テレビ番組のSNSフォロー、動画チャンネル登録の理由を探る 〜映像視聴の生活者研究シリーズ〜

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テレビ番組のSNSフォロー、動画チャンネル登録の理由を探る 〜映像視聴の生活者研究シリーズ〜
この記事はこんな方にオススメ!
  • 映像コンテンツ視聴促進のための施策を検討している方
  • 視聴者がどのように映像コンテンツを選び、楽しんでいるか興味がある方

要旨
バラエティ番組はInstagramやTikTokのフォロー・チャンネル登録といった行動が多い傾向で、出演者の魅力や番組の舞台裏への関心、+αのコンテンツがフォロー・チャンネル登録の理由として目立つ。

番組のSNSフォロー、動画チャンネル登録の目的を検証する

ひと研究所では、テレビ番組などの映像コンテンツの「視聴前」「視聴中」「視聴後」で起きる行動やリアクションである<視聴ジャーニー>が、コンテンツの"視聴体験満足度"を高めるという視点で、生活者研究を進めています(図1)。今回は、最新の調査データから、番組のSNSや動画チャンネルについて、視聴者のフォロー・チャンネル登録といった行動や理由・目的について検証した結果を紹介します。

図1<視聴ジャーニー>の考え方

前回までの記事はこちら
レギュラーコンテンツでみる、番組ジャンルごとの<視聴ジャーニー>の違い〜映像視聴の生活者研究シリーズ〜
<視聴ジャーニー>は番組ジャンルで違う!?〜映像視聴の生活者研究シリーズ〜
"視聴体験満足度"が高まる生活者の<視聴ジャーニー>は何か?〜映像視聴の生活者研究シリーズ〜
"視聴体験満足度"は継続視聴やメディア評価につながる重要指標である〜映像視聴の生活者研究シリーズ〜

<視聴ジャーニー>について詳しくはこちら
映像コンテンツ戦国時代、視聴者の囲い込みには<視聴ジャーニー>活性化が効く〜映像視聴の生活者研究シリーズ〜

視聴ジャーニーの実態(2024年7~9月クール調査分更新 最新データベースより)

まず、2024年4~9月に放送されたテレビ番組を対象に実施した視聴ジャーニーに関する一連の調査の結果を紹介します。研究用に選定した特定10番組について、各番組の視聴者に視聴ジャーニーの実態を質問しています。これまで、2024年4~6月放送分と、7~9月放送分の2回の調査を実施しており、合算した延べ20番組についてのデータを確認します(今後も、各調査結果の累積した最新スコアを紹介していく予定です)。

具体的な視聴ジャーニー(個別行動・リアクション)の出現率では、視聴前、視聴中、視聴後、いずれをみても5割以上の人が何かしらの行動・リアクションをしていることが分かります(図2)。「調べた」「検索した」が最も多く、そのほかに「関連するテレビ番組・シリーズの番組を見た」や、「会話の中で、話題にしたり盛り上がった」「録画予約・視聴予約・TVerのお気に入り登録」といった行動が多く挙がります。視聴中では「声を出して笑ったり、涙を流したりした」も比較的多くみられます。

図2 視聴ジャーニー 個別行動・リアクション出現率(2024年4~6月・7~9月クール 合計)

また、これらの行動・リアクションの出現率は、番組ジャンルによってやや傾向が異なることも、確認できます(図3,図4,図5)。

図3 視聴前<視聴ジャーニー> 個別行動・リアクション出現率比較 (2024年4~6月・7~9月クール調査 合計)

図4 視聴中<視聴ジャーニー> 個別行動・リアクション出現率比較 (2024年4~6月・7~9月クール調査 合計)

図5 視聴後<視聴ジャーニー> 個別行動・リアクション出現率比較 (2024年4~6月・7~9月クール調査 合計)

バラエティ番組は特に「SNSなどのフォロー・チャンネル登録」が多い

ジャンルごとの違いの中で特徴的なことの一つとして、バラエティ番組では、「SNSのフォロー・チャンネル登録」「関連する映像コンテンツを見聞きした」の2つの項目が、「スポーツ」や「ドラマ・アニメ」「特番」よりも高い傾向となっていることが挙げられます(図6)。SNSや動画サービス(YouTubeやTikTok)にはもちろん映像コンテンツが含まれているため、この2項目は関連性が強いことも推察されます。

図6 <視聴ジャーニー>個別行動・リアクション出現率 注目ポイント

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本稿では、スポーツ/アニメ・ドラマ/バラエティでの視聴ジャーニーの傾向差を検証しています。スポーツは「オンラインでの盛り上がり」、ドラマ・アニメは「オフラインでの盛り上がり」、バラエティは「関連コンテンツへの接触」に特徴がありました。

レギュラーコンテンツでみる、番組ジャンルごとの<視聴ジャーニー>の違い〜映像視聴の生活者研究シリーズ〜

2024年7~9月クール調査では、具体的にフォロー・チャンネル登録するメディア(SNSや動画サービス)について調査を行ったため、バラエティ番組の傾向にも注目しながら、「SNSのフォロー・チャンネル登録」について深掘りしていきます。

まず、フォロー・チャンネル登録したメディアについて、各ジャンルのスコアを比較した結果(図7)では、どのジャンルをみても、最も多くのフォロー・チャンネル登録がみられたのはXでした。次いで、InstagramやYouTubeが多くフォロー・チャンネル登録を集めています。そして、バラエティ番組はInstagramとTikTokが他のジャンルと比較して多いのが特徴となっています。

図7 フォロー・チャンネル登録したメディア(2024年7~9月クール調査)

「フォロー・チャンネル登録」する理由は番組の放送の外側にある

では、「フォロー・チャンネル登録」する理由にはどのようなものが挙がるでしょうか。今回、フリーアンサーで得られた回答を、番組ジャンルごとに整理して分析しました(バラエティ番組以外についても整理しています)。

フォロー・チャンネル登録の理由(フリーアンサーの回答をひと研究所で整理)

● バラエティ番組では、出演者の魅力や番組の舞台裏への関心がきっかけ。また、放送以外の+αのコンテンツを楽しもうと意欲的な姿勢。
「出演者の面白い投稿が楽しみ」
「未公開映像やメイキングが見られる」
「視聴者参加型の企画情報や出演者のオフショット目的」

● スポーツ番組では、速報性が重要で、選手情報や裏話などで付加価値も。さらに、気持ちを共有する場としても機能。
「選手の裏話やインタビューが楽しめる」
「選手やチームを応援したい」
「試合の感動を共有したい」

● ドラマ・アニメでは、作品の世界観を立体的に楽しみたいというニーズ。
「キャラクターやストーリーに関連する投稿で余韻を味わう」
「制作の裏側や声優、出演者に関する情報でさらに楽しみたい」
「次回予告や関連グッズ情報をいち早く知りたい」

● 特番では、特別なテーマや出演者など一回限りの放送に対する注目が動機付けに。また、視聴後にも余韻を長く楽しんでいる。
「放送を見逃したくない」
「豪華出演者や限定情報を楽しみたい」
「放送後の反響や関連情報を追いかける目的もある」

バラエティ番組に限らず、視聴者が番組のSNSや動画サービスを単なる情報収集の場としてだけでなく、番組や作品をより深く楽しむための重要な手段として活用していることがうかがえます。それぞれのジャンルで求められるニーズは少しずつ異なりますが、共通して「裏側や付加情報への関心」「感情や体験の共有」「放送外コンテンツの楽しみ」への期待がみられ、ニーズを上手く満たせば番組とのエンゲージメント強化に有効であると考えられます。

今回は、バラエティ番組にみられる「SNSのフォロー・チャンネル登録」という特徴を深掘りしました。バラエティでは、他ジャンルよりもInstagramやTikTokのフォロー・チャンネル登録が多い傾向で、出演者の魅力や番組の舞台裏への関心、+αのコンテンツがフォロー・チャンネル登録の理由として目立っていました。ジャンルの特徴も理解しながら、番組ごとに視聴者ニーズを把握して施策に落とし込んでいくことで、番組を盛り上げていくことにつながりそうです。

ひと研究所では、今後も、個別番組の視聴や行動・リアクションに関するデータの蓄積を続け、引き続き<視聴ジャーニー>に関する研究を発信していきます。

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【調査データ概要】
ひと研究所 視聴ジャーニー クール調査「2024年4~6月」「2024年7~9月」
調査方法:インターネット調査
調査対象:日本全国の15~69歳(中学生は除く) かつ 各調査対象期間に放送されたテレビ番組(特定10番組)について、いずれか視聴経験がある。
調査内容:テレビ番組(特定10番組)のうち、視聴経験のある番組について、番組評価や視聴ジャーニーの実態を質問
サンプル数:「2024年4~6月」 2,907名、「2024年7~9月」 2,762名
調査期間:「2024年4~6月クール」 2024年8月2日(金)~3日(土)、「2024年7~9月クール」 2024年10月25日(金)

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