「J:COM PMP」におけるビデオリサーチデータの活用

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(左から)ビデオリサーチ 伊藤卓起氏  J:COM株式会社 遠田智洋氏


今回は、J:COM株式会社(以下、J:COM)メディアエンターテインメント事業統括室の遠田氏に、チャンネルの枠を超えてCS広告を総合的にプランニングする新しいビジネスモデル「J:COM PMP」へのビデオリサーチデータの活用やその取り組みについて、お話を伺いました。

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CS業界の課題と打開策

─CS業界の課題について、遠田さんのご見解をお聞かせください。

まずCS放送における2018年度広告売上は前年比の95.8%とマイナス成長でした。総売上金額も同年度に200億円台を割込み、2019年上期の様相を見ても、あまり芳しくはありません。
僕はCS業界には4つの課題があると認識していまして、1つ目は「訴求ポイント」です。今まで、CSは雑誌メディアのようにターゲティングができることを売りにしていました。CSは、地上波やBSに次ぐ認知メディアでありながら、チャンネルごとに特性を持った専門チャンネルなので、狙いたいターゲット層にピンポイントでアプローチできることが強みだったんです。しかし、今はデジタルで細かいターゲティングができるようになったので、相対的にCSの立ち位置は曖昧になりました。
2つ目と3つ目は、「プランニング」と「効果測定」です。データはあれど、セールスとの連携がうまくできていなかったということが長い間続いていました。
4つ目は「市場風土」です。CSの広告販売って、「映画専門チャンネル=映画ファン」のようなチャンネル単位のターゲットイメージを材料としたセールスが前提なんです。CSとして1つのマーケットとしてあるのではなく、専門チャンネルごとに小さなマーケットが多数あるような構造になっている為クライアントが市場全体を把握しにくい。


─課題克服をしていくために実現したかったことはどのようなことだったのでしょうか?

どのマーケットも同じだと思うのですが、やはり今の時代はデータの高度化がされていないと受け入れていただけないですよね。CSでいうと、複数のチャンネルが24時間365日放送しているなかで、自分たちが欲しいターゲット層がどこにいるのか、どこに優先順位をつけて広告を打っていくべきかというデータがないと、意思決定ができない。クライアントが社内で「やる、やらない」の議論をするときに、データなしでは判断ができないので、まずはデータを出していく必要があると思います。そして実施した後には、結果を明確なデータ(ファクト)で見せることが重要です。クライアントが一番気にするのは、ROIを明らかにすることなので、ここは必ずやらなければいけないと思っています。
また、クライアントは、CS全体で、どのチャンネルのどの時間帯を取っていけば自分たちが欲しいターゲットに当たるのかという見方をしているので、全体をある程度まとめて提案し、ターゲットの規模を担保することが必要でした。あとは、クライアントが目指すターゲットにたどり着きやすくすることですね。データの高度化、規模担保、到達容易化。この3つが、実現したかったことです。



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データの課題を解決した方法とは

─そういった課題を解決すべく、ビデオリサーチも一緒に取り組ませていただきました。

はい。弊社で持っている視聴ログというものを活用して、データ部分の課題を解決できないかと考え、まずは海外の事例を調べたんです。そこで分かってきたのが、実数データを豊富に存在する領域にもパネルデータを持つアメリカのニールセン社が必ず登場しているという事実でした。つまり、パネルデータと実数データが共存関係にあるんです。それに対して当時の日本は、対照的に実数データがパネルデータを駆逐していくかのような風潮がありました。しかし僕はアメリカのようにパネルデータと実数データを組み合わせるやり方が、最適解なのでは、と考えました。


─視聴ログとは、どのようなデータなのでしょうか?

世帯に配付されるセットトップボックス(以下、STB)という機器から取得できる視聴行動のリアルタイムとタイムシフトのデータで、お客様から許可を頂いている約200万台分のログデータが蓄積されています。ただ世帯のデータだけで、家族の誰が見ているのかまでは分からないんです。そうすると広告メディアとしてはあまり意味を成さないので、そこにビデオリサーチのパネルデータを掛け合わせて、どういう個人が視聴しているかを推計する方法が無いかと、相談させて頂きました。


─ビデオリサーチを選んでいただけた決め手は何だったのでしょうか。

弊社の視聴ログには「個人」のデータがない一方、ビデオリサーチは精緻な個人視聴の情報におけるパネルデータを持っているというところが最大のポイントでした。一緒にいろいろと協議させていただき、何とか「おそらくこの世帯にはこういう方々がいて、この人が見てくれてるんだよね」という匿名での推計やプロファイリングができるようになりました。


<ビデオリサーチができること!>

視聴ログを個人視聴推定ロジックで個人単位に分離し、データの高度化を実現
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<ビデオリサーチの個人視聴推定の優位点>

(1) 学習データソース
世の中の縮図となるようにサンプリングされた代表性のある「視聴率」「VR CUBIC」「ACR/ex」データを学習データとしており、偏りのない一般論を導くモデルが構築できる
(2) ロジック
"家族構成を推定"し、次に"個人視聴を推定"するという二段階で視聴データを推定しているため、デバイスの前で「視聴してない人」もとらえることができる
(3) 集計
「ACR/ex」における膨大なプロフィール項目での集計が可能。ご要望に応じた細かいターゲットでもN数が確保できる




─視聴ログのデータとパネルデータを融合したんですね。

パネルデータと実数データの相互補完は非常に重要で、アメリカでも皆さん必ずパネルデータを使っていらっしゃるので、これが現状の最適解なのではないでしょうか。パネルデータと実数データ双方の良さをクロスしたほうがいいと思います。また、今の時代って技術的には結構何でもできますが、個人情報保護の流れが非常に大きくなってきていますよね。むしろここから先は「どこまでで止めるか」ということが重要になってきていると思います。様々なデータをクッキーで紐付けて、個人を明確に洗い出すこともできますが、あまりにリスクが大きくなり過ぎる。


─ビデオリサーチとの取り組みからどのようなことが実現できるようになったのでしょうか。

詳細なデータが出るようになったことで「どのような人が視聴しているのか」が推計できるようになったんです。今までは「映画ファンへの出稿なら映画専門チャンネルにお任せください」というような営業をしてきましたし、クライアント側もそれで納得されて物事が進んできたのですが、実際にデータを見ると、当然ながら映画だけ見ている人なんていないのです。スポーツを見ている人やニュースを見ている人も映画を見ますし、スポーツチャンネルやニュースチャンネルの中にも、映画ファンは当たり前にいるんです。それを実際にデータで見て、どの時間帯に多くいるのかというところまで見極め、「大体こういうプランニングで出稿すると、これくらいのターゲットに当たりますよ」という算出をして提案しています。アクチュアルに関しても、ログを確認しながらデータをお渡しするという流れです。


─データがあることによって説得力が出てきますよね。

今までは、「野球好きって映画チャンネルも見てるよね」とか、「女性も普通に野球見てるよね」というような感覚が、クライアント側に受け入れられにくかったんです。「お母さんと子どもには、実はこっちのチャンネルも見られてますよ」と薦めても理解されないことも。しかし、きちんとデータを提示すれば、そのチャンネルにも普通にCMを出していただける。例えば子育てアプリのCMが、スポーツチャンネルでも流していただけたケースもあります。
また、商談が進み易くなりましたね。データがあれば、提案した後も社内での意思決定を促していただきやすいですし、放映後の視聴データもお返しできるので、改善していくための議論もできるようになりました。


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「J:COM PMP」とテレビの未来

─「J:COM PMP」についてお聞かせください。

視聴ログのデータを元に、グループチャンネルやご賛同頂いたCSチャンネル様をまとめてプランニングし、出稿準備もアクチュアル(CMが見られた割合)の測定も全部やりますので、我々に一括でご相談くださいという、単純明快な売り方です。我々がまとめることで問い合わせ窓口を一元化できますし、CSチャンネルをネットワーク化して規模を担保することができます。バラバラに行っていた膨大な量の作案も我々がまとめ、必要な管理まで全て請け負います。


─「J:COM PMP」が目指しているものは何でしょうか?

デジタルと同じようなデータを使ってプランニングやアクチュアル報告を行いますが、あくまでテレビCMを効率的に視聴者に届けるための取り組みだと思っています。
テレビは放送確認書を出すので、CMが確実に放映されたかどうかが明確ですし、培ってきた歴史も長いので安心してご利用いただけるのではないかと思います。
そして、テレビの一番のメリットは、様々な人に同時共視聴してもらえることです。
テレビの仕組みをネット広告のように完全にデジタル化してしまうと、今までのビジネスモデルと違いすぎて無理があるし、テレビにはテレビにしかない価値があるので、僕は「テレビは今のままで良くない?」と本当に思っているんです。ただ、ターゲットが「含まれているかいないかもわからない」では時代にそぐわないので、データを活用してターゲットの含有率を高める。これがテレビの理想的なビジネスモデルだと思います。

─ありがとうございました。

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