【VR FORUM2021】Session2:視聴質指標の開発について
▲[ 登壇者 ]サントリーコミュニケーションズ株式会社 宣伝部長 牧野 清克氏
株式会社電通 ソリューション・クリエーション・センターSP 谷内 宏行氏
株式会社ビデオリサーチ 執行役員兼テレビ事業局長 橋本 和彦
SNS(Twitter)データのAI解析によるCM・番組への反応分析の事例を挙げながら、コンテンツが与える態度変容や行動変容の構造を明らかにし、テレビ×デジタル時代における「視聴質」のありかたや活用の仕方についてディスカッションしました。
積年の課題である「視聴質開発」に対して、バズ分析でアプローチ
ビデオリサーチではテレビメディアデータの整備を新視聴率計画としてこれまで進めてきており、これからはテレビ×デジタルを統合した指標の開発がテーマとなってきます。一方で、そのような捉え方をしていくからこそコンテンツの評価の重要度が高まると考えています。
今回のテーマである「視聴質」はビデオリサーチにとっても積年の課題です。様々な解釈が存在し、視聴率のように定義が確立されたものではないと捉えています。
そこで、視聴質へのアプローチを再整理し、今回はSNS(Twitter)分析によるテレビ番組の質的評価に焦点をあて、時代に即した手法での取り組みを進めてきました。
先ず谷内氏が、先行取り組みである「バズウォッチ」を紹介。同ソリューションは、関東で3年以内にCM出稿のあった3,000社以上の企業が出稿するCMとその感想ツイートを分析し、週次でランキングをOUTPUT。量だけでなく性年代や趣味嗜好など、具体的な視聴者のプロフィールのほか、反応全体を代表するツイートの抽出を実行。AIを用いて手間や恣意性の課題をクリアし、全CMとの横比較が可能なソリューションとして展開されています。
ビデオリサーチでは谷内氏らの協力の元、「バズウォッチ」での技術やノウハウを活用して、テレビ番組をぜんぶとって横比較できるようなシステムを実現し、約400に及ぶテレビ番組の感想ツイートを日々解析して提供できるような開発に着手しました。
その結果から、テレビ番組に関する投稿はとても個性的で、ジャンルだけみても違いがあり、ポジ/ネガの評価も番組の楽しみ方のひとつということが確認されています。
「ワイドショーでは、取り上げた話題に対して毒舌的にコメントを述べるということが一種の"楽しみ方"となっていた。一方でイケメン番組では『仲良く和やかに感想を投稿しあう』コミュニーケーションが盛り上がっていた」と谷内氏。感想ツイートの分析から、その番組が持つ"個性"が浮き彫りとなり、さらに同じ番組でも放送回ごとに反応が変化することが明らかとなりました。この分析技術は、テレビ番組だけではなくラジオ、ネット配信などのコンテンツにも応用し、メディア間を共通指標で横並び比較することも可能となっていくと考えています。
「視聴率×視聴質」で、視聴者の「嗜好性」「メディア間のクロス」が見える
ビデオリサーチでは、この「バズウォッチ」のバズ分析のエンジンに、当社が行っているテレビ番組の分析を掛け合わせて、視聴率と視聴質をかけ合わせた、テレビ×デジタル時代の統合管理指標の開発に取り組んでおり、2022年4月からは最終フェーズとして視聴率と併せて確認いただけるよう商用化調整を進めていきます。
広告主の側から牧野氏は、「インターネット広告費がテレビ広告費を上回ったとはいえ、テレビメディアは重要であり、番組選択のポイントは「量的データ」と「質的データ」、加えて「番組コンテンツ活用の可能性」を模索している。また、デジタル化が進むなかで、テレビとデジタルの共通指標がないことが課題だが、視聴者の定性的な(ポジ・ネガ)反応を定量的に比較できる視聴質は、メディア間の比較も可能ということで、デジタルとの共通指標化になるのではないか」という期待が示されました。
セッションではさらに「視聴質」の具体的な分析事例として、『日本沈没』『人生最高レストラン』(TBS)の結果を紹介。
『日本沈没』は、初回放送(10月10日(日))に向けてツイート数が上昇、投稿者は若い男性や女性も多く、視聴者層と投稿者層の違いを確認。ネガ投稿割合は初回放送3日前の関東での地震を踏まえたツイートが多く、現実とドラマの世界がリンクした結果と考えられ、この番組の"個性"は「リアルな危機と直面するハラハラドキドキ」にあることがわかりました。また、投稿者の日々のツイート内容からクラスター分けした趣味嗜好分析や放送前・中・後のツイート(キーワード内容)の変化を捉える分析といった「視聴質」に対する様ざまなアプローチを実施しました。
また、メディアの垣根を超えた事例として、番組主題歌を歌う菅田将暉さんのラジオ番組をきっかけに「ドラマが楽しみ」という投稿もあり、ツイートを分析することで、他メディアとの"クロス"をみることもできました。
次いで『人生最高レストラン』では、「同じ番組でも放送回によって反応が変化する」ことが「投稿者層」を分析することでわかりました。歌舞伎俳優の中村勘九郎さんが自身の"推し"として「日向坂46」「櫻坂46」のメンバーを挙げた回は若い男性、タレントの大久保佳代子さんの放送回は若い女性、女優の若村麻由美さんの放送回では50代以上の男性のつぶやきが突出。これまでの「視聴者層」という切り口では鮮明に見えてこなかった実態が確認されました。
「SNSに投稿する視聴者は、かなり能動的な層で、積極的に投稿する視聴者がどんな関心を持ち、どう反応したかを確認できることは非常に大きい」と谷内氏。
牧野氏は「『顧客層の自発的な行動を促すものになっているかどうか』はコンテンツの魅力の判別につながってくる」し、「『こういうものがお客様に受け入れられる』ということがわかってくるのは非常に興味深い」とし、「こうしたデータを定期的に見られると嬉しい」と語りました。
「"自発的な声"の可視化」で、テレビ×デジタル施策の比較評価が可能に
「番組と企業との『コラボCM』が非常にバズを起こすこともわかった」と谷内氏。映画『君の名は。』のテレビ放送で、映画のストーリーにちなんでスポンサークレジットの企業ロゴデザインを会社同士で"入れ替える"演出が行われ、大きなバズを生んだ例を挙げ、「踏み込んだアテンションの強いもの、つまり『SNSに投稿したい』と思わせるものが求められている」と指摘しました。
「サントリーも、ドラマ『ラジエーションハウスⅡ』(フジテレビ)で登場人物が自社製品を使った『金麦鍋』を作るインフォマーシャルを展開するなど、番組コンテンツを活用したCM作りを行っている」と牧野氏。「これまで反応している方々の顔が見えにくかったが、このように自発的な声が可視化されれば、複数のコラボCM施策の効果を比較できる」といい、「地上波とTVerで複数のコンテンツを展開する事例もあるため、それぞれの反応の違いを見られることは興味深い」と語りました。
このように、視聴者がメディアやデバイスの垣根を越えてフラットにコンテンツを視聴する現在、その中で行われるプロモーション活動を評価するためのテレビ×デジタルの指標が必要となります。その際、到達だけではない、もう一つの評価尺度としての「視聴質」が意味を持ってくると考えています。
テレビ×デジタル"統合指標"としての「視聴質」の役割
「個人視聴率を見ると、M3(男性50歳以上)・F3(女性50歳以上)の層が厚く、番組視聴を支えている傾向がある」と谷内氏。「若い年齢層が多いTwitterの反応を可視化することにより、これまで数の上で"圧縮"されてきた若い層が望む番組作りが行えるようになる。」と、可能性を語りました。
「テレビとデジタルを共通で比較でき、お客様の自発的な反応の定性データを定量的に見られることは非常に大きい」と牧野氏。「メディアの科学や指標がまだまだ必要である」としつつ、「お客様の反応を見ながらコンテンツの評価ができるようになったことは大きな成果」と評価しました。
ビデオリサーチが考える「視聴質」のこれからの展望は、以下の内容となります。
ビデオリサーチが取り組む「視聴質」は改良を加えながら、皆さまにご提供できるよう今後も開発をしてまいります。
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「VR FORUM 2021」レポート記事一覧
◆主催者挨拶
株式会社ビデオリサーチ 代表取締役社長執行役員 望月 渡
◆Keynote 『これからの視聴率』について考える。2021
株式会社ビデオリサーチ 取締役常務執行役員 尾関 光司
◆Session1 テレビ×デジタルに求められる指標とデータ活用の可能性について
株式会社リクルート マーケティング室ブランドプランニングユニット長 熊切 淳氏
株式会社フジテレビジョン 営業局局長職兼デジタル営業部長スポット営業部管掌 戸津川 隆元氏
株式会社ビデオリサーチ 営業局営業企画部長 河辺 昌之
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