テレビ番組とは異なる"動画配信サービス"の視聴ジャーニーを探る-動画視聴ジャーニー調査より- 〜映像視聴の生活者研究シリーズ〜

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テレビ番組とは異なる"動画配信サービス"の視聴ジャーニーを探る-動画視聴ジャーニー調査より- 〜映像視聴の生活者研究シリーズ〜
この記事はこんな方にオススメ!
  • 映像コンテンツ視聴促進のための施策を検討している方
  • 視聴者がどのように映像コンテンツを選び、楽しんでいるか興味がある方

要旨
有料定額制動画配信サービス(SVOD動画)の視聴ジャーニーは、視聴後の「SNSやYouTube・TikTokなどのアカウントをフォロー・チャンネル登録した」のスコアがテレビ番組よりも高い。一方、「家族や友人・知人などとの会話の中で話題にしたり盛り上がった」「突っ込みを入れた・反応した」「声を出して笑ったり、涙を流したりした」などがテレビ番組よりも控えめ。

有料定額制動画配信サービス(SVOD動画)の視聴ジャーニーを探る

ひと研究所では、テレビ番組などの映像コンテンツの「視聴前」「視聴中」「視聴後」で起きる行動やリアクションである<視聴ジャーニー>が、コンテンツの"視聴体験満足度"を高めるという視点で、生活者研究を進めています(図1)。これまでの研究は、主にテレビ番組をテレビ放送で視聴する場合を中心に調査・分析を行ってきましたが、今回は、有料定額制の動画配信サービス(SVOD動画)に焦点を当てて調査・分析を行いました。その結果をご紹介します。

図1<視聴ジャーニー>の考え方

<視聴ジャーニー>について詳しくはこちら

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「視聴ジャーニー」とは、テレビ番組や動画配信サービスなど映像コンテンツの視聴中、視聴前後で起こる行動やリアクションのことを指します。視聴者は映像視聴の前後でどのような行動をとっているのか、満足度が高まる視聴体験について、お伝えします。

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印象に残るSVOD動画ジャンルは何か

ひと研究所では、2025年1月に、有料定額制の動画配信サービス(以下「SVOD動画」と記載)に焦点を当てた「動画視聴ジャーニー調査」を実施しました。"2024年に視聴したSVOD動画の番組・コンテンツ"を対象に、次の7つのジャンルの中で印象に残った番組・コンテンツを回答してもらい、それについて視聴ジャーニーの実態を調査しています。

【動画視聴ジャーニー調査で調査対象の番組・コンテンツジャンル】
● ドラマ・映画(実写)
● アニメ・アニメ映画
● バラエティ(トーク、お笑い、クイズなどの娯楽)
● スポーツ(試合中継)
● ドキュメンタリー
● 恋愛リアリティーショー
● オーディション番組

1年以内にSVOD動画を利用したことがある人の中で、印象に残った動画ジャンルの回答率(複数回答)をみると、「ドラマ・映画(実写)」が56%で最も高く、「アニメ・アニメ映画」が39%、「バラエティ」が21%で続く結果となりました(図2)。

図2 印象に残ったSVOD動画ジャンル 回答率(複数回答)

SVOD動画の視聴ジャーニーの実態

今後、<動画視聴ジャーニー>について研究発信を予定していますが、その初回として今回は、視聴ジャーニーに該当する行動やリアクションの出現率である"視聴ジャーニー出現率"に注目します。この7つのジャンルの視聴ジャーニー出現率の平均値(ジャンル回答率でウェイトバック集計の結果)と、2024年1月の「テレビ番組」の視聴ジャーニー出現率(「第2回 視聴ジャーニー」調査)を比較し、SVOD動画の視聴ジャーニーの特徴を探ってみたいと思います(図3, 図4, 図5)。

図3 視聴前<視聴ジャーニー>個別行動・リアクション出現率比較(SVOD動画・テレビ番組比較)

図4 視聴中<視聴ジャーニー>個別行動・リアクション出現率比較(SVOD動画・テレビ番組比較)

図5 視聴後<視聴ジャーニー>個別行動・リアクション出現率比較(SVOD動画・テレビ番組比較)

視聴前、視聴中、視聴後の<視聴ジャーニー>いずれをみても、大きくは似た傾向ですが、SVOD動画の方がテレビ番組を下回っている項目が目立ちます。テレビ番組の方が高い結果のものとして、
● 「番組・コンテンツのテーマ・出演者について調べた・検索した」
● 「家族や友人・知人などとの会話の中で話題にしたり盛り上がった」
● 「突っ込みを入れた・反応した」「声を出して笑ったり、涙を流したりした」(視聴中)
● 「関連する情報や宣伝・広告を意識するようになった」
● 「視聴予約・マイリスト登録」(テレビ番組の場合は録画予約も含む)
が挙げられます。

SVOD動画は自分の好きな時間に好きな番組・コンテンツを視聴できることが特性ですが、逆にテレビ番組は放送に伴うリアルタイム性や、幅広い視聴者がいることによる話題性などが特性と言えます。この特性の違いが、視聴ジャーニーの違いを生んでいることが推察されます。また、「突っ込みを入れた・反応した」「声を出して笑ったり、涙を流したりした」のような視聴中のリアクションが異なる点は、視聴している番組・コンテンツの傾向の違いなどが要因として考えられます。この点は継続的な研究が必要なものとして、注目できる点と言えます。

一方で、SVOD動画では視聴中、視聴後の「SNSやYouTube・TikTokなどのアカウントをフォロー・チャンネル登録した」のスコアがテレビ番組よりも高くなっています。SVOD動画においては、視聴者が関連する情報や話題を見聞きする方法としてSNSや動画サービスが活用されやすいことがうかがわれます。また、感想や考察に関する行動をみると、SVOD動画とテレビ番組ではあまり大きな差はみられず、似た視聴ジャーニーとなっていることが分かる結果です。

ひと研究所は、動画視聴ジャーニーの分析を継続的に行う予定です

このように、<視聴ジャーニー>という視点では、SVOD動画はテレビ番組と比較して、異なる傾向があることがみえてきました。今回はジャンルを問わずデータを確認しましたが、テレビ番組と同様にSVOD動画でも視聴する番組・コンテンツジャンルによる違いがあるとみられます。今後も継続的に検証を進める予定です。

ひと研究所では、引き続き、テレビ番組に加えて動画コンテンツに関する<視聴ジャーニー>の研究を発信していく予定です。ご期待ください。

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【調査データ概要】
ひと研究所 「動画視聴ジャーニー調査」
調査方法:インターネット調査
調査対象:日本全国の15~69歳(中学生は除く) かつ 2024年に視聴した有料定額制の動画配信サービスの番組・コンテンツの中で印象に残るものがある。
サンプル数: 2851サンプル
調査期間: 2025年1月24日(金)~1月28(火)

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調査方法:インターネット調査
調査対象:日本全国の15~69歳(中学生は除く) かつ 2023年に放送されたテレビ番組で印象に残る番組がある。
サンプル数:1611サンプル(延べ回答2424番組)
(住民基本台帳の構成比、スクリーニング調査の出現率に応じてウェイトバック集計を実施)
調査期間:2024年1月5日(金)~1月9日(火)

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