜間は戻っていない
まずは、基本行動の変化として、最新(2024年)の起床在宅率(※)と外出率(平日平均)を、コロナ前(2019年)、コロナ禍(コロナ禍になって1年経過した時期である2021年)と比較して確認していきます。
広島では、コロナ禍において起床在宅率が高くなっていましたが、直近(2024年)では、日中はほぼコロナ前と同程度の水準に戻っています。また、外出率もコロナ前の水準に戻っています。その中でも強いていえば、18時台から22時台の夜間においては、起床在宅率はコロナ前に戻りつつあるものの、外出は若干戻りきっていない状況です(図1)。
※起床在宅率とは、自宅内にいて起きている割合を指します。つまり、家の中で自由に過ごす時間がいつ、どのくらいあるのかということであり、このデータは「MCR/ex」で確認することができます。
では、それと比較として東京(東京50km圏)の生活者の変化はどうでしょうか。日中のほぼ全時間帯において、コロナ前の起床在宅率を上回り、外出率は下回っているという状況です。日中だけでみると、コロナ前とほぼ同水準に戻っている広島とは異なり、東京ではコロナ禍を経て生活行動が変化したことがわかります(図2)。一方、18時台から22時台の夜間にかけては、広島と同様、起床在宅率はコロナ前に戻りつつあるものの、外出は下回っています。
このように、アフターコロナの広島は、コロナ前のライフスタイルを取り戻しつつありますが、東京はコロナ禍以降、特に日中の外出率が低下していることがわかりました。また、夜間でいえば、広島と東京のどちらも外出率が減っており、コロナ禍を経た直近では、夜は自宅で過ごすスタイルが定着してきていると推察されます(図3)。
3.広島ではコロナ前と同じ勤務状況に戻っている一方、東京は在宅勤務が継続傾向
コロナ禍を経たことによるライフスタイルの変化として代表的なもののひとつに、テレワーク(在宅勤務)があります。
前章では、東京の日中の外出率はコロナ禍が明けても継続的に低下していることがわかりました。この要因として、東京ではコロナ禍にテレワークが定着し、アフターコロナの現在も継続している企業が多いのではないかと推察されます。
そこで、自宅内外における仕事の割合について、広島と東京を比較してみました。
まず広島ですが、コロナ禍に在宅勤務(=自宅内での仕事)がやや増えたものの、直近においてもコロナ前と同水準が続いており、コロナ禍を経ても極端に変わった様子はみられません(図4)。
一方の出社や出勤(=自宅外での仕事)の割合も、コロナ前後で大きな差は見受けられませんでした。
たしかに、私の周りの広島県民は、緊急事態宣言で外出自粛をせざるを得ない状況ですら在宅勤務を選択できずに、やむを得ず"お休み"という人も多かったです。在宅勤務をしている人は、本社が東京に所在している企業で働く人が多い印象です。
一方、東京では、コロナ前では、かなり少なかった在宅勤務の割合がコロナ禍では10%を超え、直近になってやや落ち着いたものの、広島に比べて依然、高い水準を保っています(図5)。出社・出勤の割合も、コロナ前の水準には及ばないことから、テレワークの定着と、働き方の変化が感じ取れる結果となっています。
このことから、東京では一定の割合で在宅勤務やテレワークが継続・定着していますが、広島ではもともとテレワークの浸透は限定的であり、この違いが日中の行動変化の傾向に影響を与えているようです。
4.次回、夕方の起床在宅率増加に注目
今回は、当社の生活時間や行動に関する「MCR/ex」のデータを使って、広島の生活者の行動変化を東京の生活者と比較しながら確認しました。広島では、東京に比べテレワークの浸透レベルに違いがあること、日中の外出率はコロナ前の水準まで戻っていることがわかりました。
一方で、両地区に共通して、コロナ前と比べて、夕方以降の起床在宅率がやや高まっていることがデータからは読み取れました。仕事の時間には増減はみられないことから、夜は外出せずに家で過ごす人が増えたなど、夕方から夜間の過ごし方に何らかの変化があったことがうかがえます。
そこで次回、生活者が自宅内でどのようなことに時間を割いているのか、また、それはどのように時系列変化してきているのか、引き続き分析して紹介していきます。
【本記事で紹介したサービス】
・サービス名:ビデオリサーチ「MCR/ex」
・調査時期:2019年、2021年、2024年/各年6月
・対象地区:東京50Km圏、広島地区
・ターゲット:男女12~69才
・調査エリア及び目標標本数:
2019年 東京50km圏:4,800s 広島地区:793s
2021年 東京50km圏:5,339s 広島地区:831s
2024年 東京50km圏:4,936s 広島地区:815s
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