首都圏とローカルエリアでSNSの利用シーンに違い!? ーACR/exで描く"全国7地区版メディアポジショニングマップ"
- この記事はこんな方にオススメ!
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- 生活者がどのようにメディア利用をしているのか関心がある方
- 生活者のメディア利用シーンの特徴や、地区ごとの違いに関心がある方
- テレビなどのマスメディアが持つ強みを知りたい方
生活者研究を行うシンクタンクであるビデオリサーチ「ひと研究所」では2019年から毎年、生活者とメディアの関係性を俯瞰して把握するために"メディアポジショニングマップ"を作成しています。テレビのリアルタイム視聴は"ながら視聴"が多いことや、ネット動画視聴がリビング・居間に浸透してきていることなど、メディアごとの利用シーンを可視化してきました。2023年8月調査(東京50km圏)からはACR/exの15,000項目にも及ぶ調査に組み込むことで、より細かいターゲット像を設定したり、各メディアの利用者像を詳しく分析したりできるようになりました。さらに今回、調査エリアを全国7地区に拡げることで、地区ごとの特徴やその違いを把握できるようになりました。本記事では、その分析結果の一部を紹介します。
1.ACR/ex7地区版メディアポジショニングマップでわかる生活者とメディアの関係
メディアポジショニングマップとは、メディアごとの利用シーンを可視化したマップで、それぞれのメディアが「どのような時に」利用されているのか、その全体像を解き明かすことを目的とした分析です。テレビ、SVOD、AVOD、SNS等、メディアの位置づけを俯瞰したり、生活者におけるメディア利用の最新動向を把握することができます。また、企業と生活者のコミュニケーション時に意識すべきことを考える際にも役立ちます。これまでの分析では、次のようなことが明らかになってきました。
▶ テレビのリアルタイム視聴は"ながら視聴"に特徴がある
▶ コロナ禍を通して、ネット動画メディアがリビングや居間で使われる傾向が強まった
▶ YouTube、TikTok、ライブ配信サービスは様々なシーンで利用される"360度メディア"
2023年には、ACR/exの東京50km圏のデータを基に分析を行いましたが、今回、この調査エリアを全国7地区に拡大しました。その結果が図1です。生活者全体(12-69才)で見て、2023年の東京50km圏データで見られた構造は、今回の"全国7地区版メディアポジショニングマップ"でも同様に確認することができました。俯瞰してみれば、日本人のメディアの使い方の傾向は、全国的に同じ傾向であるということになります。
2.学生は自室で動画視聴! 12-24才の学生版メディアポジショニングマップ
では、学生(今回は12-24才の学生)に注目してメディアポジショニングマップを描いてみると、どのような特徴が見られるでしょうか(図2)。
学生は、生活者全体(12-69才)と比較して、動画プラットフォーム(青色の点)が下方向(テレビデバイスなし方向)に位置しています。縦軸で見たときに、生活者全体はテレビのリアルタイム視聴と、NHKプラス、TVer、Amazon Prime Videoはほぼ同じ縦位置(高さ)にプロットされていますが、学生でみるとこれらは離れた縦位置(高さ)にプロットされています。
"動画を見るときはリビングではなく自室で見ている""親にテレビが使われているので動画はスマートフォンで見ている"といった状況が推察できる結果です。
3.ローカルエリアではSNSはくつろぎ時間? 広島エリア版メディアポジショニングマップ
次に、ローカルエリアに注目していきたいと思います。今回は、ひと研究所の研究員も在籍する中国支社のある"広島エリア"に着目し、その特徴を紹介します(図3)。
広島エリアのマッピングからは、SNSについて次のような特徴が読み取れました。X(旧Twitter)、Facebook、Instagram、LINEなどのSNSは、全国7地区版と比較して"ながら時間"よりも、"くつろぎ時間"方向に位置しています(マッピングの左方向)。つまり、広島エリアの生活者は全国7地区の平均的な人たちよりも、SNSをくつろいで利用すること、に比重を置いていることになります。これは、首都圏に比べて電車等での移動時間が短く、"通勤通学、移動中"よりも"就寝前にベッドや布団に入って"の利用が多いことが要因として考えられます。
そこで、通勤・通学時間についてACR/exのデータを確認・検証しました(図4、図5)。すると、7地区平均と比較して、広島エリアは平均通勤・通学時間が短くなっています。なお、7地区全体で見ると、通勤・通学時間が長いのは東京50km圏と関西となっていました。また、電車利用についても広島エリアは少なく、週に1回以上利用する割合は、7地区の中でも一番少なくなっています。(図6)
これらのデータからも、通勤・通学時間や利用頻度のエリア差がSNS利用傾向のエリア差につながっていると推察することが出来ます。
このように、地域ごとに様々な特徴をメディアポジショニングマップで可視化することができ、さらに、ACR/ex、MCR/exのデータを合わせて集計することで、より深い要因分析をすることも可能になります。
【参考】ひと研究所の研究員も在籍する中国支社のある"広島エリア"についての分析記事はこちら。
「アフタ―コロナの広島の生活者に注目 ―外出率はコロナ前に戻る」
4.全国7地区での時系列把握、より深い分析の実現に向けて
今回、全国7地区版でメディアポジショニングマップを作成しました。ひと研究所ではこれからも全国7地区で継続的にメディアポジショニングマップを描き、今後は地区ごとに時系列でのメディア行動の変化を把握できるように計画しています。また、同じ対象者に調査をしている「ACR/ex」のデータと組み合わせることで、詳細なターゲットのメディア利用の特徴を把握することができるので、より深い分析にも対応していきます。
引き続き、「ACR/ex」による全国7地区版メディアポジショニングマップに、ぜひご期待ください。
【本記事で紹介したサービス】
・サービス名:ビデオリサーチ「ACR/ex」
・調査時期:2024年 4-6月
・対象地区:全国7地区(東京50㎞圏、関西、名古屋、北部九州、札幌、仙台、広島)
・対象者抽出方法:エリア・ランダム・サンプリング(無作為抽出)
・調査手法:訪問による調査対象者説得、電子調査票による調査(回答専用タブレット端末を貸与)
・対象年齢:男女12-69才の個人
※マッピングで分析したデータは各メディア3か月以内利用者
※調査対象メディアと生活シーンは以下の末尾資料参照