パリ2024オリンピック競技大会開会式の<視聴ジャーニー>をXデータから探る!~Buzz分析を活用した視聴者行動研究~

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パリ2024オリンピック競技大会開会式の<視聴ジャーニー>をXデータから探る!~Buzz分析を活用した視聴者行動研究~
この記事はこんな方にオススメ!
  • テレビ番組などの映像コンテンツを、視聴者がどのように楽しんでいるか興味関心がある方
  • テレビ番組とSNSとの関連に興味がある方
  • 視聴者とのコミュニケーション戦略に携わる方

<視聴ジャーニー>とは

<視聴ジャーニー>とは、テレビ番組などの映像コンテンツの「視聴前」「視聴中」「視聴後」で起きる視聴にまつわる行動やリアクションなどを指します。例えば、映像コンテンツの視聴前には、誰かとコンテンツについて会話したり、出演者や内容について情報収集したりすることがあるかと思います。視聴中には、ドラマで感動して泣いたり、コントを見て笑ったりすることが挙げられます。視聴後には、感想をSNS発信することも広く行われています。ひと研究所の研究では、これらの行動やリアクションが起きることで、コンテンツの「視聴体験の満足度」が高まり、それが「継続視聴意向」の高まりにも繋がっていることが分かってきています(図1)。

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【ひと研究所】「視聴ジャーニー」検証調査分析結果レポート

本記事は<視聴ジャーニー>研究の一環として、 前回に引き続き当社の「Buzzビューーン!*1」を活用して、X(旧Twitter)のポスト(旧ツイート)から<視聴ジャーニー>をとらえる試みを実施しました。今回はパリ2024オリンピック競技大会開会式をテーマに、そこからみえる視聴者の行動やリアクションを分析しました。

この試みのポイントは下記の2点です。

  • <視聴ジャーニー>の考え方に基づき、開会式の「視聴前」「視聴中」「視聴後」に分けて生活者の行動やリアクションをとらえる
  • SNS(X)のデータを分析することで、生活者のパリ2024オリンピック競技大会開会式の楽しみ方を立体的にとらえる

*1 Buzzビューーン!とは
X(旧Twitter)でのBuzz【バズ】から、テレビ番組をはじめとするコンテンツの価値を視聴"質"の観点から示せるサービスです。

本記事で紹介しているサービス【Buzzビューーン!】

ポスト分析から見るパリ2024オリンピック競技大会開会式の<視聴ジャーニー>

パリ2024オリンピック競技大会開会式(以下「開会式」)は、時差の関係で日本時間の深夜から未明にかけて生中継があり、翌日には再放送やダイジェストが放送、ならびに配信されていました。開会式での視聴者の行動を分析する中で、深夜に中継された開会式を【リアルタイムで見た視聴者】と、翌日以降、【再放送やダイジェストを視聴した人および見逃し配信を視聴した人(後追い視聴)】の、主に二つの<視聴ジャーニー>で違いがみられたため、それを事例に分析しました。

①開会式をリアルタイムで視聴した事例

開会式をリアルタイムで視聴の場合の<視聴ジャーニー>では、視聴前に事前の開会式特集やニュースなどで情報を得て期待感を醸成し、開会式当日には深夜の放送に備えさまざまな準備行動をしている様子がみられました。ポスト内容をみると、最後までリアルタイムで視聴した人もいれば途中就寝などで離脱してしまった人もいたようですが、離脱した人は録画しておいた中継を見たり、翌日の再放送を視聴するなどの行動をとっていることがわかりました(図2)。

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■開会式(リアルタイム視聴)「視聴前」

開会式数日前~当日までに、過去のオリンピックについての名場面特集や開会式の舞台裏ドキュメンタリーが放送され、開会式の事前特集を見て本番が見たくなったといったポストや、ニュースなどで情報を得て開会式を録画したというポスト、お祭り気分になったといったポストがみられました。また開会式に出る著名人を知って開会式を見たい気持ちが増した視聴者もいるようでした。これらの投稿から、視聴者の開会式に対する期待感が醸成されている様子がうかがえます。また、中継が深夜開始ということもあり、視聴者がリアルタイムで視聴するためのさまざまな準備行動をポストしていました。
実際のポストからも、

・事前にプロジェクターを用意したり録画容量を確保した
・リアルタイムで視聴するために、仮眠をとったり翌日の仕事を休みにした

などがみられました。他にも、開会式の前にお酒やおつまみを買って備えるといった声もあり、開会式に対して前のめりに準備行動を行っている様子がうかがえます。さらに、自身が注目している競技を引き合いに出し、楽しみにしている気持ちを投稿している様子もみられ、開会式ならびに競技の開催に向けて、視聴者の高揚した雰囲気が感じられました。

■開会式(リアルタイム視聴)「視聴中」

開会式のリアルタイム中継時間でのポストをみると、パリならではの演出に興奮する様子や、時間を忘れるほど見入っているような投稿も見られました。
実際のポストからも、

・少しだけと思って見たが見入ってしまい止められない
・映画やミュージカルを観ているようで時間があっという間に過ぎてしまう
・芸術の国ならではの演出が多く、好きなものが盛りだくさんで見続けてしまう

などがみられ、パリの街中を舞台とした演出に熱中している様子がわかります。さらに、開会式中にミュージカルテイストの演出もあったことで、ミュージカルファンからの反応も出ていました。
実際のポストからも、

・ミュージカル好きにはたまらない、楽しめる
・宝塚が好きな人には刺さる演出だ、絶対楽しめる

などがみられ、熱心な演劇ファンにも強く共感されている様子が伝わります。また、中には手話通訳付きでのリアルタイム視聴をする行動もみられ、手話通訳の人を目当てで視聴するというポストや、表情の豊かさに注目して楽しんだり、手話通訳者が交代するタイミングで「お疲れ様です」といった労いをするポストもみられました。さらに、手話通訳者と一緒に開会式を見ている気分になるというポストもあり、様々な観点で楽しみ方を見出しているようです。また、パリでの開会式を見ながら、東京2020オリンピック競技大会開会式を話題に出すようなポストもみられました。

■開会式(リアルタイム視聴)「視聴後」

開会式の視聴後の反応は、「素晴らしかった」「リアルタイムで視聴できて良かった」といった感想のポストが多く、もう一度観たいくらい演出が良かったといったポストからも、視聴者の満足感と開会式終了後の余韻が継続している様子が見受けられます。また、開会式が終わってから「就寝する」というポストからは、深夜から朝方まで長時間開会式を見続けた様子がうかがえます。さらに、「ミュージカル好きはダイジェストでも良いので是非見てほしい」という声もあり、他者におすすめしたくなっている様子もみられました。また、開会式後の競技を見るという声もあり、実際のポストでは

・仕事が終わったら仮眠をとって夜の男子バスケットボールの試合に備える
・仮眠の後は、夕方から始まる競技の応援に全力を注ぐ

などがあり、早朝まで開会式を視聴した後でも、日本選手が出る種目を応援するという意欲的な視聴者もいました。

②開会式を、翌日の再放送やダイジェストで視聴および見逃し配信で視聴(後追い視聴)した事例

開会式を翌日の再放送やダイジェスト、ニュースなどで見た視聴者の行動は、リアルタイム視聴者の行動と比べて、特に「視聴前」において異なる部分があることがわかりました。その「視聴前」の行動にフォーカスして、<視聴ジャーニー>を確認していきます(図3)。

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■開会式(再放送やダイジェスト視聴)「視聴前」

視聴前のポストの中には、開会式の日程を知らなかったので再放送の開会式を録画するというポストや、冒頭を見忘れてしまったので朝の再放送の開会式を見るといったポスト、「この時間に再放送をしてくれるのはありがたい」という感謝の声もみられました。
他にも、実際の投稿から

・職場で話題を振られた時に答えられるように、また睡眠時間を削らないためにダイジェストだけ見る

のような、開会式のポイントだけ抑えるという視聴者もみられました。また、「Buzzビューーン!」で開会式翌日の「共起ワード」を出現回数が多い順に確認してみると、"演出""マリーアントワネット""メタル"といったキーワードが上位に入っており、開会式の特定の演出が特に話題になっていることがわかります。実際のポストからも、翌日のニュースやSNS(X)のタイムラインなどで話題になっていることを見て内容が気になり、急いで再放送を録画するという声もありました。すなわち、リアルタイム視聴の盛り上がりが、再放送やダイジェスト視聴を促進したことが考えられます。以上のことから再放送やダイジェストで開会式を見た視聴者は、放送の翌日に何かしらの方法で情報を得て内容が気になって再放送を視聴したり、そもそも深夜にリアルタイムでは見られないため再放送を見た、全編は視聴できないのでポイントを抑えて内容を把握するといったパターンがあるようです。また、開会式を見るためにNHKプラスに登録したという声もあり、動画配信プラットフォームを活用している視聴者も多くみられました。

<視聴ジャーニー>×Buzzビューーン!からみえてきた、リアルタイムでの盛り上がりの重要性

今回の分析事例からは、次の2点が確認できました。

リアルタイム視聴した人の盛り上がりは、再放送やダイジェスト視聴および見逃し配信視聴(後追い視聴)への誘引力がある

「リアルタイム視聴」の盛り上がりが、周囲の話題についていくための視聴行動=リアルでのコミュニケーションに備えた準備行動を促進する

開会式では「リアルタイム視聴」と「後追い視聴」の二つの<視聴ジャーニー>が確認されましたが、リアルタイム視聴は事前の周到な準備と開始までの気持ちの高まり、視聴中や視聴後も感想をポストしたり視聴をおすすめするような姿もみられました。このようなリアルタイム視聴の盛り上がりが少なからず後追い視聴につながった可能性があり、リアルタイムでの話題性が「後追い視聴行動」発生の重要な要因の一つとなっていることがわかります。

②開会式のリアルタイム視聴と後追い視聴で、楽しみ方の違いがみえてきた

・リアルタイム視聴により、感情・興奮を共有するコミュニケーションが発生
・後追い視聴は、トレンド・盛り上がり・見所を知って(予備知識を持って)効率的に接触

リアルタイムでの視聴では、万全な状態で中継を見るための様々な準備行動、事前の特集やニュースを通じた視聴意欲の高まり、開会式を楽しみにする気持ちをシェアする行動、ミュージカルなど他のコンテンツとの共通点の発見、あえて手話通訳を選択する様子など、Xから開会式視聴にまつわる様々な行動やリアクションが確認できました。そして、翌日の再放送の視聴やダイジェストの視聴および見逃し配信の視聴=「後追い視聴」では、特に「視聴前」でリアルタイムでの視聴行動とは異なる要素を発見することができました。再放送やダイジェスト視聴者には、"翌朝のニュースやSNS(X)の盛り上がりを見て内容が気になった"、"話題についていくために必要な情報だけ得たい"、"世間のトレンドをとりあえず把握したい"など、社会的な話題性に追いつこうとする気持ちが強く表れている様子がみられました。このようにリアルタイム視聴と後追い視聴では、視聴動機、ひいては楽しみ方に違いがみえてきました。

このように「Buzzビューーン!」のデータを解析することで、開会式のリアルタイム視聴の盛り上がりが後追い視聴行動を促進するということがわかり、この二つの<視聴ジャーニー>の楽しみ方の"違い"も発見することができました。

ひと研究所では、今後も引き続き<視聴ジャーニー>の研究を進めることで、テレビ番組をはじめとした映像コンテンツに関する宣伝・PR・視聴者とのコミュニケーション活動に携わる皆様への生活者知見を発信してまいります。

【本記事で紹介したサービス】
・サービス名:ビデオリサーチ「Buzzビューーン!

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