より正しく高精度なコンテンツパワーの評価へ〜視聴率との"両輪"でコンテンツを立体的に評価する「視聴質」〜
スマートフォンやスマートテレビの普及、さらにインターネットによる動画配信サービスの台頭によって、テレビ番組や動画コンテンツを視聴する手段は多様化し、世の中の視聴環境の変化が大きくなっています。こうした時代の流れを踏まえ、これまでテレビ番組のコンテンツ力を量的に示す指標として用いられてきた「視聴率」とともに、視聴後の意識・態度変容を測る指標「視聴質」が注目されています。この記事では、「視聴率」「視聴質」の2つの指標が持つ役割とメリット、当社の取り組みについて、当社テレビ事業グループマネージャー 片山が解説します。
- テレビ・動画事業ユニット テレビ事業グループマネージャー
片山孝治
1.「どのくらいの人に見られたか」を測る"視聴率"、「どのように感じたか」を測る"視聴質"
「視聴率」は基本的に、メディアのパワーをボリュームの面から示すものです。世の中でどれくらいの割合の人々が番組を視聴したのか、どれくらいの人数に到達したかを把握することができます。一方、到達した人々が、視聴したコンテンツに対してどのような感情を抱いたのか、そのコンテンツに"満足"したのか、ポジティブ・ネガティブどちらの意識を持っているか、といった内面の部分までは見ることができません。番組に対する全般的な評価をするにあたっては、「量」の面だけでなく、コンテンツに対する視聴者の感情や意識、つまり「質」の部分にも注目する必要があります。これを見ることができるのが、「視聴質」という指標です。一部では「視聴率に代わる指標」という表現が用いられることもありますが、どちらか片方だけではコンテンツの全体像をつかむことはできません。あくまで両輪で活用することによって、番組を全般的に評価することができると考えています。
2.どのような番組がターゲットに響くのか?〜当社が進める"質的評価"の取り組み〜
当社では、コンテンツを質的な面で評価する方法について、様ざまな取り組みを行ってきました。例えば、当社が提供するソリューション「ADVANCED TARGET」では、機械式の個人視聴率データと、生活者の実態を多角的に捉える「ACR/ex」データを組み合わせることによって、特定の趣味・嗜好や意識を持つ層ごとの視聴動向や、「1クールにおける視聴回数」といったフリークエンシーデータを見ることのできる仕組みを構築しました。さらに2021年から開発を行ってきた「Buzzビューーン!」では、番組に関連したTwitterのつぶやきデータを解析し、放送後の反応とともに、「どういうモノやコトに興味を持つ人々が番組を見ているのか」という"ターゲット像"を浮かび上がらせることを実現しました。このように、視聴者プロフィールの把握や視聴後の反応に特化した分析の仕組みを整えていくことによって、どのような番組が制作側やクライアント(広告出稿する側)のターゲットに響いているのかを、明確にすることが可能となりました。
3.より正しく高精度なコンテンツパワーの評価へ
視聴者に番組が届くまでの経路は多岐にわたり、TVerなどの見逃し配信サービスや各種動画配信サービスをスマートフォンやタブレットで視聴する、インターネットに接続されたテレビデバイスで視聴するなど、様ざまな経路で視聴されています。そして、気軽にコンテンツを視聴出来るようになったことで、ネットニュースなどで取り上げられたことをきっかけに、SNSで話題が拡散し、そこからコンテンツへ触れるというケースも珍しいことではなくなりました。
このように番組の視聴デバイスや視聴方法が多様化した今、「番組が見られているか」に加え、「その番組がどのような意識や気持ちで見られているか」は非常に重要な要素です。冒頭にもお話しした通り、「視聴率」と「視聴質」はそれぞれどちらかひとつだけで完結するものではなく、両輪で組み合わせることで、コンテンツ価値を可視化できると考えています。例えば、視聴者が「その番組を"見たくて"見ている」、つまりはポジティブな気持ちで番組に接していると、出演者や商品、CMすべてにおいてプラスの効果を与える可能性があり、その後の行動変化を起こしやすくなります。このような視聴者の態度変容に寄与する番組の効果を描いていくため、その要素を1つずつ収集し、積み上げていくことで、より正しく高精度なコンテンツパワーの評価把握につながると考えます。
当社では、視聴率での量的なアプローチを踏まえた上で、様ざまな調査データを元に質的な指標をプラスし、コンテンツの総合的・立体的な評価指標を作り上げていきたいと考えています。
【24年編集部追記】
ビデオリサーチでは、新たにSNS上の「Buzz(バズ)からコンテンツの"視聴質"を評価する「Buzzビューーン!」も提供開始しております。
詳しくはこちらをご覧ください。
特定のサービスだけで完結させるのではなく、新たにどのような要素がコンテンツの評価に活かせるのか、その取得方法も含めた研究開発に引き続き注力していきます。
※この記事はVRDIGESTで紹介した特集「視聴質」を編集したものです。
他の特集「視聴質」の記事も併せてお読みください。
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・コンテンツ本来の価値を示す指標を 〜番組カルテからコンテンツカルテへ〜