相手に誤解なく・正しく伝わるグラフ入りプレゼン資料を作るには?ー プレゼン資料に使えるグラフ作成の留意点

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相手に誤解なく・正しく伝わるグラフ入りプレゼン資料を作るには?ー プレゼン資料に使えるグラフ作成の留意点
この記事はこんな方にオススメ!
  • 読み手に伝わる、分かりやすい資料作成を目指したい方
  • 棒グラフ、円グラフ、帯グラフなどグラフを作成する機会がある方
  • プレゼン資料におけるグラフ作成時の「お作法」を押さえておきたい方

あなたが作ったそのグラフ入り資料、"正しく"読み手に伝わっていますか?

資料を作成する際に「グラフ」を挿入する機会は非常に多いですよね。
グラフ自体はExcelやスプレッドシートなどで初心者でも簡単に作ることができますが、一方で、作ったグラフから自分が伝えたいことが正確に、そして分かりやすく伝わるようにするのは意外と難しかったりします。

成績が良かったことを報告したかったのに、「思ったより成績が悪い結果だったね」と言われてしまった・・・
A店舗の説明がしたいのに、グラフを見せたらB店舗やC店舗に議論が向いてしまった・・・

グラフの読み手に"正しく"掲載情報を理解してもらうには、グラフそのものはもちろん、横に添える文章コメント(データコメントとも呼ばれます)をどう書くか、も非常に重要です。

本記事では、グラフを使ったプレゼン資料作成において留意しておきたい「コメントの書き方」や「伝え方」をご紹介します。

【関連記事:「プレゼン資料に使えるグラフ作成の留意点」シリーズ】
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グラフから得られる「知見」を見つけ出すポイント

そもそも、なぜグラフを作るのでしょうか。
理由は大きく2つに分かれるでしょう。1つ目は、数字の羅列だけでは見出しづらかった新たな「知見」を見つけ出しやすくすること。そして2つ目は、得られた「知見」を分かりやすく、読み手に伝えられるようになることです。

この章では、1つ目のあなたが作ったグラフから有益な「知見」を正しく見つけ出すためのコツとして、3つのポイントを解説します。

【図1】グラフから得られる「知見」を見つけだすポイント

特徴を語る際は「大きな数字」または「小さな数字」に着目する

まずはじめに着目すべきは、グラフの中でも数字(スコア)が相対的に大きい箇所、そして小さい箇所です。【図1】では在宅勤務者の推移を時系列で示していますが、2010年代は1割前後と"小さい数字"なのに対し、2020年代は6割越えと"大きな数字"になっていることが一目で分かります。
このことから、「2010年代は在宅勤務をしている人はレアな存在だったのに対し、2020年代には一気に過半数に膨れ上がった」という知見が得られます。

急激な変化や差分には、「裏側にある理由」も考えてみる

では、2010年代から2020年代での急な変化にはどのような理由があったのでしょうか。

【図1】のグラフに着目すると、2019年→2020年がターニングポイントであることが分かります。2020年と言えば、新型コロナウイルスという未知の疫病が社会を混乱させ、緊急事態宣言が全国的に初めて発令されたことで多くの人が「ステイホーム」を心がけていた年です。この社会変化が、今まで出社勤務を前提としていた企業の多くで在宅勤務という選択肢を取り始めることとなり、結果、在宅勤務者が大幅に増えたと推察できます。

このように、新型コロナウイルスという「裏側にある理由」をきちんと理解したうえでグラフを読み解くことが正しい知見の抽出に繋がります。

「変化がない」ことも1つの知見として捉える

ここまでは「大きな数字と小さな数字」や「急激な変化」など、「変化がある」部分に着目していきましたが「変化がない」ことも1つの知見となりえます。

【図1】で言うと、2010年代は10年間ずっと、在宅勤務者は1割前後と「変化がない」状態が続いていました。今となっては、在宅勤務は企業が転職希望者に自社をアピールする際の代表的なポイントの1つとして挙げられるほどメジャーな働き方となっています。言い換えれば、新型コロナウイルスという大きな脅威がなければ、日本で在宅勤務が市民権を得るのはもっと遠い未来の話になっていた、もしくはそんな未来は来なかったかもしれない・・・という推察も、1つの知見と言えるのではないでしょうか。

その説明、ミスリードかも?グラフから得られた「知見」説明時の留意点

前章では、グラフの基本の読み解き方を学びました。
つづいてこの章では、グラフの読み手が正しく、間違いなくグラフの読み解きができるようにする方法=言い換えると陥りがちな"ミスリード"にひっかからないよう、グラフから得られた知見を相手に説明する際の留意点を5つご紹介します。

調査対象者の"偏り"を意識する

【図2】「知見」説明時の留意点:調査対象者の偏りを意識する

まずはじめにチェックしておきたいのが、調査対象者の"偏り"です。ここで言う"偏り"とは、「世間一般的に想像されるターゲット像」から、調査対象者となったサンプルにどのくらいの乖離があるのかを意味しています。

この乖離具合によっては、グラフから得られる知見に"偏り"が生じている場合があります。

【図2】の例を見てみましょう。2012年におけるiPhoneシリーズの所有率を示したグラフですが、よく見ると調査対象者は「Softbankユーザー」に限定されています。

日本でiPhoneが発売された2008年から約3年間、iPhoneの販売権はSoftbankのみが保有していました。docomoやauでも取り扱いを始めたのは2011年以降のため、2012年時点では、iPhone所有者の大半がSoftbankユーザーだったと考えられます。
このことから、「全国10~50代のSoftbankユーザー」という調査対象者は、世間一般的に想像される「全国10代~50代」というターゲット像=「Softbank以外のキャリアユーザーも含めた全国10~50代」とは大きな乖離がある、と言えます。

よって、このグラフ上の数字は「Softbank以外のキャリアユーザーも含めた全国10~50代」iPhoneシリーズ所有率よりも大きく上振れしていることを前提に、プレゼン資料を作成する必要があります。

<ちなみに>このように、グラフには出典元や調査実施時期などの「調査概要」情報を付帯させるのが一般的です。ここにどのような情報を書くべきか?については、以下の記事でをご参照ください。

関連記事:

グラフを説明するときに書くべき「調査概要」の記載方法―プレゼン資料に使えるグラフ作成の留意点
グラフを説明するときに書くべき「調査概要」の記載方法―プレゼン資料に使えるグラフ作成の留意点

プレゼン資料にグラフを作成する機会がある方向けに、グラフを正しく読み解き、読み手に有益な知見を提供するためのチェックポイントを紹介します。

グラフを説明するときに書くべき「調査概要」の記載方法―プレゼン資料に使えるグラフ作成の留意点

調査・計測された時期による時代背景に配慮する

【図3】「知見」説明時の留意点:調査・計測された時期による時代背景に配慮する

調査対象者の偏りとあわせて知っておきたいのが、時代背景による"偏り"です。

グラフで使用しているデータがいつ取得したものなのかによって、解釈の仕方や活用可能性が変わってきます。【図3】では、企業が取引先と請求書のやり取りをする際に使用する連絡手段をアンケート調査した結果ですが、これを2025年の今、そのまま読み解くと「DXが叫ばれる今、意外とFAXもたくさん使われているんだなぁ」と捉えてしまう方も多いのではないでしょうか。

ですが、良く見るとこのアンケート調査は2010年、今から15年も前に行われたものであることが分かります。15年前と今ではデジタル技術の発展度合いに大きな違いがありますので、当時状況を説明したいのであればこのグラフを使用したプレゼンも有効ですが、「今の状況」を語りたいのであれば、このグラフは使用しないという判断も視野に入れる必要があります。

このように、時代背景を考慮するかどうかでグラフから得られる知見の解釈が全く異なる結果になることがあります。グラフを読み解く際には、必ず考慮するようにしましょう。

「差がない」ものがあるかのように記載しない

【図4】「知見」説明時の留意点:「差がない」ものがあるかのように記載しない

うっかりやってしまいがちなのが、「Excelが自動で作ったグラフを、チェックせずにそのまま使ってしまう」行為です。【図4】は「年に10回以上ハワイに行く人」という、かなりレアだと思われる人物像の出現割合を年代別に調べた結果なのですが、Excelでグラフ化を行うと最初に出てくるのが左側のグラフです。

左側のグラフはぱっと見、「40代が年に10回以上ハワイに行く人が多そうだな」と感じさせてしまうのですが縦軸をよく見てみると、最大値が「1.2%」という非常に小さな数字になっています。

そこで最大値を「50%」まで引き上げてみたのが右側のグラフです。これを見ると、40代のスコアも微々たるものであり、「年に10回以上ハワイに行く人」は年代問わずほとんどいない、という結果であることがぱっと見でも正しく理解できますね。

グラフの読み解きを行う際には、使用するグラフを適切に調整してから知見を探すようにしましょう。

差分を説明する際は%でなくpt(ポイント)で表記する

【図5】「知見」説明時の留意点:差分を説明する際は%でなくpt(ポイント)で表記する

割合(%)表記のスコアを比較する際にやってしまいがちなのが、単位の使い分けです。

【図5】は、「VRラーメン」という架空のラーメンチェーンにおけるブランド認知度の推移を示したものです。2010年には認知度が30%だったものが、2019年には71%までスコアアップしているのですが、この時、差分を示す際は71-30=41pt(ポイント)と表記するようにしましょう。

認知度は「%」表記なのに、なぜ差分の表記は「%」ではなく「pt(ポイント)」なのでしょうか?
それは、例えば「41%の差があった」という表現を使った場合、

・X%-Y%=41%、という2つの数値の引き算を行った結果
なのか
・X%÷Y%=41%、という2つの数値の割り算を行った結果
なのかが分からないからです。

他方、「pt(ポイント)」という表記は純粋にある数値Aから異なる数値Bへの変化を示すために使われますので、「41pt」と記載した場合、それは確実に「71%-30%=41%」という引き算を行った結果であることが読み手に正しく説明できます。些細な表現ですが、誤解を生じさせやすい箇所ですのでしっかり覚えておくようにしましょう。

文字の色にも気を配る

【図6】「知見」説明時の留意点:文字の色にも気を配る

グラフから得られる知見を説明する際に、文章中で文字に色を付けることも多いでしょう。
この時、グラフで用いる色と文章内で用いる色は使用ルールを統一させることをおすすめします。

たとえば【図6】の場合、グラフでは青色を「男性の認知度推移」を示すために使用していますが、文章中では「女性」に色付けされています。このように青色の使い方が逆転してしまっていると、文章コメントを先に読んだ人は直感的にグラフの青線を「女性の認知度推移」であると誤認してしまう可能性があります。

他にも、複数のグラフを使用する場合/収支に関するグラフを使用する場合など、色の使い方に関する留意点はこちらの記事もご参照ください。

関連記事:

そのグラフ、誤解を招いていない?チェックポイント4選 ―プレゼン資料に使えるグラフ作成の留意点
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プレゼン資料にグラフを作成する機会がある方向けに、伝えたい情報を誤解なく、分かりやすくするためのグラフ作成時のチェックポイントを紹介します。

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おわりに

いかがでしたか。今回は、伝えたい情報を誤解なく、正しく伝えるための資料作成チェックポイントをまとめました。シリーズ「プレゼン資料に使えるグラフ作成の留意点」では、グラフ作成前のデータの選択方法や、グラフ作成時のチェックポイントについてもまとめています。あわせてぜひご覧ください。

【関連記事:「プレゼン資料に使えるグラフ作成の留意点」シリーズ】
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