【小西 未来のハリウッドのいま、日本のミライ】アカデミー賞ノミネート女優。過去のSNS投稿で受賞の可能性が急降下

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【小西 未来のハリウッドのいま、日本のミライ】アカデミー賞ノミネート女優。過去のSNS投稿で受賞の可能性が急降下

3月2日(現地時間)の第97回アカデミー賞を目前に控え、最有力候補と目されていた「エミリア・ペレス」に、大きな暗雲が立ち込めている。

きっかけは同作の主演を務めるカルラ・ソフィア・ガスコンの過去のSNS投稿で差別的な発言が発覚したことだ。事態を重くみたNetflixは、同作品のアカデミー賞キャンペーンを見直し、主演女優賞のプロモーション活動を全面的に停止する判断を下したのだ。

「エミリア・ペレス」は、メキシコの麻薬組織のボスが性別適合手術を受け、自身の真実の姿である女性として生きる決意をする異色の物語だ。

クライム、ミュージカル、コメディという異なるジャンルを巧みに融合させた意欲作として高い評価を受け、2024年の第77回カンヌ国際映画祭では主要キャストの4人の女優が集団で女優賞を受賞。勢いそのままに、アカデミー賞でも最多となる12部門での13ノミネートを果たした。

とりわけ注目を集めていたのが、タイトルロールを演じるガスコンの存在だ。

アカデミー賞97年の歴史で初めて、トランスジェンダー女優として主演女優賞にノミネートされるという快挙を成し遂げ、同作で助演女優賞にノミネートされているゾーイ・サルダナとともに、有力候補の筆頭に挙げられていた。

だが、アカデミー賞の投票期間中という最も重要な時期にあたる1月31日、ガスコンの2016年から2020年代初頭にかけての過去のSNS投稿が表面化する。そこには複数のマイノリティグループに対する明確な差別的発言が含まれており、映画界に大きな衝撃が走った。

過去のSNSでの発言が必ずしも取り返しのつかない結末に至るわけではない。2018年、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズのジェームズ・ガン監督も、過去の不適切な投稿が発掘され一時解任された。

だが、それが趣味の悪いジョークの域を出ないものだったこと、そして共演者たちからの強力な支援があったことから、最終的に復帰を果たした。現在では、DCスタジオの共同社長という重責を担うまでに至っている。

しかし、ガスコンのケースは様相が異なる。SNSでの不適切な発言への社会的な評価は、その内容や文脈によって大きく分かれる傾向にある。

特に差別的な発言については、エンターテインメント業界において厳しい目が向けられており、アカデミー賞という世界的な映画賞との関係においては、より慎重な判断が求められているのが現状だ。

皮肉なことに、「エミリア・ペレス」はまさに多様性を称揚する作品であり、ガスコン自身もトランスジェンダー女優としてハリウッドに歴史的な足跡を残そうとしていた矢先だった。

そんな彼女の偏見に満ちた投稿の数々は、多様な価値観を重視するアカデミー会員たちの心証を大きく損ねることとなった。この事態を受け、主演女優賞の受賞はほぼ絶望的となり、作品賞を含む他部門の受賞も厳しい状況に追い込まれたとの見方が有力となっている。

もちろん、アカデミー賞の投票期間中にこの情報が暴露されたということは、ライバルによる策略である可能性は否定できない。だが、イスラム教徒や黒人、アジア人などに対する差別コメントを出したのは本人である。

今後、アカデミー賞向けのキャンペーンを行う際は、主要キャストの過去のSNS投稿まで精査しておくことが必須となりそうだ。

<了>

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