「Google Chrome80へのバージョンアップで起こること②」今さら聞けない!基本の『キ』
日々急速な進化を遂げるデジタルマーケティング業界。
皆さんも、毎日のように各社から発信されるニュースで最新情報をキャッチアップしたり、実務上デジタルマーケティングに関わることも多いかと思います。
このコーナーでは、皆さんがニュースや業務で触れるデジタルマーケティングに関する多くのサービスで頻繁に目にする・・・けれども、"基本"であるがゆえ、詳しく説明されることが少ない「単語」や「仕組み」について、初心者にもわかりやすく説明していきます。
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「Google Chrome80へのバージョンアップで起こること①」はこちら
「Google Chrome80へのバージョンアップで起こること①」では、Google Chrome80へのバージョンアップにより、3rd party Cookie(以下、「Cookie」と省略表記)は一定の条件を満たさないと企業側がCookieを発行してもブラウザ側からCookieの受け入れを拒否されてしまう仕様に変更になるということを説明しました。
本記事・②では、Cookieを「入館証」にたとえ、バージョンアップによりデジタルマーケティング業界に起きうる影響について説明します。
入館証(Cookie)の変更により起きること
では、入館証(Cookie)の変更により「誰に」「どんな」影響が起きることが考えられるのでしょうか?
ここでのポイントは、入館証の管理会社であるX社が入館証(Cookie)を発行しなおすことです。
これにより、A山さんは入館証に記載された社員番号(CookieID)が変わってしまうルールとなっている、と覚えてください。
社員番号(CookieID)が変わるとどうなる?
では、ここで、A山B子さんの所属企業であるY社の立場に立って考えてみましょう。
Y社はDSPを保有しており、広告配信事業会社として企業からインターネット広告の出稿依頼を受け、ウェブサイトにバナー広告や動画広告を出稿する仕事をしています。
Y社は、自社で働く社員である、A山B子さんの情報は社員番号(CookieID)しか持っておらず、彼女の名前や連絡先電話番号などは保持していません。
なぜかというと、名前や電話番号などは個人情報にあたるからです。一方、社員番号(CookieID)は、それ単体ではただの数字なので管理がしやすいことから、Y社は社員番号のみでA山B子さんを"管理"しています。
※普通の企業では社員の名前は把握していて当然であり、少し不思議に感じられるかもしれませんが、広告配信事業会社は社員番号(CookieID)だけを保持することで成立するビジネスをしている特殊な立ち位置にいるとお考えください。
Y社(広告配信事業会社)の普段の業務は以下のようなものがメインです。
まず、客先企業(Google Chromeブラウザ)がどこかのPCやスマホ上で開かれ、そこに空き枠(広告が掲載できるスペース)が登場します。
客先企業はY社をはじめとする広告配信事業を行う各社へ「ここに空き枠がありますよ〜」とお知らせをするのですが、このとき一緒に"条件"を提示します。
ここでいう"条件"は、たとえば「化粧品に関心のある20代会社員」のような、その企業が欲しい人材にあてはまる条件とお考え下さい。
Y社はこのお知らせを受け、「うちの社員番号123456は、その条件に当てはまるのでどうぞ!」と客先企業に伝えます。客先企業がこれを受け入れればY社は紹介料(広告掲載料)をもらうことができ、収入を得ることができます。
なお、Y社以外にも複数の企業が同時に手を挙げた場合は"オークション"となり、一番金額が安かった広告配信事業会社が客先企業への人材提供権を手に入れます。
ここでポイントとなるのが、広告配信事業会社(Y社)が多くのお金を稼ぐには自社が抱える社員たちの"バリエーションの豊富さ"が重要だということです。
客先企業(Google Chromeブラウザ)から提示される"条件"は、実に様々です。化粧品への関心もあれば「家を買いたいと思っている人」「新宿駅近辺によく行く人」「小さな子供がいる主婦」など、その企業によってまったく異なるので、広告配信事業会社はなるべく多くの条件にこたえられるよう、自社の社員たちに付帯する情報を日々せっせと収集しています(※1)。
※1:前述のとおり、広告配信事業会社(Y社)は基本的には個人情報を持たずに商売を行っています。
なので多くの場合細かいプロフィール情報はウェブサイト上の行動履歴などから"推定"しています。
"推定"の方法を詳しく知りたい方はこちら
ところが、前述のとおりGoogle Chrome80へのバージョンアップにより、入館証(Cookie)を新しく入れ替えて社員番号(CookieID)も差し替える必要が出てきてしまいました。
ということは、社員番号(CookieID)でしか社員を識別できない広告配信事業会社(Y社)は、「社員番号123456」と「社員番号987666」が"同一人物であること"を把握できなくなってしまうのです。
広告配信事業会社(Y社)は、社員のプロフィール情報をたくさん集めないと人材紹介ができないので、(実は社員番号123456と同一人物なのですが、)社員番号998777のプロフィール情報を新しく集め始めることになります。
ですが、そう簡単にプロフィール情報を集めてこれるわけではなく、収集には時間もお金もかかります。このような社員がY社の中にたくさん出てきてしまうと、Y社の売上が落ち込む可能性が出てくることは容易に想像がつきますね。
さらに、この話は世界NO.1シェアを誇る客先企業(Google Chromeブラウザ)で起きる事象のため、広告配信事業会社各社とも人材紹介に大きな影響が出るのではないかと懸念しているのです。
そして、多くの広告配信事業会社は、これによる影響をなるべく避けるため各社知恵を絞って打開策や回避策を検討・実行しているようです。
Apple社提供のSafariブラウザでは...
冒頭にお伝えした、Apple社が提供するSafariブラウザに2017年から付与された機能である「ITP」はこれまで説明したGoogle Chrome80へのバージョンアップよりさらに厳しい措置がとられており、2020年2月現在最新バージョンであるITP2.3では社員番号(CookieID)は客先企業(Safariブラウザ)に人材紹介(広告掲載)するたびに毎回リフレッシュされて新しい番号に変えられます。
世界的にみるとSafariブラウザの利用率はそこまで高くないのですが、日本はiPhoneの利用者が非常に多いためSafariブラウザの利用率も世界に比べて相対的に高く、ITPが実装された2017年のタイミングで多くの広告配信事業会社に影響が生じました。
ITPに関する詳しい記事は別途掲載しておりますので、こちらをご覧ください。
終わりに:なお、今後近いうちに・・・
ここまでの内容で今回のGoogle Chrome80へのバージョンアップがデジタルマーケティング業界においてどれほど大きなインパクトを与える発表だったかがご理解いただけたかと思います。
Googleはこれ以外にも今後2〜3年以内に複数のCookie利用に関する制約を加え、徐々に3rd party Cookieの利用をやめていくという方針を打ち出しており、業界関係者はその動向に日々着目する必要があるといえるでしょう。
第一段階での速報は英語での発表になるためなかなか理解が難しいかもしれませんが、定期的にネットサーフィンを行い気になった情報は関係者と積極的に共有・意見交換することをおすすめいたします。
【2020年2月17日追記】
諸事情により、「Google Chrome80へのバージョンアップ」自体は2020年2月4日より開始となったものの、「SameSite属性とSecure属性がないCookieは受け付けない」という仕様は2月17日週からのマイナーアップデート対応に変わったようです。仕様変更タイミングは最新情報をお調べいただけますようお願いいたします。
「Google Chrome80へのバージョンアップで起こること①」はこちら
◆参考:外部リンク
Google Chromeバージョンアップに関する速報
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