Z世代の次にくる『α(アルファ)世代』の映像コンテンツ視聴の特徴 ~若年層の視聴者獲得にはα世代とその親がカギ!?~
α(アルファ)世代とは?
α(アルファ)世代は、およそ2010年~2020年代中盤までに生まれる世代を指しており、オーストラリアの世代研究者でコンサルタントのマーク・マクリンドル氏が2005年に提唱しました。α世代のはじまりが2010年なのは、この年に「Instagram」と「iPad」が登場したからだと言われています。つまり、生まれた時からスマートフォンはもちろん、タブレット端末が普及してきており、SNSが日常的に使われている環境で育ったという特徴をもっています。
昨今、マーケティングターゲットとして「Z世代」が注目されていますが、そのZ世代の次にくるといわれている世代が「α世代」です。そんなα世代は今、テレビ番組やネット動画などの映像コンテンツをどのように視聴しているのでしょうか。ビデオリサーチの子どもターゲットのマーケティングデータ「Kids/ex」の最新データからみていきたいと思います。
※本記事では、α世代を「男女3~12才(未就学児、小学生)」、Z世代を「男女12~26才(中学生以上)」と定義し、それぞれ「Kids/ex」と「ACR/ex(MCR/ex)」の最新データを使って分析しました。過去の調査データも便宜上同じ条件で分析しております。
記事の中でご紹介しているサービスはこちら Kids/ex ACR/ex MCR/ex |
【この記事はこんな方にオススメ!】
✅α世代のテレビやインターネット動画視聴状況を把握したい方
✅α世代とZ世代のメディア行動の違いを知りたい方
✅α世代とその親にテレビを見てもらうためのヒントを求めている方
1.α世代とZ世代の映像視聴行動の違いは?
α世代は19時台にネット動画からテレビに視聴行動が切り替わる
まずは、α世代の1日の映像視聴行動の流れを見ていきましょう。
α世代は朝7時~8時台や夕方15時~17時台といった、親が家事・育児で忙しい時間帯でネット動画の行動率が高くなっています。これまでテレビが担ってきた家事・育児のサポート役がネット動画に変わりつつあることが、子どもであるα世代のネット動画の行動率の高さにつながっていると考えられます。
また、朝7時台や夜19時台といった食事をとる時間帯ではテレビ視聴の行動率が高くなります。特に19時台はネット動画からテレビ視聴に行動が切り替わる動きがみられます。テレビのチャンネル権を親が握っているα世代の家庭では、食事の際はネット動画からテレビに切り替えて、テレビを見ながら食事をとっているようです(図1)。
一方、Z世代では夜20時台がテレビ視聴行動率のピークとなっており、その後ネット動画視聴に行動が切り替わる様子がみられました。特にα世代の多くが就寝しているであろう21時以降でネット動画視聴行動率が高くなっています。個人でのスマホ所有率が高くなるZ世代では、リラックスタイムは個々でネット動画を楽しんでいるのでしょう(図1)。
【図1】テレビ・インターネット動画視聴行動率 (1日あたり/週平均)
出典:「Kids/ex」東京50km圏、α世代(男女3~12歳)2022年10月調査 (n=582)
出典:「ACR/ex」東京50km圏、Z世代(男女12~26歳)2022年6月調査 (n=997)
α世代ではネット動画よりもテレビ視聴時間が長め
テレビとネット動画を合わせた映像総視聴時間について、α世代とZ世代で1日あたりの時間量を比較すると、α世代は149分と、Z世代の134分よりも長く映像コンテンツを視聴していることが分かりました。さらにテレビとネット動画の内訳をみると、α世代ではネット動画よりもテレビ視聴時間量の方が多く、またZ世代と比べても長い時間テレビを視聴しているようです(図2)。
【図2】テレビ・インターネット映像視聴時間量 (1日あたり/週平均)
出典:「Kids/ex」東京50km圏、α世代(男女3~12歳)2022年10月調査 (n=582)
「ACR/ex」東京50km圏、Z世代(男女12~26歳)2022年6月調査 (n=997)
ただし、ネット動画の視聴時間も61分とある程度視聴されており、時間帯やシーンによってテレビとネット動画を使い分けていると推察されます。
一方で、Z世代はテレビよりもネット動画の視聴時間が長くなっています。では、ネット動画について、α世代とZ世代で、視聴デバイスや視聴時間量に違いはあるのでしょうか。ネット動画視聴時間量の過去5年間の推移をデバイス別でみてみます。
α世代では「テレビ画面」でのネット動画視聴が増加、Z世代はスマートフォンが中心
α世代は2018年以降、右肩上がりでネット動画視聴時間量が増加しており、テレビ画面やタブレット端末での視聴がメインとなっています。特にテレビ画面でのネット動画視聴が増加傾向で、2022年ではネット動画視聴時間量の約半分をテレビ画面が占めています。
一方、Z世代ではスマートフォンでの視聴がメインとなっており、テレビ画面での視聴はあまり多くありません。またネット動画全体の視聴時間量もコロナ禍の2020年をピークに減少傾向がみられます(図3)。
【図3】デバイス別インターネット動画視聴時間量 (1日あたり/週平均)
出典:「Kids/ex」東京50km圏、α世代(男女3~12歳)、「ACR/ex」東京50km圏、Z世代(男女12~26歳)
α世代でテレビ画面でのネット動画視聴が増えているのは、家庭内でのネット動画視聴ができるデバイス環境の違いが影響していることが考えられます。特にα世代の親はZ世代の親に比べて若く、デジタルへの適応力が高そうです。
次に、α世代とZ世代の家庭でのCTV(コネクテッドTV)普及率を確認してみましょう。
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α世代がいる家庭でのテレビのネット結線率は67.7%
近年、インターネット回線に接続したテレビ端末であるCTV(コネクテッドTV)の普及が進んでいます。
特にα世代の家庭ではZ世代に比べてテレビのネット結線率が大きく上昇しており、2022年時点では67.7%と約7割まで到達しました(図4)。テレビがインターネットに接続されている環境が一般的となってきていることが、α世代のテレビ画面でのネット視聴増の一因だと言えそうです。
【図4】α世代とZ世代のテレビのインターネット結線率 時系列推移
出典:「Kids/ex」東京50km圏、α世代(男女3~12歳)、「ACR/ex」東京50km圏、Z世代(男女12~26歳)
2.α世代の親の教育・しつけやメディア意識に変化?
親子で同じ番組・コンテンツを楽しむ意識が高まっている
α世代の映像視聴状況に、親の意識は影響しているのでしょうか。
教育・しつけやメディアに対する意識変化を確認してみましょう。
まず、α世代の親の教育・しつけ意識の時系列推移をみてみると、「スマートフォンやタブレットを見せておけば子供に手間がかからないので助かる場合がある」は67.0%で、2018年に比べて上昇しており、育児への活用が進んでいる様子がうかがえます。
また、「朝晩の食事はほとんど子供といっしょにとる」や、「親子で共通の趣味や話題を持つようにしている」「子供の1日の出来事を聞いてあげるようにしている」がそれぞれ上昇傾向であることから、親子一緒に過ごし、共通の趣味や話題を持つことへの意識が高まっているようです(図5)。
出典:「Kids/ex」東京50km圏、α世代(男女3~12歳)
続いて、メディア意識をみてみます。
「親が見ても楽しい子供向け番組がある」は、直近5年間の推移を見てもスコアを落とすこと無く、80%前後と高いスコアで推移しています。また、「子供が好きなテレビ番組・マンガ・アニメ・キャラクターは一緒に楽しみたい」など、子ども向けのコンテンツを親が一緒に楽しむ意識に上昇傾向が見られました。さらに、子どもの「親の好きなテレビ番組を気に入ることがよくある」は51.1%と半数を超えています。子ども向けや親向けに関わらず、同じ番組やコンテンツを親子一緒に楽しむことが増えてきているのではないでしょうか(図6)。
出典:「Kids/ex」東京50km圏、α世代(男女3~12歳)
3.親子で見ているテレビ番組は?
親子で見る番組はアニメからバラエティ番組に
α世代は親子で同じ番組・コンテンツを楽しむ意識が高まっていることが分かりましたが、具体的にどの番組を視聴しているのでしょうか。
「大人と一緒に見る地上波レギュラー番組」のランキングをみると、2018年は2位~4位は「ドラえもん」他アニメが上位に並んでおり、子ども向けのアニメを親子で視聴することが多かったようです。
2022年のランキングでは、「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」が大きく順位を落としました。19時台から夕方に放送時間が変更になったことで、親子視聴の機会が減少してしまったと推察されます。
その一方で、19時台に放送されるバラエティ番組が上位を占めました。子ども向け、親向け関係なく同じ番組を一緒に楽しむ様子はこのランキング結果からもうかがえます。
出典:「Kids/ex」東京50km圏、α世代(男女3~12歳)2022年10月調査 (n=582)、2018年10月調査 (n=613)
4.α世代にテレビ番組を視聴してもらうためには
α世代は、CTV(コネクテッドTV)の普及とともにテレビ画面を通したネット動画視聴が増えており、今後も映像視聴行動の多い夜の時間帯を中心に増加していくことが予想されます。Z世代のように、ネット動画の視聴時間がテレビの視聴時間を上回るようになるかもしれません。そうした変化が予想される中、引き続きテレビ番組を視聴してもらうにはどうすればよいのでしょうか。
α世代は、ネット動画の視聴が増える一方で、テレビの視聴時間もZ世代に比べて長く、親子で一緒にテレビ番組を楽しむ様子がうかがえました。親子で一緒に見る番組は、バラエティ番組が上位を占め、夕食時と思われる夜19時台はネット動画からテレビに切り替えるような行動もみられました。α世代にテレビ番組を視聴してもらうためには、この夕食時の行動がカギになってくると考えます。夕食時にはテレビに切り替える習慣がまだ見られる中で、夕食時の19時台を中心にいかに親子で視聴してもらうか、さらにいうとチャンネル権を握っている親に子どもと一緒に見たい、楽しみたいと思ってもらえる番組を放送し続けることがポイントになってくるのではないでしょうか。これによって、子どもであるα世代へのテレビ番組を届け続ける、テレビ番組視聴を習慣づけさせるのです。
また、ネット動画視聴の増加も顕著であるため、ネット動画の中でもいかにテレビ由来のコンテンツを選んでもらえるかが大切になってくるでしょう。見逃し配信サービス等の拡充や、見逃し配信サービスの利用に繋げるようなプロモーション施策も考えていく必要がありそうです。
α世代の最新の視聴動向は、今後も引き続き確認していきたいと思います。
5.α世代の特徴まとめ
- α世代は19時台にネット動画からテレビに視聴行動が切り替わる
親が家事で忙しい時間帯の家事・育児のサポート役が、ネット動画に変わりつつあるが、19時台の食事の時間はテレビ視聴の行動率が高くなる。 - α世代ではネット動画よりもテレビ視聴時間が長め
α世代ではネット動画よりもテレビ視聴時間量の方が多く、またZ世代と比べても長い時間テレビを視聴している - α世代がいる家庭でのテレビのネット結線率は67.7%でZ世代の家庭に比べ高い
- α世代の親子は一緒に過ごし、共通の趣味や話題を持つことへの意識が高まっている
子ども向け、親向けに関わらず一緒にコンテンツを楽しんでおり、親子視聴されやすい番組はアニメ番組からバラエティ番組に変化 - α世代にテレビ番組を楽しんでもらうには、夕食19時台中心に親子で楽しめる番組を放送できるか、またネット動画の中でもいかにテレビ由来のコンテンツを選んでもらえるかがカギ
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【本記事で紹介したサービス】
・サービス名:ビデオリサーチ「Kids/ex」「ACR/ex」「MCR/ex」
・調査時期:<Kids/ex>2022年10月、 <ACR/ex(MCR/ex)>2022年4~6月
・対象地区:東京50km圏
・ターゲット:α世代(男女3~12才(未就学児、小学生))、Z世代(男女12~26歳(中学生以上))