リスナー特性から読み解く「ポッドキャスト」の魅力―好奇心に応える自由な聴取体験
- この記事はこんな方にオススメ!
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- どんな生活者がポッドキャストを利用しているのか関心がある方
- ポッドキャストが持つ強みを知りたい方
インターネットを通じて聴取できる「ポッドキャスト」は、時間や場所にとらわれずに楽しめる音声サービスとして注目されています。この記事では、radikoとポッドキャストのリスナーを性年代、仕事、くらし、購買意識の観点で比較することにより、ポッドキャストのリスナーの特徴やサービスの魅力を分析します。
1. ポッドキャストとは?radikoと何が違うのか
近年、音声メディアの中で「ポッドキャスト」が注目されてきています。このポッドキャストと「radiko」とは、何が異なるのでしょうか。
そもそも、radikoはインターネットを通じてラジオ放送局由来の番組を聴くことができる配信プラットフォームサービスです。ラジオの生放送と同じタイミングで番組を聴取できるライブ機能や、過去の放送番組を聴取できるタイムフリー機能などを提供しており、ラジオ放送をインターネット上でも楽しめるサービスとして、多くのラジオ好きに支持されています。
一方でポッドキャストは、インターネットを通じて放送局や個人、一般企業など幅広い配信元が制作したコンテンツを聴くことができるサービス全般を指す言葉です。あるいは、様ざまな音声コンテンツを聴くことが出来る"機能"と言い換えても良いと思います。したがって、特定のプラットフォームやサービスのことを指しておらず、音楽ストリーミングサービスや専用アプリ、ウェブサイトなど聴取の方法も多岐にわたり、配信元や番組のテーマの幅が広いため、多種多様なコンテンツが配信されていることが特徴です。
つまりは、生活者からみると、radikoはラジオ放送局由来の番組の聴取に特化しているのに対し、ポッドキャストは多様な配信元のコンテンツを聴取できる点が大きく違います。
また、2024年にはradikoにも"ポッドキャスト機能"が追加され、全国のラジオ放送局のポッドキャストコンテンツが聴取できるようになりました。多種多様なサービスや機能としての"ポッドキャスト"は音声メディアの世界の中で盛り上がってきていると言えます。
当社の生活者データベース「ACR/ex」における1ヶ月内の利用割合はradikoが個人全体の15.2%であるのに対し、ポッドキャストは2.8%とリスナーのボリュームはまだ少ないですが、ボリュームが少ない分、母数の多いradikoリスナーと比較するとその特徴がはっきり表れるのではないかと考えられます。
そこで、本記事はポッドキャストがどのような人に、どのような魅力で聴かれているのか特徴をとらえるため、ポッドキャストリスナーとradikoリスナーを比較して分析を行います。
2.ポッドキャストはより若い世代に利用されている
引き続き、「ACR/ex」を用いて、ポッドキャストリスナーの性年代構成をみていきます。(図1)
まず性別に着目すると、男性の比率が高いradikoと比べ、ポッドキャストは男女比が半々に近い構成となっています。
年代に着目すると、radikoリスナーよりも男女20代・女性30代の割合が高く、より若い世代に利用されているサービスであることが読み取れます。
【分析定義】
radikoリスナー:1カ月以内に利用したサービスにて「radiko」を回答した人(n=1,752)
ポッドキャストリスナー:1カ月以内に利用したサービスにて「Apple Podcast」「Googleポッドキャスト」「その他のポッドキャストサービス」のいずれかを回答した人(n=318)
リスナーの属性を深掘りするため、職業構成(図2)と世帯構成(図3)をみていくと、
radikoリスナーと比較して給料事務・研究職の割合が高い一方で、給料労務・作業職や主婦・主夫の割合が低くなっています。また世帯構成をみると、単身住まいが多いことから、個人で自由に使える時間がある人が多いことが推察できます。
3.ポッドキャストリスナーは成長志向で好奇心旺盛
ポッドキャストリスナーの属性を見てきましたが、ここからは意識面の特徴に注目します。「ACR/ex」の1万5000問を超える調査項目の中から、radikoリスナーと比較して特徴的な項目をピックアップし、ポッドキャストリスナーをより深掘りしていきます。
まず、仕事に関する意識の中で特徴的な項目として、ポッドキャストリスナーのスコアが高いものを(図4)に示しました。「スキルアップのために勉強したい」(64.5%)や「成果主義・能力主義でキャリアアップ」(43.4%)など、高い向上心を持って仕事や勉強に励む人が多いことがわかります。
図1~3で示したように、ポッドキャストリスナーは若年層や給料事務・研究職の構成比が比較的高く、年齢や職業の違いが仕事にかかわる意識の違いにつながっていると考えられます。
次にくらしや趣味に対する意識(図5)では、「新しいことをやってみるのが好き」や「興味関心事の薀蓄(うんちく)を持っている」といった項目がradikoリスナーと比べて高く、好奇心旺盛な特性が読み取れます。
それでは具体的にどのようなことに関心があるのでしょうか。
最近1年間に行った趣味・レジャー(図6)について特徴的な項目をみていくと、「読書」(49.1%)や、「美術館・博物鑑賞」(32.4%)など、文化的な趣味があがっています。
ポッドキャストリスナーは新しいもの好きで知的好奇心旺盛であり、特に言語学習や読書、芸術など、文化的な活動への関心が高いことがわかります。
最後に購買に関する意識(図7)をみていくと、「ネット上の口コミを参考にして購入する」(74.2%)や「事前にインターネット・カタログ・パンフレットで調べてから買いに行くことが多い」(69.2%)など、購入前にはリサーチを欠かさないことが特徴的に読み取れます。
加えて、「自分なりの考えでものを選ぶ」(78.3%)という項目が高いことも特徴です。
ポッドキャストリスナーは購買にあたって、積極的に情報収集を行ったうえで、自分の価値基準に基づいて合理的な選択することを重視する傾向があると考えられます。
4.ポッドキャストの魅力は時間・場所を問わず自由に選べること
ここまでポッドキャストリスナーについて様ざまな角度で分析し、次のような特性があることがわかりました。
・仕事や勉強への向上心が高い
・好奇心旺盛で新しいもの好き
・何かを決断する前にはリサーチを欠かさない
なぜこのような特性を持つ人たちに、ポッドキャストは支持されているのでしょうか。
最後にポッドキャストのサービスとしての特徴と強みを整理します。
ポッドキャストの特徴① 時間・地域の限定性にとらわれない
ポッドキャストは、インターネットさえあればいつでもどこでも聴ける便利さが特徴です。ポッドキャストアプリだけでなく、ウェブページ上や音楽配信プラットフォームなど、様ざまな聴取経路があります。リスナーは自分の好きなタイミングで、自由に興味のあるコンテンツを楽しむことができます。
また過去に配信されたエピソードも、基本的にはリスナーの興味次第で何度でも繰り返し聴くことができるため、効率的に情報を収集したい多趣味な人にとって便利であるといえます。
ポッドキャストの特徴② 多様なコンテンツからリスナー自ら探し出す
ポッドキャストは放送局だけでなく、一般企業、個人と誰でも簡単に配信者となれるため、聴取できるコンテンツの種類が多岐にわたります。趣味や専門分野に特化した番組も豊富にあり、リスナーは自分の興味に合ったものを自由に選ぶことができ、「このコンテンツを聴きたいから聞く」という能動的な姿勢を持っています。知的好奇心が旺盛で、自分らしい価値判断を重視する人たちにとって魅力的なサービスであることがわかります。
このように、ポッドキャストは、時間や場所にとらわれずに聴取できる利便性や、多種多様なジャンルから、その時の興味関心に合ったものを選べるコンテンツの豊富さが、好奇心旺盛で情報収取を積極的に行う人たちから支持されていることがうかがえます。
各放送局では近年、放送コンテンツのアーカイブやスピンオフ、ポッドキャスト限定のコンテンツを制作し、ポッドキャストの配信コンテンツを拡充しています。2024年にはradikoにおいて「ポッドキャスト」機能が追加され、全国の放送局のポッドキャストコンテンツが提供されるようになりました。
このように、リスナーがポッドキャストでラジオ放送番組やスピンオフコンテンツを繰り返し聞けるようになることで、番組に対する熱量がより高まると考えられます。加えて、編成の制約を超えて幅広いコンテンツの提供が可能になることで、より多様なリスナー層にリーチできる可能性が高まるといえます。
ポッドキャストは日々様ざまな情報をインプットする現代の生活者にとって魅力的なサービスです。ラジオ放送番組との相乗効果も期待でき、今後の音声コンテンツの盛り上がりに寄与するサービスであると考えられます。ポッドキャストを通じて多くの生活者が自分のライフスタイルや価値観に合った音声コンテンツを楽しめるようになることが期待されます。
【分析定義】
radikoリスナー:1カ月以内に利用したサービスにて「radiko」を回答した人(n=1,752)
ポッドキャストリスナー:1カ月以内に利用したサービスにて「Apple Podcast」「Googleポッドキャスト」「その他のポッドキャストサービス」のいずれかを回答した人(n=318)
【本記事で紹介したサービス】
・サービス名:ビデオリサーチ「ACR/ex」
・調査時期: 2024年4-6月
・対象地区:全国7地区 (N=11,147)
・ターゲット:男女12‐69才