Keynote:メディア環境変化に対応したクロスメディア広告効果測定標準化への期待【VR FORUM 2022 レポート】

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Keynote:メディア環境変化に対応したクロスメディア広告効果測定標準化への期待【VR FORUM 2022 レポート】

[登壇者] グーグル合同会社代表 奥山真司氏

2020年以降の社会変化で、生活者のメディアを活用した情報探索行動は大きく変化しました。それに呼応し、広告主のマーケティング活動も大きく変化するなか、公平で信頼性・透明性の高い広告効果測定手法への期待は大きくなっています。今回は、デジタル広告における最大手であるGoogleが捉えるメディア環境の変化、テレビとデジタルの広告効果測定に対する考え方について、グーグル合同会社代表の奥山真司氏にご講演いただきました。

■ブランドの持続的な成長のために。Googleが意識する「メディア環境"3つ"の変化」

「人々のメディアを活用した情報探索行動は大きく変化し、それに呼応するように広告主の皆様のマーケティング活動も大きく変化している」と奥山氏。「広告業界のメディアトレンドにもあるようにインターネット広告への投資が大きくなっている」とし、広告主のブランドを持続的に成長させるために「Googleとして常に意識している」という「メディア環境の3つの変化」を示します。

(1)テレビメディアの視聴変化

「これまでテレビは『リアルタイムで放送されるコンテンツを視聴できるもの』として捉えられていたが、容量の大きい記録媒体がより安価で供給されることで、『オンデマンドで見る』という選択肢が加わった」と奥山氏。そのテレビとデジタルの統合の代表例として、ネット結線されたテレビ「コネクテッドテレビ」の視聴動向を紹介します。

博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所の「メディア定点調査」によると、テレビにおける「動画」の視聴傾向を2020年と2022年で比較すると、「有料動画」(13.4%→22.1%)、「無料動画」(19.0%→27.0%)のいずれも急激に伸長。これを踏まえ奥山氏は「テレビは『インターネットに繋がったスクリーン』として生活者から捉え直されている」と語ります。

さらに「無料動画においてはYouTubeの存在感が高い」と奥山氏。Googleのデータによれば、コネクテッドテレビでYouTubeを視聴するユーザー数は、2021年3月(2,000万人)から2022年5月にかけて(3,500万人)大きく成長しました。

「ゆったりと視聴できるためか、テレビでの平均視聴時間が長い傾向にある」と奥山氏。コネクテッドテレビでのYouTube視聴時間は、モバイル・デスクトップPCの約2倍にのぼるとし、「大きなスクリーンを共有しながら複数人で同じコンテンツを楽しむことも特徴の1つ」とコメント。「生活者からみて『テレビがよい』と感じている点と『YouTubeがよい』と感じている点の双方が合わさる結節点がコネクテッドテレビで、私たち広告に携わる業界にとってここから新たな価値を作り出していくことも可能」と語ります。

(2)デジタルメディアの視聴変化

「これまで放送でしか視聴することができなかったテレビドラマの見逃し視聴やテレビ局発信のニュース番組などを、見たいときにスマートフォンなどのテレビ以外のデバイス上で視聴できるようになっている」と奥山氏。さらに「クリエイターやインフルエンサーが発信する動画コンテンツの裾野が数年前と比較ができないほど広がっている」といいます。

Googleのデータによれば、日本において登録者10万人以上のYouTubeチャンネルは2022年6月時点で7,700以上。100万人超えのものは500以上あり、前年比でそれぞれ30%増加しています。

「様々なメディアがシームレスに繋がることにより、生活者にとって質と量の双方で好みのコンテンツを視聴できる環境が整ってきた」と奥山氏。「生活者は『テレビを見る、スマホを見る』といった"メディア起点"の視聴体験から脱却した」とし、「メディアを跨ぎ、『何を見るか、どのコンテンツを見るか』という"コンテンツ起点"の視聴体験がなされている」と指摘します。

(3)広告効果測定のあり方の変化

「これまでもプランニングそのものは、的確な生活者調査やきめ細かい議論によって変化を推進することができていた」と奥山氏。「その投資に対して適切な形で効果測定を行い、マーケティング活動に対するROIを可視化、最大化する不断の努力は命題」としながら、「プランに対する適切な形の効果測定について、『言うは易く行うは難し』の状況が続いている」と語ります。

「生活者のニーズに沿った多種多様なメディアの驚くべきスピードでの発展や社会経済の先行きの不透明さが、一方では、この広告効果測定の課題を大きくしているとも言える」としたうえで、「だからこそ、信頼性、透明性を担保したうえで、生活者の行動データをベースに"統合したメディア効果測定"を適切に行うことの切実さと機運が業界全体の期待になっている」といいます。

このように、「テレビメディアの変化」「デジタルメディアの変化」「効果測定のあり方の変化」の3つの視点で見たうえで、「変化の流れが速い潮流に対応しながら持続的にブランドを成長させていくためには、これまでのマーケティング投資に対する考え方も見直す機会にある」と述べました。

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■ビデオリサーチ×Googleが取り組む新たな広告測定「Cross Media Reach Report」

「透明性高く正しい手法で投資効果を可視化し、PDCAのサイクルを短くして、生活者の自発的、能動的なアクションを促し、フェアで信頼できる広告効果を検証し続ける」。そうすることで「広告投資の価値が正当に評価されることとなり、業界そのものの発展にも繋がる」と奥山氏。その取り組みの一つの"結実"として、ビデオリサーチがGoogleの協力を受けて提供するサービス「Cross Media Reach Report」を取り上げました。

「Cross Media Reach Report」では、テレビCMとYouTube動画広告を統合してコミュニケーションの到達状況を一覧することが可能。奥山氏は「同じ土俵で計測することが難しく、サイロな評価になりがちであったテレビ、ウェブ、アプリといったメディア同士の効果を生活者の視聴体験に寄り添った形で可視化することは、マーケティングに携わる人々にとっては悲願」と大きな期待を寄せます。

さらに奥山氏は、昨今の生活者のプライバシー保護意識の高まりに言及。「人々はより積極的に有用な情報取得を行うことへの意欲が向上している一方、不利益な情報や無関係な情報に対して無関心、ときには好ましくない反応も見られる」と語ります。

「環境変化に対応するマーケティングソリューションを開発するためには、こうした生活者意識の背景を念頭におくことが肝要」とコメント。「Cross Media Reach Report」について、「生活者の視聴体験の変化、クロスメディアとして同じレイヤーで効果測定を考慮し、プライバシーセントリック(重視)の形で解決できたことはまさにエポックメイキング」と評価しました。

■新たなクロスメディア測定の歴史の始まりと、今後の広告ビジネス発展への期待

最後に奥山氏はプライバシー保護意識に配慮したGoogleの取り組みの一環として、2022年10月に提供を開始した「マイ アド センター」を紹介。このサービスでは、Googleのサイトやアプリでの広告体験をより自由に管理でき、「好みの企業やサービス、気になるトピックの広告をより多く表示したり、興味のないものをユーザー自身で制限したりできる」といいます。

「Googleは広告エコシステムの健全な発展のため、ユーザープライバシーの保護と計測の透明性を高めるクロスメディアの広告効果測定の環境整備をサポートしており、今回ビデオリサーチ様ともそれを実現できたことは日本のマーケティングに新たな流れを作る潮目になるでしょう」と奥山氏。

「テレビメディアの効果測定の歴史を築いてきたように、デジタルと統合された新たなクロスメディアの効果測定の歴史がここから始まる」としたうえで、「信頼性、透明性の高い『Cross Media Reach Report』が業界標準になることで、広告ビジネスが今後より発展することをGoogleも強く期待しています」と締めくくりました。

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