番組はどれだけ多くの人に届いたのか?どのくらい長く見られたのか?<拡がりと深さ・視聴分数分布>
番組の視聴量は「視聴率」で確認できることは広く知られています。 しかし、同じ平均視聴率10%の番組でも、その見られ方は番組によって異なります。 視聴率データでは"どのように視聴されているか"を明らかにする分析も可能です。
これらを確認することで、「番組はどれだけ多くの人に届いたのか?」「番組はどのくらい長く見られたのか?」を明らかにし、番組制作や編成の参考となる重要な示唆を得ることができます。
今回は、視聴率データを計測・提供する株式会社ビデオリサーチの日々視聴率の分析に携わる現役社員が『拡がりと深さ』、『視聴分数分布』について解説します。
1.「拡がり」と「深さ」はどんな指標か?どのシーンで使うのか?
番組視聴における『拡がり』と『深さ』は以下を示す割合です。
・拡がり:番組を1分以上視聴した割合
・深さ:平均視聴割合(視聴者の見た分数が放送分数に占める割合)
みなさんがテレビを見る時、最初から最後まで全てを視聴する番組もあれば、途中から見たり、途中でチャンネルを変えたりすることもあると思います。また、多くの人に見られている番組もあれば、一部の人の間で人気となっている番組もあるのではないでしょうか。
このように、番組によって視聴される時間の長さや視聴人数は異なります。
視聴率だけでは分からない番組の特徴を把握するために、「どれだけ多くの人に届いたか?」を『拡がり』、「どれだけ長く見られたか?」を『深さ』に分解して確認します。
例えば、図1はどちらも同じ平均視聴率10%のドラマAと報道番組Bの『拡がりと深さ』を表したグラフです。この二つの番組の平均視聴率は同じですが、ドラマAは深さが高い一方で、報道番組Bは拡がりが大きく、視聴のされ方が全く異なります。
後述で詳しく解説しますが、視聴の深さについては、視聴時間量を分布(視聴分数分布)で確認できます。
なお番組の視聴時間量については、以下に分けられます。
・放送時間の2/3以上を視聴
・放送時間の1/3~2/3を視聴
・放送時間の1/3未満を視聴
・全く視聴しない
上記のように視聴の割合を確認することで、長時間視聴している人が多いのか、短時間視聴の人が多いのかを明らかにできます。
どのシーンで使うのか?
『拡がりと深さ』、『視聴分数分布』は、以下のようなシーンで活用できます。
● 番組の視聴率が変動した要因を探る
⇒過去と比較して番組を見た人が増えたのか?見ている人の視聴分数が増えたのか?
●改編※による番組の見られ方の変化を確認する
⇒新番組は前番組と比較して見ている人は増えたか?視聴分数は増えたのか?
※放送局が番組編成等の変更を行う事
2.データの見方と分析事例
『拡がりと深さ』、『視聴分数分布』は、ビデオリサーチが提供しているテレビ視聴率集計システム【iNEX3】より集計、ご確認いただけます。
『拡がりと深さ』のアウトプットは図2のように、横軸に『拡がり(1分以上視聴割合)』、縦軸に『深さ(平均視聴時間割合)』としたプロット図となります。図の右上に位置すると、視聴者数が多く、視聴時間も長い番組ということになります。
『視聴分数分布』は図3のように、帯グラフで表示されます。
番組ごと、あるいは放送回ごとに、視聴時間量を視覚的に確認できます。また、グラフ横の数表で、「平均視聴率」、「1分以上視聴割合(拡がり)」、「平均視聴分数」、「平均視聴時間割合(深さ)」も一緒に確認できます。
「平均視聴分数」は、文字通り視聴者の視聴分数の平均を表します。「平均視聴時間割合」は、放送分数における平均視聴分数の割合を表します。例えば、放送分数が60分の番組で平均視聴分数が30分の場合は、平均視聴時間割合は50%となります。
分析事例
実際に『拡がりと深さ』、『視聴分数分布』の分析事例をみていきましょう。
図4は、1話から10話(最終話)にかけて視聴率が上昇したドラマCの『拡がりと深さ』を示したグラフとなります。
第1話の拡がりは各話の中では大きい方ですが、深さは全10話の中で最も低くなっています。2話以降は、拡がりはやや低下していますが、しっかり見る視聴者が増えたようで深さが高まっています。
最終話では、どのようなエンディングを迎えるのか気になった視聴者が多くなり、今まで見ていなかった人や途中脱落した人などに視聴されたためか、拡がりが最も高くなっています。
続いて、図5はドラマCの1話から最終話までの『視聴分数分布』を示したグラフとなります。
番組をしっかり長く見た「2/3以上視聴」の割合は、3話以降で増加し、最終話では最も多くなっています。最終話では視聴者が増えただけでなく、より長く見る人が増えたため視聴率が上昇したことが分かります。
このことから、ドラマにおいては、しっかり見てくれる視聴者を得ることが重要となりそうです。
3.まとめ
今回は、『拡がりと深さ』、『視聴分数分布』について、分析事例を交えて紹介しました。
『拡がりと深さ』、『視聴分数分布』のデータから、より多くの人やより長く見られた回とそうでなかった回を比較することで、人気のテーマ・内容や改善ポイントのヒントが得られるかもしれません。
ぜひみなさんも確認してみてはいかがでしょうか。
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【本記事で紹介したサービス】
・サービス名:ビデオリサーチ「視聴率」
・調査時期:常時(発行形態 日報/週報)
・対象地区:全国32地区