価格高騰が食卓に影響?夕食編-食卓から生野菜が減っている

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生活者データ
#ライフスタイル #消費者心理
価格高騰が食卓に影響?夕食編-食卓から生野菜が減っている

【この記事はこんな方にオススメ!】
✅ 飲料食品メーカーでマーケティング活動に従事されている方
✅ 価格高騰による生活防衛、食卓の変化に関心のある方
✅ 食料品価格高騰にともなう直近の夕食・食卓に関心のある方

今、私たちを取り巻く世界や社会情勢の中、急速な円安と様々な原材料価格の上昇のあおりを受けて、食品、飲料、調味料、日用品などの "値上げラッシュ"が暮らしを直撃しています。そのような状況の中、価格高騰が家庭の食卓にどのような影響をもたらしたのか、その動向について「朝食」「昼食」「夕食」にフォーカスして紹介していきます。

第3回目は「夕食」編です。

第1回「価格高騰が食卓に影響!?#朝食編--パン食離れ、健康食志向へ」はこちらから
第2回「価格高騰が食卓に影響!?#昼食編--米食志向へ、そして簡便志向に」はこちらから

今回、食卓の動向を把握するために、食MAP ®を用いて分析しています。食MAP ®とは、株式会社ライフスケープマーケティングが調査している食卓データベースで、食卓にどのような料理や食材が出現しているのかを把握できるのが特長です。その中に、Table Index値、通称TI値と呼ばれる指標があり、これは1000食卓あたりの出現回数を表しています。例えば、ある食材のTI値が538であれば1000食卓中、538回食卓に上がったことを示しています。これらは家族世帯ならびに単身世帯の2つの世帯種別に、それぞれ1998年と、2008年から継続的に調査を実施しており、食卓動向や変化を捉えることができます。 ビデオリサーチでは、食MAP ®を通じて得た生活者の食卓把握・嗜好の変化の兆しなどを基に、当社のデータや知見とを組み合わせて、各種マーケティング課題に取り組んでいます。

今回は、このTI値を用いて価格高騰による夕食の動向を2022年3−5月データから分析します。

前回の「昼食編」同様に、小麦価格が高騰した2008年当時の夕食時の食卓の様子から確認してみましょう。

1.2008年、夕食時の皿数は減少(6.1皿→5.8皿)

図1は2008年とその前年である2007年の夕食時の皿数となります。皿数はメニューの種類・品数を表すもので、食卓の豊かさを象徴するものと解釈できます。前年の2007年では、皿数平均が6.1皿あったものが、2008年になると5.8皿(▼0.3皿)に減少していました。メニュー構成の内訳をみると顕著なものはないにしても、おかず類が▼0.2皿減少、これが夕食全体の皿数の減少につながっているとみられ、この背景には価格高騰が要因の一つと推察されます。

図1: 2008年夕食時主食・汁物・おかず類の加工度別TI値差分(2007年比較)

2008年夕食時主食・汁物・おかず類の加工度別TI値差分(2007年分)

2.2022年の皿数はほぼ変わらず(5.8皿→5.7皿)

次に2022年の直近までの動向を見ると、夕食の平均皿数は5.7皿で、前年(5.8皿)と大きな変化はみられませんでした(図2)。また、メニュー構成をみても、2008年ほどの変化はありません。

夕食の皿数という点でみると、2022年3-5月時点では価格高騰の影響は2008年ほど受けていないとみられます。

図2: 2022年夕食時における皿数 (2021年と2022年の3-5月期比較)

2022年夕食時における皿数(2021年と2022年の3−5月期比較)

3.生野菜が減って、納豆、冷奴、漬け物が増加

しかし、夕食時のメニューをみていくと価格高騰の影響を受けている様子が食卓データからうかがえます。2022年で増えたメニュー、減ったメニューからその傾向を確認していきます(図3)。

図3: 夕食時に増えたメニュー、減ったメニュー(1千食卓あたり・TI値、2021年3-5月比)

夕食時に増えたメニュー、減ったメニュー(1千食卓あたり・TI値、2021年3-5月比)

増加したメニューをみると、「納豆」(+14.8回)が最も多く、「冷奴」(+7.5回)、「ぬか漬け」(+6.9回)と続いています。そのほか、「たくわん漬け」「もずく・めかぶの酢の物」(ともに+5.0回)「らっきょう」(+4.6回)とご飯食を意識したメニューが増えています。これら大豆食品、漬け物は比較的安価であり経済的なこと、調理の時短に役立つ食材であること、栄養素が高いといった点で家庭をサポートしているとみられます。

次に、減少したメニューをみると、「レタス(▼8.1回)」を筆頭に、「プチトマト」(▼6.2回)、「野菜炒め」(▼5.5回)、「オニオンスライス」(▼3.8回)の野菜類、とりわけ、生野菜類が減少しています。野菜価格の高騰によって、生野菜が夕食時の食卓から姿を消す、もしくは減りつつあることがうかがえます。

このような中、「茹でブロッコリー」(+6.6回)増加が目立ちます。スーパーやコンビニエンスストアで冷凍食品として見かけることが多く「入手しやすい」だけでなく、「使い勝手が良い」「栄養素の高さ」も相まって、生野菜の代替品目として伸長したと考えられます。

今回分析した2022年の3-5月データは野菜価格が高くなり始めたタイミングだったため、食卓における野菜の出現頻度の減少が明確に現れる結果となりました。

4.夕食の動向は?

2022年の夕食動向を概観すると、価格高騰の影響は皿数の変化という面ではみられず、メニュー・食材に表れていることがわかりました。
「納豆」「冷奴」「漬け物(ぬか漬け、たくわん)」など和食・ご飯食と相性のよいものが多く出現するようになった一方、「レタス」「プチトマト」などの生野菜が減少してきています。この背景には、野菜価格の高騰の影響があって、比較的安価で自宅で簡単に準備でき、栄養素が豊富な大豆食品や、野菜が手軽に食べることができる発酵食品が再評価された可能性があります。加えて、その中において「茹でブロッコリー」の伸長が目覚ましく、野菜不足を補う代替品目として食卓に上る回数が多くなったと推察されます。

5.朝食、昼食、夕食を通してみえてきたのは?

今回「価格高騰が食卓に影響?!」をテーマに、朝食、昼食、夕食を切り口に紹介しました。一日の食卓を3食通してみえてきたのは以下の3点となります。

(1)パン食から米飯類食へシフトが起こりつつあります。この背景には、小麦価格の高騰の影響が推察され、特に朝食でその兆しが強くみられています。

(2)さらに、コロナ禍の影響による在宅時間の増加、勤務形態の変化が、調理の時短並びに簡便性の高い食材へのニーズを少なからず喚起したと推察されます。昼食時にその傾向が特に顕著です。

(3)米飯類が食卓に増えたことに伴い、比較的安価で栄養素の高い大豆・発酵食品が増え、野菜類が減少しているようです。この現象の背景には、野菜価格の高騰が大きく影響しているとみられ、生活者の節約志向や簡便志向の様子が見られます。かつ、出来るだけ栄養の高いものを追い求める健康意識も、2020年以降のコロナ禍の影響としてみてとれます。

今回、紹介した以外でも食MAP®では、商品価格の値上げを受けた食品、メニュー・サービスについてのデータを取り揃えています。ご興味をお持ちいただけましたら、お気軽にお問い合わせください。

第1回目 価格高騰が食卓に影響!?#朝食編--パン食離れ、健康食志向へはこちらから
第2回目 価格高騰が食卓に影響!?#昼食編--和食へ回帰、コロナ禍で簡便志向にはこちらから

株式会社ライフスケープマーケティング

生活者の食卓データベース「食MAP ®」を軸として食品業界のマーケティング、商品開発、広告宣伝、販売促進などの活動に向けたデータ提供や様々な視点での分析やコンサルティングサービスを展開。
URL:https://www.lifescape-m.co.jp/

【本記事で紹介したサービス】

・サービス名:株式会社ライフスケープマーケティング「食MAP ®」
・調査時期:2007年-2008年、
2021年/2022年3-5月
・対象地区:関東30km圏
・ターゲット:家族世帯に基づく
・執筆協力者:株式会社ライフスケープマーケティング カスタマーサクセス課 阿部典子氏、鈴木琢磨氏

※食MAP ®データの無断転載禁止。掲載されている著作物に係る著作権・肖像権は株式会社ライフスケープマーケティングが保有します。

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