【電通現役プランナーが語る】ビッグデータが正義ではない?テレビCMの新たな潮流にピタリとはまったプランニング方法で得たもの
【この記事はこんな方にオススメ!】
✅ テレビCMのプランニングに従事されている方
✅ ターゲットをどのように広告出稿に落とし込むべきかお悩みの方
✅ プランニングに限らず、詳細なターゲット分析にご興味をお持ちの方
技術の発達により、「データ」というものはこれまでよりも簡単に手に入るようになりました。
テレビ視聴に関する「データ」も同様であり、大手からスタートアップまで多様な企業がテレビCM出稿のPDCA活動をサポートするデータ・ソリューションを展開しています。
では実際のところ、テレビCMのプランニングを行うプランナーの皆様はどのような課題を抱え、何を基準に「データ」を選び、そして活用しているのでしょうか。
今回は、現役プランナーである株式会社電通 第2統合ソリューション局 エグゼグティブ・ソリューション・ディレクター 北 弘樹氏にインタビューを実施。
テレビCMの広告活動におけるPDCAサイクルにてどんな「データ」を選び、活用しているかを伺いました。
【インタビュワー:ビデオリサーチ 広瀬(インタビュー日:2021年7月14日)】
株式会社電通 第2統合ソリューション局 エグゼグティブ・ソリューション・ ディレクター 北 弘樹氏
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"ビッグデータが正義"ではない。KPIに対応した"データの質"こそが重要
プランナーとして、昨今のデータ活用はどのような段階にあると感じますか。
広告予算を使ってどのような施策を打つか、クライアントへご提案するにあたって用いるロジックは、その分析手法、理論ともに非常に充実してきたと感じてます。同時に、スマホの普及後は人々のメディアハビット(習慣)の変化やデジタルプラットフォーマーの浸透が進み、様ざまな行動データが充実するようになりました。デジタル空間上の膨大なデータを活用したマーケティングは、今、急速に発達しているといえるでしょう。
もっとも、デジタルマーケティングで活用されるデータに問題点が残っていないわけではありません。データの規模が大きいこと、すなわちビッグデータであることが"正義"とされ、母集団における偏りの吟味よりもアベイラビリティへの依存やデータ規模の競争という側面が強くなっており、デジタル・セントリック(デジタルありき)なマーケティングによって、メディア選択の判断そのものが歪められていのではないでしょうか。
規模ばかりを追求しすぎたデジタルデータは、ともすれば玉石混交なデータの集まりとなります。データ取得過程でのモラル問題や、個人情報保護が正しく進められなければ、データの継続性・安定性の問題にも波及していくでしょう。すでに今、実際にそういった問題も起こり始めています。
具体的には、どのような問題が起きているのでしょうか。
現状、一部のデジタルメディアにおいては、PVの定義がいまだ統一されていません。UBを基準としているのか、接触人数を基準としているのかが事業者によってバラバラで、横並びで比較ができないばかりか、業界の信頼性を損なうデータも溢れ返っているのが現状ではないでしょうか。
偏りや定義の曖昧さを抱えたままの「データ基点」は公平なメディア選択の障害となり、マーケターやプランナーの判断を誤らせるもととなります。これを防ぐため、私は「母集団の偏り」に十分注意し、「そのデータが何を表しているものなのか」を念頭におきながら、活用するデータを吟味しています。
どのような施策も、あくまで主役は「お客様」であり、集められる数値やデータは「お客様の個性」という考えです。データを選択するにあたっては、母集団の特性を理解することに加え、クライアントのKPIは何か、それに対してもっとも適切なデータは何かを見極めることが重要なのです。
テレビ広告の"新たな潮流"にピタリとハマった「プランニング方法で得たもの」
今回、「es XMP」の導入を決められた背景と、どのような点を注目されたのかお聞かせください。
「es XMP」はモニター会員など、もともと偏りのある母集団からではなく、一般生活者からリクルートした調査パネルで、通常の機械式測定に近い代表性をもち、テレビ視聴測定を行っているという点に注目しました。前身にあたる「CUBIC」を含め、「es XMP」の持つ"データの質"こそが魅力的だったのです。
これまでも、一部のプラットフォーマーが、「スマホアプリの音声マッチングでテレビ視聴データが取れる」という実験的なデータを出してきたり、テレビメーカーの視聴ログなど、新しい視聴データが続々と現れては、トライを繰り返してきました。しかし、いずれの場合も、ビデオリサーチの機械式個人視聴率とはかけ離れた結果が出てきてしまい、「どうしてこうなったのか」と、納得のいかないことが少なくありませんでした。並行して、一般生活者からリクルートしたパネルデータや弊社独自のパネルデータも試しましたが、いずれも半期に1回の定点調査が基になっていたため、昨今のコロナ禍のような、進行形でダイナミックな変動をカバーしきれない側面がありました。
根本の原因が母集団の「偏り」「質」「測定方法」にあることはわかっていたのですが、分析を重ねても徒労に終わることが多く、プランナー泣かせの状況が続いていました。そうした中、常時測定の視聴ログにパネルデータを掛け合わせた「es XMP」の存在が、ピタリとハマったのです。
「ターゲットとする"お客様"の視聴」を可視化することで、テレビ広告の効果が具体的に
「es XMP」の具体的な活用方法をお聞かせいただけますか。
ひとつ目の活用は、ターゲットプロファイリングです。広告主に対し、"お客様層の視聴率 "を可視化し、テレビ番組提供の価値を明確化しています。「es XMP」によって、性年齢の個人視聴率では見えてこなかった視聴者、すなわち "お客様"の属性が見えるようになったのです。
あるクライアントの案件で言うと、これまで見ていた機械式の個人視聴率では、地上波の提供番組は5~7%、BSの提供番組は*( 測 定 不 能 )~0.4%という水準でした。時系列で眺めてもトレンドがよくわからず、クライアントもテレビの広告効果を測りかねていたのです。そんな中、「es XMP」でクライアント側が定義するターゲットをいくつか設定し、改めて評価したところ、地上波提供番組の平均が14~17%、さらにスペシャルウィーク(番組強化週)では27%と、ターゲットとする"お客様"がしっかりと視聴したことが見えてきました。
これらの知見は、クライアントの了解を得たうえで、放送局の編成や番組制作サイドとも共有し、その後の番組強化や編成方針への示唆、宣伝プロモーション戦略の立案にも役立っているようです。
メディア事業者のマーケティングにも、「es XMP」は大きく貢献しているのですね。
オーディエンスプロファイリングの面でも、「es XMP」は大きな力を発揮しています。"コンテンツのお客様"分析は、メディア事業者のマーケティングにおいても大きなカギとなっています。
私が電通に入社した当時は、ティーン、1層(20?34歳)、2層(35?49歳)、3層(50歳?)といった人口ボリュームがほぼ均等であり、広告主だけでなくメディアにとっても、次世代の顧客育成の観点から若年を狙うのは当然の流れでした。しかしながら、人々の年齢区分というのは、あくまでその人の一面でしかありません。さらに日本人の平均年齢が50歳に迫ろうとしている今、この年齢区分には大きな歪みが生じています。
34歳と35歳にどんな違いがあるのか。 「59歳はギリギリお客様、60歳はお客様扱いしない」という杓子定規な解釈は、もはやナンセンスと言わざるを得ません。いまや、日本国内でティーンや1層のみを狙うということは、いわば"レアキャラ"を追うようなもので、視野を自ら狭めてしまうことになるのではないでしょうか。
大ざっぱに「M2を強化したい」とするよりも、「郊外のマンション住まいでリモートワークを週2日以上する、大企業勤務のホワイトカラーのサラリーマン」という属性であったり、「有料音楽配信の契約率が顕著に高い」といった情報の方が、メディアにとっても、自社コンテンツの成長のためのターゲット像が明確になり、番組企画や編成への豊富なインスピレーションへと繋がっていくのです。
マーケットを正しく把握するための「俯瞰性の高さ」が大きなメリット
「es XMP」について、現場サイドからはどのような反響がありますか。
長年テレビ営業をやってきた社員たちが、「es XMP」を活用して提案を行ったところ、想定以上にクライアントの興味をひき、別の案件でも使い始めるなど、好循環が生まれていると聞きます。
現場サイドでは、「es XMP」のどんな点に魅力を感じていただけているのでしょうか。
オンオフ統合分析でよくある、「率」「人数」「ID数」「UB数」がごちゃ混ぜになるといったことがない点が、マーケットを正しく俯瞰する上では非常に助かっています。異なる母集団のデータの無理矢理な突合やフュージョンではなく、純粋なシングルソースでそれを実現しているという点も評価されているポイントです。
アプリの起動ログについても、Androidのみでなく、iOSまでカバーしている点もすばらしいですね。アプリの起動をKPIとしたターゲットの分析やテレビプランニングでは、この点が大きな威力を発揮しています。
また、テレビ視聴率に長年の実績のあるビデオリサーチが手掛けたサービスなので、番組マスターや視聴判定の定義など、使い勝手の面や分析時の違和感が少ない点も、他のデータベースにはない大きなメリットです。
テレビ視聴ログと接続したDMP計測では、サンプルサイズが十分であったとしても、市場全体を俯瞰することができないケースも多く、外部環境の変化やマスの計測にどうしても限界があったのですが、こうしたケースにおいても、「es XMP」はリファレンスデータとして、非常に力を発揮してくれています。
テレビCM広告のPDCAを、人基点で行えるように
プランニングやクリエイティブの支援にも「es XMP」を活用されていると伺いました。
現在電通では、「データ分析をなるべくクイックにし、考えるための時間を作るためのツール」を開発、運用しています。例えば、月に100~200名の社内プランナーが400~600のプロファイリング分析を行うツールに、「es XMP」データを基に作成した電通独自のセグメントでプロファイルシートを生成するなど、具体的な利用実績があります。
また、「es XMP」と連携した事例として、弊社のラジオテレビ局には、「Effective Spot Planning」という、新しい TV スポットバイイングのシステムを運用しています。ここに「es XMP」のデータを流し込むことで、号数指定の上、セグメントの視聴状況と各局のスポット見積料金を踏まえた、最も効率的な買い付け案を選定してくれるのです。
電通では、向き合いたい"お客様"に"どんな言い回し"で、"どこ"で伝えるか、「Who-What-How」という広告戦略の骨格部分を、お客様基点、人基点でアウトプットし、プランナー、マーケターをサポートするツール体系を整備しています。
「es XMP」は、「テレビCM接触者」をフリクエンシー別に抽出できるので、実際の接触者、非接触者のプロフィールや、競合 CMへの接触者といったポストアナリシスも簡単にできます。「es XMP」によって、テレビ広告のPDCAを、人基点で行えるようになりました。
最後に読者のみなさまへ、メッセージをお願いします。
データはあくまでファクト(判断材料)であり、データそのものではすべてを解決することには繋がらない、というのが私自身の考えとしてあります。
重要なのは、そのデータからどんな示唆を得られるのか、そしてプランナーやクライアントのマーケターをインスパイアし、アイデア開発のアシストができるかという点ではないでしょうか。
私はプランナーとして、データから示唆を得て、クライアントへの提案力を向上させたいと考えています。そのうえで、「es XMP」の存在は、今や欠かせないものになっています。
膨大にあるデータの中から課題解決に有効かつ実践的なデータを見極め、クライアントのKPIに応えてきた北様に、「es XMP」サービスの特長や魅力を"データの質"に触れながら紹介していただきました。
「主役はお客様」「データはお客様の個性」の考えのもと、一貫してクライントファーストを実践されてきたことが印象的でした。
我々も、インタビューを通して、市場を俯瞰できるシングルソースパネル「es XMP」だからこそ実現可能なソリューションとは何か、改めて確認する機会となりました。
これからもユーザーのご期待にお応えできるよう、サービス開発を進めて参ります。
電通 北様、今回は貴重なお話をありがとうございました。
※2021年10月の記事を再編集して公開しております。
※esXMPはサービスを終了しました。
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