コンテンツカンパニーUUUMに聞く市場トレンド【VR FORUM 2022 レポート】
[登壇者](右から)
UUUM株式会社 執行役員CMO 市川 義典 氏
株式会社ビデオリサーチ 執行役員企画推進ユニットマネージャー 池田 宜秀
生活者やメディア・広告が多様化する中で拡がりをみせる動画市場。なかでもYouTubeをはじめとするUGCはコロナ禍を経てますますその勢いを増し、そこから派生するインフルエンサーマーケティングは、大きく注目されつつあります。今回はUGCの世界で活躍するクリエイターを数多く抱え、彼らとともにビジネスを拡大するコンテンツカンパニー・UUUM株式会社より市川義典CMOをお招きし、UGCとインフルエンサーマーケティングのトレンドについてお話しいただきます。
「個人経済圏」の成長を担うUGC。今後も広がる市場に
UGCとは、ユーザーによって作られたコンテンツのことで、具体的には、個人のSNSの投稿、写真、ブログなど、消費者発信のコンテンツのことをいいます。まず、UGC視聴時間について、シングルソースパネル「esXMP」データで見てみますと、対象アプリ(YouTube・TikTok等)を通じたUGCの1日あたり平均利用分数は、2022年9月時点でTeen(男女15-19才)が171分、F1(女性20-34才)は164分にも達しています。
UUUM所属のクリエイター数(191組)、チャンネル数(14,021チャンネル)(いずれもUUUM(株)2022年10月決算資料より)は順調に伸びてきており、「コロナ禍で生活者のライフスタイルやメディア接触状況が大きく変化するなか、UGCも非常に増えてきている」と市川氏。また、クリエイターの数が増えるとともに、見る側の頻度もとても増えていることを指摘します。「そのときに応じて見たいコンテンツも変われば、その時間帯に流れるコンテンツも違うなか、有益な情報を人々(視聴者)が選択する時代になっている」(市川氏)といいます。
再生が増えているのは、ハウツー、キャンプなど、これまで主に雑誌が担ってきた趣味嗜好のジャンルが中心。特にキャンプ動画の人気はコロナ禍による行動制限のなか「外出できない欲求を満たせる」(市川氏)として、直近2年間で顕著に再生数を伸ばしました。
一般的な個人に加え、放送局で番組制作を手がけるような方など、これまで以上に幅広く、また、比較的年齢が高いクリエイターの参入も直近の2~3年で増えているといいます。
「個人経済圏を拡大していくような国の流れもあり、個人の参入は今後もますます増えていくでしょう。3~4年前も似たような流れはあったものの、やはりこの1~2年でそのスピードがものすごく加速した感じがします」(市川氏)
インフルエンサー〜どの分野にどのようなファン、どういう発信を〜
個人で強い影響力を持ち、大きく注目されるインフルエンサー。なかでもUUUMに所属するトップクリエイター・HIKAKIN氏のチャンネル登録者数は約1960万人(4チャンネル合計)、はじめしゃちょー氏は約1520万人(3チャンネル合計)と、首都圏の人口に匹敵するチャンネル登録者を集めています。さらにビデオリサーチが行った「タレントイメージ調査」では、回答者のおよそ9割がHIKAKIN氏を「知っている」と回答。男性タレントの平均認知率(71.0%)を大きく上回りました。
さらに、UUUM所属クリエイターの1日あたりの動画再生回数(UUUM(株)2022年10月決算資料をもとにビデオリサーチで独自集計)を見ると、ショート動画1日あたり約5000万回、ショートを除く1日あたり約1億回です。「1日に1億回というすごい回数再生されており、改めてクリエイターさんの力のすごさ、影響力のすごさを実感した」と池田。
多くのクリエイターがいるなか、「個人の方々が本当に頑張ってらっしゃるので、その頑張るタイミングが重要なポイント」と市川氏。インフルエンサークリエイターの方々とコミュニケーションをとるタイミングにも留意しているといいます。
また、このコロナ禍の2年間で、企業側からのコミュニケーションの取り方や、消費者に何かを伝えたいといったときに、マス一辺倒ではなくなっているという考え方が浸透してきているなか、「今までマスで活躍していたタレントさんがデジタルの世界でアカウントを作って活動をはじめたり、UUUMのクリエイターがテレビCMやテレビ番組に出させていただいたりと、メディア間の垣根がどんどんなくなっている」と市川氏。「それぞれのインフルエンサーがどの分野にどのようなファンを持っており、どういう発信をして受け入れられているかが大事なデータ」と語り、さらに個人情報保護法やサードパーティーCookieの取得制限によってユーザー行動を追いにくい現状を踏まえ、「かけがえのないデータになっていることから、インフルエンサーマーケティングをご一緒する企業さんがすごく増えてきた」(市川氏)と語ります。
認知が購買に直結 "パルス形消費"を突き動かすインフルエンサーマーケティング
インフルエンサーマーケティングとは、主にSNS上で大きな影響力をもつ「インフルエンサー」に製品やサービスを紹介してもらい、口コミを通して購買など消費者の行動に影響を与えるコミュニケーション型のマーケティング手法のことをいいます。
「どのメディア(プラットフォーム)で何を伝えるかが大切で、マーケティングファネルでできるポイントが急速に変わったコロナ禍の2年」と市川氏。また、認知から購買までの時間軸が一気に短縮され、「認知を得ることが直接的に消費行動を左右しやすくなった」と語ります。
「いままでは徐々に認知から興味関心を経て比較検討してもらい、買っていただいてレビューをしていただき・・・・・・ と段階を踏まなければなりませんでしたが、現在は『何かの情報番組で見たから欲しい、買う』というように、段階を経ない突発的な"パルス形"の消費行動が加速しています」(市川氏)
インフルエンサーマーケティングの大きなメリットとして、池田は「影響力のある人を中心に形成された複数のコミュニティを通じ、購入見込みの高い顧客に向けて企業が直接メッセージを伝えやすい」とコメント。市川氏も、「購入のきっかけとなる高い認知を持つインフルエンサーマーケティングならば、認知から利用購入までのフルファネルでさまざまなサービスプロダクトを提供できる」と語ります。
「いままでも、インフルエンサーが直接商品を取り上げ、自分たちのチャンネルで紹介する取り組みを行ってきましたが、今後はその動画をデジタルサイネージや店頭などで広告として流すことも考えられるでしょう。継続的にクライアントとリレーションを図り、一定期間の取り組み後にコラボレーション商品を一緒に作る流れも増えています。インフルエンサーマーケティングという言葉自体の領域をどんどん広げられる活動ができたらいいなと思います」(市川氏)
コミュニティが多様化する時代、インフルエンサーの「コンテクスト固め」が"売れる理由"を作り出す
「コミュニティの多様化は今後さらに加速し、いろんなジャンルのいろんな方々がインフルエンサーとして活躍する時代になっていく」と市川氏。同時に「今までのコンテンツが見られなくなるわけではなく、"使い分け"が進んでいく」とし、「それもひっくるめて、誰と何をするかという企画やプランニングが重要になってくる」と語ります。
「とくに、企画の概要や文脈を主軸に据えたマーケティングの効果が強まってくるでしょう。企業とコラボレーション商品を作るにしても、その前提にあらかじめ企業との一定期間の関係性があることで売れる理由が生まれる。こうしたコンテクスト作りを今後もっと広げていかなければならないと思います」(市川氏)
これに対し、「インフルエンサーマーケティングに対応できるプランニングデータの提供などに注力していきたい」(池田)とし、さらに「今後、UGCやインフルエンサーマーケティングが広がっていくうえで、多くのクリエイター、インフルエンサーの特性をきちんと把握することがカギになる」(池田)と続けます。「その人たちがどういうことを伝えている人たちなのか、どういう人たちによく知られている人たちなのかというコンテクストを把握し、データとして持つことで、UUUMさんのようなコンテンツカンパニーや広告主のみなさまのお役に立っていきたい」と、ビデオリサーチとしての役割を語ります。
「UUUMの設立当時から『個人がメディアになる時代が来る』と言い続けてきましたが、今はもはやそれが"過去形"になったと感じます」と市川氏。「クリエイター、インフルエンサーの人々が強みとする分野やファンの属性を明確にすることで、この流れを加速することができる」とし、「個人がメディア化する時代においても、従来のメディアとのコラボレーションを通じて、大きなシナジーを生み出したい」と期待を述べました。
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