開 か れ た ビ デ オ リ サ ー チ へ
開 か れ た
ビ デ オ リ サ ー チ へ
デ ジ タ ル 時 代 へ の 対 応

高度の情報化社会において、生活者とメディアとの関わりが変化している中、当社は、2012年に創立50周年を迎えました。これからのビデオリサーチの役割はどうあるべきか、新たなビジョンをどのように描くのかなど、会社として大きく変わろうとしていました。その第一歩として、企業理念と行動指針を刷新。社内外への浸透を狙ってスローガン、ステートメントを新たに作成して臨みました。
そうした節目にプライベートセミナーの「データビジョン」を「VR FORUM 2012」と改め開催。ビデオリサーチが進むべき方向性やその考えと、業界にどう貢献できるかを、当社が一方的に提案するのではなく、「業界の方々と一緒にディスカッションすることで、理解を得る、情報を共有する場」と位置づけ、開かれたビデオリサーチを内外に示すことを目指しました。

そして、この10年でもっとも重点をおいて取り組んだのが、デジタルへの対応です。ネット社会が進む中で、メディアを取り巻く環境が大きく変化し、生活者の多様化が進みました。これらを検証し、テレビをはじめとするメディアの価値の最大化・可視化をするために、当社は、かつてない規模の視聴率調査拡充に踏み切ります。同時に、DX(デジタル・トランスフォーメーション)を進めるため、他社との協業や、関連会社を設立・出資するなど事業の拡充を図りました。

VR FORUM2012

創業50周年、ポスト地デジ時代のメディア戦略ー提供から提言まで。

2012-2013

当社は、「ロンドンオリンピックが開催された2012年の9月に」 社会、生活者、メディアの大きな転換期において、当社の役割がどうあるべきか体現すべく、「あるべき姿・ありたき姿」を実現するためのロードマップを描き、社内プロジェクト「jump50」を前年に発足。次の50年「jump Next」へと新たな一歩を踏み出しました。

ビデオリサーチは今、何をすべきか

「ビデオリサーチ基本理念と行動指針」(社員手帳より)

秋山創一社長は、挨拶の場で次のように述べています。

「1962年、テレビ視聴率調査の提供からスタートした当社は、現在、様々なメディアの価値指標を提供するまでに至っている。50周年を迎えた今、昨今のメディア環境の変化や生活者の行動変化など、社会環境が大きく変化する中で、『ビデオリサーチは今、何をすべきか』を常に考えてきた。
『生活者とメディア・企業との間での情報のやりとりに関する公正・公平なデータの提供から、お客さまのコミュニケーション領域の課題解決に向けた行動実践を伴う提言まで行う』ために、さらなる成長を目指していきたいと考えている。」(広報誌『VRダイジェスト』 521号 社長挨拶より一部抜粋)

さらに、若杉会長も「まず私たちは、激しい変化の中に生きることを認識すべきである。調査会社として、確固とした地位を築いてきたが、メディア環境は大きく変わろうとしており、また、各メディアはインタラクティブとの関係の中で、様々な試みに挑戦している。そんな中、多くのプレイヤーが参入してきており、従来の事業領域と、その延長で考えるだけではこれからの変化の潮流に押し流されてしまう」(2012年9月21日の創立記念社員総会でのスピーチ)と強い危機感をもってプロジェクトに取り組むように社員に呼び掛けました。

メディアとともに成長してきた当社が、メディアの進化に伴って新たな姿を目指すのは必然であり、また義務であるともいえます。当社の大きな財産、強みである50年の事業展開、歴史がもたらす信頼感をさらに強固なものにすべく、プロジェクトは動きだしました。
そして、第一の重点であるテレビの価値を示す新指標づくりや生活者へのインサイト充実に向けた取り組みについて社外にも発信していきました。

「ビデオリサーチ基本理念と行動指針」(社員手帳より)

『VR FORUM 2012』Communication Intelligence ー提供から提言まで。を開催

VR FORUM 2012

ポスト地デジ時代に「これまでのビデオリサーチをパワーアップする」「これからのビデオリサーチをデザインする」をコンセプトに、視聴率調査会社として「多様化するメディア環境に対する測定技術の進化と方向性」を示し、テレビの価値を今まで以上に示していくことを目指しました。さらに、インターネットと放送が連携していく可能性を踏まえて「拡大するインタラクティブ領域への対応」を提案、それらを具体的な商品やサービスにしていくこと、そして「提供から提言まで。」を実行していくことを表明しました。

創立50周年の節目に実施したFORUM。当社にとってかつない規模と内容となり、来場者は4200名超の盛況ぶりでした。社員自らが課題を洗い出し、会社をどう改革していくかという議論を立場関係なく重ね、その思いをFORUMに投影したものでした。これを機に、データ提供だけにとどまらず、一歩踏み込んで顧客課題を解決し、それを実行する集団になるという強い意志が芽生えたことは、2012年を実行の年として臨んだ当社にとって良いめぐりあわせとなりました。

VR FORUM 2012

「人」を起点としたアプローチを強化

視聴率は人の意識や行動に基づくものであり、テレビ×デジタルの関係性や生活者への浸透状況を包括的に捉えることが命題となりました。そこで、生活者、視聴者のインサイトを把握すべく「人」を起点としたアプローチを強化。当社初となる、生活者研究を役割とする「生活者インテリジェンス部」を設立し、価値ある研究とその研究結果を元に顧客課題の解決をすることをミッションとしました。さらに、当社の生活者データの根幹を成すACR調査の拡充に着手し、2013年11月に丸ビルホール(東京・千代田区)で開催された「VR SOLUTION SEMINAR」でその構想を明らかにしました。

左)ACR/exロゴ 右)ACR/ex回答専用タブレット

日本最大級のマーケティングデータ「ACR/ex」実現と、生活者起点による課題解決に挑む

2014-2015

2014年は消費税が8%に増税され、消費者の購買行動の変化に関心が寄せられた年でもありました。

ACR開始(1976年)から40年余り、生活者やメディアを取り巻く環境や、広告管理概念などが大きく変化したのを受け、2010年からACRの将来像について本格的な検討を始めていました。数度の実験調査やユーザーヒアリング実施。2012年、New ACRのコンセプトを掲げ、それに基づき飛躍的に進化させ、強化するための準備を進めてきました。そして2014年、生活者の実態を包括的に捉える「ACR/ex」へのリニューアルを果たしました。「ex」とはサービス全体の拡張と発展(expand、expert、express、など)を意味し「/(スラッシュ)」を用いて「拡充した価値領域を母体」とするマーケティングデータであることを表明しています。
この「ACR/ex」で取り組んだ拡張は大きく3つありました。まず、日本経済の中心である「東京」について調査範囲を東京駅を中心とした50㎞圏に拡大し、サンプル数が増加したこと。次に調査手法として「回答専用タブレット」を取り入れたことで、回答者の負担軽減、および回答の質と提供スピードの向上をさせたことです。また、この手法により、質問数を増加させ、日本最大級の規模のシングルソースデータとしました。
このように市場代表性と客観性を担保しつつ、データ領域を拡充した「ACR/ex」は、時系列での市場把握、メディア戦略立案はもちろんのこと、ビッグデータとの連携など、DX化する社会においても広範囲に利活用できるデータを実現しています。

生活者の内面を理解したマーケティング活動の支援を目指す

ひと研究所ロゴ・生活者研究チームロゴ、
書籍「ビデオリサーチがて提案するマーケティング新論 マインドホールを突破せよ。」(ダイヤモンド社)

2012年より生活者研究を進めてきた「生活者インテリジェンス部」は、2015年に「ひと研究所」へ名称を変更。「ひと起点」のアプローチで、生活者の内面を理解したマーケティング活動の支援を目指しました。ターゲット別の特に、従来の高齢者とイメージが異なりつつあった「シニア」を生活者研究の鍵とし、以降「若者」「F2層(女性35~49歳)」と対象を拡大し研究を進めました。さらに、多様化する生活者を捉える新たな切り口として「ひとセグ」を発表。「ひとセグ」は、現代の生活者をデモグラフィックではなく、内面の特徴(考え方のクセ)で捉え、氾濫する情報の中から生活者は何をどのように選んでいるのかを整理するための独自セグメントとして、生活者と企業・メディア双方にとって、よりよいコミュニケーションを構築するための切り口となりました。その成果は書籍「ビデオリサーチが提案するマーケティング新論 マインド・ホールを突破せよ。」(ダイヤモンド社)として、上梓をし、多くの方に研究内容を届けています。

ひと研究所ロゴ・生活者研究チームロゴ、
書籍「ビデオリサーチがて提案するマーケティング新論 マインドホールを突破せよ。」(ダイヤモンド社)

2020年に向けて“これからの視聴率”を表明

生活者が多様化した社会的状況の中、2015年12月8日・9日の2日間にわたり、東京国際フォーラム(東京・千代田区)にて「『VR FORUM 2015』 COMMUNICATION DYNAMICS」を開催。
「生活者の変化・メディアの挑戦・広告の未来」をキーワードとし、「若者のテレビ離れへの対応」「マルチスクリーン化による視聴の分散化」などメディアの環境や視聴形態の変化が引き起こす課題を共有し、2020年にむけて「テレビの価値」をどう捉えていくのかをテーマにディスカッションしました。すでに、テレビとインターネット、放送と通信という枠組みで物事や事象は語れなくなってきていました。そういった概念やカタチを変えていくことが必然であり、ボーダレスの状況に対して、「多様な視聴形態」「多様な視聴者」を可視化し、視聴の分散に対応したコンテンツビジネスをどう実現するかが課題となっていました。この課題に対して、「オフライン」と「オンライン」のライフログを統合し、生活者インサイトの知見と、データ収集・解析の「テクノロジー」を活用して、顧客にどう貢献できるかを具体的に提案しました。さらに動向が注目される、「テレビ×ネット」「動画」「スマホ」の視聴に対して当社の考えや取り組みを発表しました。

タイムシフトレポート第1号(2016年10月3日)【関東地区】

視聴スタイルの分散化に合わせて視聴率調査を拡張

2016-2017

民放公式テレビ配信サービス「TVer」が開始(2015年10月)、また翌年2016年には、AbemaTVが開局し、4K8K放送の試験放送が開始。テレビ視聴に影響を与えるものとして世帯特性の在り方が変化し、それによりテレビを視聴する形態も変化していきました。さらに、デジタル技術の進歩によってタイムシフト視聴の増加、テレビ視聴スタイルの分散化を引き起こすようになりました。
そんな視聴構造の変化に対応する第一歩として、タイムシフト視聴(録画視聴)の測定を開始しました。
タイムシフト視聴は放送局のタイムテーブルが1週間単位であることなども踏まえ、放送から7日間以内(168時間以内)の再生視聴を測定対象とし、リアルタイム視聴の有無は問わずタイムシフト視聴状況を示すものとして「タイムシフト視聴率」、リアルタイム視聴とタイムシフト視聴のいずれかでの視聴を示し、番組単位での視聴の拡がりを示すものとして「総合視聴率」という新たな指標の提供を開始しました。従来の「リアルタイム視聴率」に「タイムシフト視聴率」「総合視聴率」の2種類が加わったことにより、多様化する生活者のテレビ視聴の状況をより正しく表現できるようになりました。

また同時期に、生活者プロフィールのより詳細な分析を可能にするために、関東地区の視聴率調査のサンプル数を600世帯から900世帯に拡大しました。

テレビとデジタルの関係性を可視化

VR LINCロゴ

一方で、テレビとデジタルの関係性を明らかにする取り組みも開始。2015年には在京5局の配信測定やTVerの測定を受注(2022年4月よりTVerリアルタイム配信測定を開始)、放送局の配信施策に対する視聴状況の可視化を行っていました。この流れで、2016年8月、ひとりのユーザーからテレビとネットの接触実態ログを取得し、両メディアの到達や重なり、メディア接触者のサイト接触行動を把握するためのシングルソースデータサービス「VR CUBIC」の開発に至りました。さらに、テレビ広告の統計データを搭載し、視聴データ提供の速報化に対応した「VR ビューーン! by VR CUBIC」のサービスを開始。

翌2017年は、米ニールセン社と、両社の子会社への相互出資を伴う業務提携契約を締結。この業務提携は、急速なスマートフォン(以下スマホ)の普及に伴って多様化しつつある、生活者のコンテンツ・広告の視聴形態に対応するために行われたものです。日本におけるデジタル領域(PCやモバイルなど)の測定指標の整備と標準化を進め、広告効果測定事業を強化することにより、インターネットメディア・広告事業の活性化に貢献することを目指しました。
この業務提携を推し進める中で、ニールセン デジタル社が持つTAR(Total Ad Ratings)と、当社がもつ全国テレビ広告視聴率データとを組み合わせて、テレビとデジタルメディアのクロスプラットフォームリーチを算出するTARを共同開発し、2022年にサービスを開始しました。

また、2017年、環境やニーズの変化に応える新しいデータ総合ソリューション「VR LINC」のサービスを開始。当社が測定・保有するテレビ接触をはじめとした豊富なメディアデータおよび生活者データと、顧客企業が保有するデータを「統合・連携」させることで付加価値をつけ、デジタル領域のメディアプランニングなどにも活用できるようにしました。

*2017年1月1日に「ニールセン株式会社→ニールセン デジタル株式会社」に社名変更。

VR LINCロゴ

オンオフの広告コミュニケーションの統合した効果を“個人”で把握へ

株式会社every syncロゴ

2007年のiPhone登場以来、世間はスマホ中心の生活へとシフトしました。スマホで動画視聴するのが当たり前という時代になり、2017年、テレビとデジタルの視聴実態と行動変化を捉える取り組みとして、ソフトバンク社との共同出資会社「株式会社every sync」を設立。テレビ番組別の視聴状況や、曜日・時間帯別のアプリの利用状況、またそれらユーザーの詳細なプロフィールなど、さまざまな切り口で測定するオンオフの広告コミュニケーション活動のPDCAを支援する事業を見据えた、クロスメディアパネルの構築を目指していきました。

株式会社every syncロゴ
VR FORUM 2018

新視聴率調査構想と、さらにその先に向けて

2018-2019

BS・CS放送で4Kと8Kの実用放送が開始された2018年、この年の3月1日、当社は、東京ミッドタウン(東京・港区)にて「『VR FORUM 2018』TV×Digital NEXT Stage」を開催しました。
スマホによるインターネット利用が増大し、特に若者ではインターネット利用時間が大きく伸びました。そのような背景から、デジタル時代のテレビメディアが置かれている現状をゲストとディスカッションしました。
その中で、広告主から「テレビ広告が費用対効果を説明しづらい媒体になった。デジタルメディアがスピーディかつ直接的に効果測定できるのに、テレビ広告は測定可能な広告効果データとつながっていない」、広告会社からは「データ不足でテレビ広告の効果が過小評価されている可能性がある」など、テレビの正しい価値が可視化できていない現状への懸念が浮き彫りになりました。それらに応えるべく、同イベントで、「テレビ番組のあらゆるリーチを測定する」「多様化する生活者を表す視聴率」を目指す「新視聴率計画」のコンセプトを表明。
さらに「テレビとデジタルの統合的な指標の必要性」と「両者を組み合わせたプランニングおよびその効果検証の必要性」に取り組む必要性を再認識することとなりました。

一方、視聴率調査のさらなる拡充を推し進め、2018年4月に関東に続いて関西地区、7月には名古屋地区において、タイムシフト視聴率の提供を開始。

また2018年2月、「データ解析・ロジック/エンジン作成・ツール構築に特化したサービスの提供により、顧客の個別課題に対応し、意思決定をお手伝いする」ことを目的とした、データサイエンスに特化した新会社「株式会社 Delta Values」の設立を発表しました。

テレビの正しい価値を示すための「新視聴率」構想

新視聴率全体像

2019年には、平成から令和へと改元。初めて日本でラグビーW杯が開催。日本VS南アフリカ戦(10月20日、NHK総合)の世帯視聴率(41.6%、関東地区)がこの年の最も高い視聴率となり、日本中が沸きました。

この年、2月13日・14日の2日間にわたり、東京ミッドタウンにて「『VR FORUM 2019』Data Orchestration」を開催。2020年に向けた「新視聴率」の構想を発表しました。
「新視聴率」の構想のポイントは、全地区の仕様を統一することで、テレビの正しい価値を示し、他のメディアとの比較において、テレビの特徴を表現すること。さらに視聴環境の変化に対応した指標を提供することを目指す計画を発表。今後さらに、リアルタイム、タイムシフトなどの放送(オンエア)と、配信(オンライン)に分散化し、視聴の多様化が加速することを踏まえ、コンテンツ視聴のすべてを把握し、視聴率調査をベースとして『実数データ』の活用を表明しました。

一方、2019年4月1日には、北部九州地区において、調査世帯数を400世帯に拡大し、PM視聴率調査を開始しました。

新視聴率全体像

視聴ログとの連携で、より詳細なテレビ視聴の個人プロフィール把握へ

Resolving LABロゴ

さらに、2019年、テレビの正しい価値を示すために、視聴実態を「顔がわかる個人」の精度で分析できるよう、テレビのDXに対応する関連会社「Resolving LAB」を設立。国内主要テレビメーカーから500万台規模にのぼる視聴ログの提供をうけ、これまでのPM視聴率に準拠した個人視聴ログを生成。「ACR/ex」によりプロフィールの推計付与をすることで、顧客がKPIで設定している粒度の細かいターゲットに近い分析を可能とし、マーケティング領域でもメディア価値を示せる大規模実数データ分析の基盤構築を目指しました。

Resolving LABロゴ

テレビ視聴率調査の全国仕様統一、全国を表す新たな指標とデジタル対応サービス

2020-2021

新型コロナウイルス感染症が流行し始めた2020年、東京オリンピックの開催は延期となり、また、多くの企業でリモートワークの推進が図られ、生活者(視聴者)のライフスタイルの変化がさらに加速しました。また、各種テレビ視聴デバイスの普及により視聴形態も加速度的に変化していきました。この変化に伴い、 “テレビ視聴の分散化”を捉えるべく、検証を重ね、準備をしてきた新テレビ視聴率調査を開始しました。全調査地区で調査世帯数以外の調査仕様を統一し、1年365日、世帯、個人の視聴率調査を実施。また、タイムシフト視聴率の測定を開始し、リアルタイム視聴率だけでは掴みきれなかった潜在的な視聴実態を捉え、生活者のテレビ視聴行動をよりリアルに把握できるようになりました。さらに関東地区は900世帯から2700帯、関西地区は600世帯から1200世帯、札幌地区は200世帯から400世帯に調査世帯数も拡大しました。

2021年10月、テレビ視聴率調査では山梨/福井/徳島/佐賀/宮崎の5地区で地区別視聴率のサービスを開始しました。これにて、全放送エリアにあたる32地区において、地区別の視聴状況を365日、個人単位でタイムシフト視聴を含めての提供が完了しました。

新視聴率全体像

3地区での調査世帯数の拡大や、全調査地区での調査仕様の統一により、全32地区を束ねた視聴データの提供も開始。「全国」単位での視聴率集計により、全国の推計視聴数の把握が可能となったことで、テレビメディアデータとしての利活用の幅が広がり、デジタルとの関係性を示すことができるようになりました。加えて、全32地区でのテレビ視聴率の調査フレームの中で、BS放送やペイテレビの測定・データ提供を開始することにより、地上波放送、BS放送、CS放送の3波を跨いだ視聴実態を把握できるようになりました。
さらに、新テレビ視聴率調査と歩調を合わせて、地上波32地区・BSの広告出稿データ整備を進め、2021年10月から「全国テレビCMデータ」が全地区の世帯・個人視聴率が紐づく仕様に進化。全国各地区、更には全国トータルのCM到達状況(GRP、R&F)が把握可能となり、テレビCMの到達パワーを可視化できるようになりました。

新視聴率全体像

個人起点で生活者を捉えたデジタル対応サービス

(上)パネル×実数で見えるか(下)ラジオ365データロゴ

テレビ視聴率調査の大幅なリニューアルに加えて取り組んだのが、「パネル」×「実数」データの組み合わせによるメディア価値の可視化でした。
2020年、これを具現化したサービスが「ラジオ365データ」です。このサービスの特徴は、当社のラジオ個人聴取率調査データ(パネル)とradiko社が保有する聴取データ(実数)を組み合わせて推計することで、1年365日毎分単位でラジオ聴取状況を捉えられる点でした。また、それらを翌日確認できる速報性も実現。ラジオの聴取実態をより細かく、スピード感をもって可視化できるようになりました。今まで、媒体データが少ないといわれてきたラジオでしたが、このサービスによりラジオの新たな価値が可視化できるようになりました。
そして、翌年の2021年、このサービスは関西圏・中京圏へと拡大していきました。

(上)パネル×実数で見えるか(下)ラジオ365データロゴ

動画コンテンツの保護と実態把握の事業を開始

Muserk V.I.Dロゴ

2020年7月には、AI技術を用いて世界中でライツ管理を行う米企業Muserk LLC(以下Muserk社)と、合弁会社 Muserk V.I.D. LLCを米デラウェア州に設立。日本での「動画コンテンツの権利保護事業」と「動画領域における実態把握」といった共通基盤の提供を実現しました。

Muserk V.I.Dロゴ

「es XMP(イーエスクロスメディアパネル)」サービス開始

es XMPロゴ

さらに、株式会社 every syncが、「es XMP」の提供を始めたことに伴い、同サービスの提供を開始しました。
「es XMP」は、テレビとデジタルを活用した広告コミュニケーションを個別ではなくトータルで広告プランニング・効果測定することを実現し、オンオフ統合のコミュニケーションのPDCAを回していくことを支援するサービスです。テレビの視聴・ウェブサイトの閲覧・スマートフォンアプリの利用状況を、当社の技術により、テレビ番組別の視聴状況・曜日/時間帯別のアプリの利用状況・検索キーワードなど、様々な切り口でシングルソースデータとして提供できるようになりました。
この結果、競合他社を含め市場環境を俯瞰で捉え、アンケートで取得した豊富なプロフィールやテレビ視聴ログ×インターネット利用ログを活用して、より効果的なメディアプランニング、より精緻なキャンペーン効果測定が可能となりました。

es XMPロゴ
次世代メジャメント企業

DXへの対応を見据えた次世代メジャメント企業への挑戦

2021

2021年、東京オリンピック・パラリンピックが開催されました。開会式(7月23日、NHK総合)の個人視聴率は40.0%(関東地区)をマーク。年間視聴率の上位を五輪関連番組が占めるなど、1年遅れの開催に沢山の人たちが盛り上がりました。
一方では、コロナ禍が続く中、同年9月にデジタル社会形成の司令塔として「デジタル庁」が発足し、デジタル改革の機運がさらに高まります。

当社は、DXを見据え、新たに「次世代メジャメント企業」を目指し、事業展開を推進。「次世代メジャメント企業」は、メジャメント事業と共通基盤事業で構成し、メジャメント事業では、2020年に開始したラジオ365データやテレビ×デジタルの視聴実態把握など、メディアの新たな価値の可視化を図りました。
一方、共通基盤事業では、Muserk V.I.D. LLCや「枠ファインダ」サービス(2019年4月サービス提供開始)など、業界の継続的な発展に貢献する事業に取り組みました。「枠ファインダ」サービスは、放送局が提供するSmart AD Sales(SAS)において、各広告枠の価値を見える化し、最適な枠の購入申し込みを支援することを目的としてサービスを開始。広告枠に対して、当社を含めた各社の様々な視聴関連データを提供し、生活者の趣味嗜好や商品カテゴリの購入傾向などを鑑みて、最適な広告枠の探索・分析をすることができ、その結果をもとにユーザーが買いたい広告枠の購入申し込みまで一気通貫で行うことが可能となりました。

デジタルクローンを活用した「リサーチ4.0」を開発

リサーチ4.0概念図、リサーチ4.0

加えて、リサーチ事業のDX化を開始。「デジタルクローンP.A.I.(パーソナル人工知能)」の開発を進める株式会社オルツと、2021年2月パートナーシップを締結し、新技術を取り入れたマーケティング・リサーチソリューション『リサーチ4.0』の実現に向けて、PoC(Proof of Concept:概念実証)をスタートさせました。
これまで当社が行ってきたリサーチ手法について、リサーチ1.0は調査員による訪問アンケート、リサーチ2.0はインターネットを利用したアンケート、リサーチ3.0は全数的なデータを解析・分析するもの、そして『リサーチ4.0』はオルツ社が保有する個人の価値観をデジタル上で再構築するパーソナルAI「デジタルクローン」に、ビデオリサーチの様々なリサーチデータとその分析ノウハウをインプットすることで、従来の調査手法における様々な課題を解決するものと定義づけました。
この『リサーチ4.0』は、既存の技術とは全く異なる次世代型の「リサーチ技術」であり、この「アンケートクローン技術」と「TV視聴行動」の連動を研究することにより、「未来のTVの視聴行動」の予測をする可能性を秘めており、当社のビジネス強化・新機軸の構築につながるものと考え、開発しました。また、デジタルクローンは「個人情報」を保有しない新たな調査手法といえ、個人情報保護がより厳格化されている昨今、調査環境に影響されない調査手法のひとつとして開発に至りました。デジタルクローンがモニターの形態と調査の在り方を変え、世界初のクローン調査会社で次世代型のマーケティング会社へ変革していくことを目指しています。

リサーチ4.0概念図、リサーチ4.0

視聴率、さらなる概念拡張のカタチ

2021年11月11日には、「『VR FORUM 2021』加速するDXがもたらす、テレビメディアの変化と進化を考える」をオンラインで開催しました。
創立以来、一貫してテレビ局由来のコンテンツの視聴状況を数値化してきましたが、さらなる概念拡張が求められている今、本フォーラムでは、インターネット領域にテレビメディアが進出するなかで当社はなにができるか、これからの方向性について表明しました。

新視聴率の先にある“概念拡張の”カタチとして「デジタルプラットフォームを数値化する」こと、つまりテレビ局由来のすべてのコンテンツの測定・数値化を目指すことを明言。また、「コンテンツの質を数値化する」ことについては、積年の課題である「視聴質」の新たな開発として、SNS(Twitter)データをAIで解析することで、コンテンツに対する視聴者のポジ・ネガ反応、態度変容、行動変容を示す指標を紹介しました。

テレビ×デジタルに求められる共通指標として、これらの取り組みを推進していくことの意志表明をしました。

創立60周年
新生ビデオリサーチへ

2022

2022年4月、当社の一部業務と株式会社ビデオリサーチコムハウスの業務すべてを引き継ぐ形で、株式会社ビデオリサーチコミュニケーションズを設立しました。新体制では、ビデオリサーチは「事業推進・事業開発・顧客提案の専門組織」、ビデオリサーチコミュニケーションズは「安定運用・品質管理・常時改善の専門組織」とし、グループ全体で高品質なソリューション提供力と顧客起点でのスピーディなビジネス開発力を高めていきます。また、2021年よりリブランディングのプロジェクトを発足。ロゴマーク、タグラインも変更しCIも合わせて刷新しました。
新しいグループ体制とCI・VIのもと、当社グループはテレビを含めた動画ビジネスを支えるデータ分析&システム会社とし、これからも、顧客企業の更なる成長とメディア・広告業界の発展への貢献を目指します。