広島のデータからみたアフターコロナの自宅内メディア接触 ―動画視聴の増加が顕著

- この記事はこんな方にオススメ!
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- 最新の生活者の日常行動について知りたい方
- 広島県の生活者の最新のメディア利用動向について知りたい方
平日夕方の起床在宅率がコロナ禍前よりも増加している
生活者の行動を研究しているひと研究所の所員であり、中国支社員である筆者が、ビデオリサーチの日本最大級のマーケティングデータ「ACR/ex」と、生活行動に特化したデータをまとめた「MCR/ex」を使って、広島県の人々の生活について、アフターコロナと言われるいま、あらためてデータで振り返ってみたいと思います。
前回は、コロナ禍前(2019年)とコロナ禍(2021年)、最新(2024年)の平日平均の起床在宅・外出率を確認しました。
その結果、最新の平日日中の起床在宅率をみてみると、コロナ禍において高くなっていた起床在宅率はコロナ禍前と同水準に戻っていることがわかりました。
一方で、夕方以降、特に18時~22時ごろにかけて、コロナ禍前と比べて起床在宅率がやや高まっていることがわかりました。
コロナ禍と比べて増加している「夕方~夜」の在宅時間は、どのように過ごしているのでしょうか。今回は広島の平日夕方以降(18時~22時)の自宅内行動に焦点を当て、紹介したいと思います。
平日夕方は「テレビ視聴」が最も多い一方、「動画」利用はコロナ禍前の3倍に
まず、平日18時~22時の4時間に自宅内でどのような行動を取っているのかみてみます。(図1)
最も多く時間を割いているのは、「テレビ視聴」で、平均52分間です。ただし、時系列で比較すると、コロナ禍前比で74.3%となり、減少しています。
一方、インターネット、動画視聴、SNSの利用分数は30分未満と、テレビ視聴と比べて短いものの、コロナ禍前から最新にかけて右肩上がりに増加し続けています。そのなかでも、「動画視聴」はコロナ禍前比320%と最も増加率が大きいことがわかります。また、「動画視聴」に次いで「SNS」もコロナ禍前比266.7%と大きく伸びています。
「ゲーム」、「休養・くつろぎ」の時間量は大きな変化が見受けられませんでした。
続いて、最も伸びの大きかった「動画視聴」利用について、年代別で詳しく確認します。
インターネット動画視聴は35才以上の中高年層で約3倍に増加
平日18時~22時に自宅内でどのくらい動画視聴をしているのか、年代別で確認します。
よく動画視聴をしているのは、12~19才と20~34才の若年層で(図2)、コロナ禍前には動画視聴分数が10分だったところから、コロナ禍で約2倍の21分になり、アフターコロナにおいても22分と、その視聴量が維持されています。
35~49才、50~69才では、それぞれ3分から12分、2分から6分と、コロナ禍で3倍以上に伸びています。さらに、コロナ禍からアフターコロナにかけてもそれぞれ12分から15分、6分から11分と、動画視聴量が伸び続けていることがわかります。
テレビコンテンツはライフスタイルや好みに合わせてインターネット配信でも視聴されている
平日18時から22時にかけての行動面では、コロナ禍前と比べて動画視聴量が伸びていることがわかりました。
今度は、意識面ではどのような変化があるのか、年代別で確認してみます。(図3)
「見たい番組がなくてもTVをつける」「何となくTVのスイッチを入れてしまう」が、コロナ禍前と比べてアフターコロナでは、それぞれ個人全体で約9ポイント減少しています。35~49才、50~69才ではテレビ視聴の意識スコアに大きな変動がない一方で、34才以下では大きく減少しており、テレビは、かつてのような"習慣として見る"という態度から徐々に変化してきている様子がうかがえます。
関連して、「見逃した番組をインターネットで視聴」が個人全体で15ポイント増加し、「TV番組を録画してよく見る」がやや減少していることから、テレビコンテンツ自体への興味が無くなってきているわけではなく、見逃し配信を録画の代わりとしても活用しながら楽しむ人が増えているようです。
TVerの利用経験率も、コロナ禍の2021年には年代によって差があったものの、アフターコロナでは年代差がなくなり、全世代で半数近くに利用が浸透していることがわかります。(図4)
(※2019年はTVer利用経験率が調査項目にありません)
このことを踏まえると、テレビ視聴がよりコンテンツを意識した行動になってきていると考えられます。
さいごに ~動画視聴の増加と、その背景にある起床在宅率の増加について~
起床在宅率が増加している中、ネット動画の視聴が増えていること、テレビの視聴習慣が変化してきていることがわかる結果でした。一方で、そもそも夕方の起床在宅率が増加している点も気になる結果です。その理由はどのようなことが考えられるでしょうか。
今回確認したメディア接触データからは直接は把握できないため、あくまでも仮説となりますが、筆者は次のように考えています。
働き方改革により、ワークライフバランスを重視する考え方が一般的に普及し、さらにコロナ禍でのライフスタイルの変化が強制的に発生。それを後押しとして、"残業するよりも早く帰宅したい人"が実際に早く帰宅できるようになったのではないかと思います。この点は、今後も継続的に仮説を検証していく必要があります。
また今回、広島地区に絞ってデータを紹介していますが、関東地区(東京50km圏)でもデータを確認すると、広島と同じ傾向がみられ、広島に限った動向ではないことがわかりました。
全国的にも、夕方の起床在宅率や動画視聴を含むネット利用の増加といった、コロナ禍でのライフスタイル・価値観の変化は、現在も継続しており、今後もその動向に注目していきたいと思います。
【本記事で紹介したサービス】
・サービス名:ビデオリサーチ「ACR/ex (MCR/ex)」
・調査時期:2019年、2021年、2024年/各年4~6月
・対象地区:広島地区
・ターゲット:男女12~69才
・サンプル数:
(人) | 個人全体 12~69才 |
12~19才 | 20~34才 | 35~49才 | 50~69才 |
2019年 | 793 | 87 | 185 | 249 | 272 |
2021年 | 831 | 93 | 198 | 247 | 293 |
2024年 | 815 | 90 | 162 | 259 | 304 |